委員長「川内原発安全審査にまだ課題」3月13日 19時20分
鹿児島県にある九州電力の川内原子力発電所について、原子力規制委員会は、運転再開の前提となる安全審査を優先的に進めることを決めました。
これについて、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「川内原発の審査にはまだ細かい課題はたくさんあり、今後予定されている保安検査などに手間取れば、何が起こるか分からない」と述べ、状況によっては審査の終了や運転再開までに時間がかかるという考えを示しました。
また、川内原発のほかにも優先的に進める原発を決める可能性について、田中委員長は「事業者の対応次第で、大きな問題が片付けば、その結果を見て判断するが、電力会社が規制側の指摘を解決できていない状況だ」と述べ、ほかにも優先的に審査を進める原発を追加するかどうかは、電力会社の対応によるという考えを示しました。
このほか、当初は「半年」とされた審査が長期化したことについて、田中委員長は「新しい基準が従来とはだいぶ違うということで、事業者の受け止め方にも戸惑いがあったと思う」と述べ、長期化は電力会社の姿勢が原因だという見解を示しました。
地元の反応は
川内原発がある鹿児島県薩摩川内市の30代の女性は、「小さい子どもがいるので、事故が起きた場合にはどこへ避難すべきか不安です。できれば運転再開はしてほしくないです」と話していました。
薩摩川内市の70代の男性は、「川内原発が停止しているため、原発に関わって働いている人たちの生活は成り立たない。安全を確保したうえでの運転再開には賛成です」と話していました。
薩摩川内市の岩切秀雄市長は、「国の厳しい基準をほぼクリアしそうだということなので、日本でいちばん安全な原発だと理解したい。仕事などで原発に関わる人たちは厳しい状況にあったので、安全が確認できれば再稼働してほしい。国が再稼働を認可するならば、国の責任で住民への説明会を開いてもらったうえで、市議会の意見を聞いて、最終的な判断をしたい」と話しています。
鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、「審査が継続されることから、動向を注視していきたい。原子力発電所については安全性の確保が大前提であると考えており、再稼働にあたっては、まず国が安全性を保証するとともに、公開の場で地域住民の方々に十分な説明を行い、理解を得ていく必要があると考えている」というコメントを出しました。
一方、九州電力はコメントを発表し、「これまでの審査での指摘を反映させ、審査に対し、真摯(しんし)に、かつ精力的に対応していきます。さらなる安全性・信頼性の向上への取り組みを自主的、かつ継続的に進め、原発の安全確保に万全を期していきます」としています。
審査優先の決め手は「基準地震動」
国内の原子力発電所は、3年前の原発事故をきっかけに、16の原発の合わせて48基すべてが運転を停止しています。
原子力規制委員会の安全審査には、これまでに10の原発の合わせて17基の申請が行われ、去年7月に施行された国の新たな規制基準に基づいて、設備の安全対策や地震などの想定について確認が進められてきました。
安全審査が始まっておよそ8か月、90回余りに及んだ審査会合で焦点となったのは、おととしの原発事故を教訓に厳格化された地震への想定でした。
原発で想定される最大の地震の揺れの強さを示す「基準地震動」は、周辺の活断層や地下の構造を3次元的に解析することで導き出すもので、原発の施設や機器を守れるかを評価する重要な指標です。
審査が先行する6原発を抱えるいずれの電力会社も、これまでの審査で、「基準地震動」について東日本大震災以前に設定した数値を変えずに申請し、規制委員会から調査不足や想定の甘さを相次いで指摘されました。
審査の期間は当初は「半年程度」とされていましたが、半年たったことし1月の段階でも、「基準地震動」が規制委員会によって「妥当」とされた原発は1つもありませんでした。
こうしたなかで九州電力は川内原発について、存在が明らかになっていない活断層による地震の想定をより厳しく見直した結果、申請当初の540ガルから620ガルまで引き上げ、審査中の原発で初めて「基準地震動」が「妥当」と評価されました。
九州電力は、620ガルを想定しても原発の施設や機器について大きな影響はないとしています。
一方で、川内原発以外の泊原発、大飯原発、高浜原発、伊方原発、それに玄海原発の5つの原発は、基準地震動について議論が続いています。
川内原発の審査では、火山活動で火砕流が原発の敷地に与える影響の解析など、残された課題はありますが、規制委員会は、「基準地震動」などが確定し、ほかに重大な問題はないと判断し、運転再開の前提となる安全審査を優先的に進めることを決めました。
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