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第七話 燦然、勝利者たち(ウイナーズ)

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書いてて思ったのですが、一話まるまるミニ四駆は無理でしたw

いやーすんまそん




 

 午後から始まったタイムアタック。

 そこでは全国大会で名を連ねるショップスポンサーと参加者(チューナー)の名が刻まれていた。

 

『おおおっと、ショップAOIから参加の神奈川代表新庄ナオキ、暫定トップです!』

 

 朝倉のアナウンスに、チューナは両手をあげて飛び上がった。

 

「やったわね新庄君!」

 

 それを抱きしめるように少女も喜ぶ。

 

「はい、葵さん。でも、あと1秒は縮まります! 再セッティングをします!」

「そうね、がんばりましょう!」

 

 二人は姉弟ほどの年齢差であったが、非常に息のあったものがあった。

 

『・・・おおおおお、同じくショップAOIからスポット参加、加賀丈太郎、惜しくも0.05秒差!!暫定二位ぃ!!』

「かぁ、ついてねぇ」

 

 おもわず頭を抱えた加賀少年に少女葵が声を上げる。

 

「加賀君! まだタイムは詰まるわ! がんばりなさい!!」

 

 抱きしめたままの新庄の頭の上から鬼のような言葉が飛び出ていたりする少女葵。

 

「おいおい、俺にも愛の言葉を吐いてくれヨォ」

「一位よ、それ以外に価値はないわ!!」

 

 火を吐く勢いの少女葵の勢いは次の走者のタイムで絶望に変わる。

 

『きました、きました! コース内の若き皇帝、二大会連続全国優勝、風見ハヤト! かつてのダブルワンの栄光は幻ではないぃ!! 暫定一位の新庄を押さえて一秒短縮ぅ!!』

「なんですってぇ!?」

 

 火を吐く先は、くるりと入れ替わる。

 

「やるわよ、新庄君、加賀君。二秒縮めるの、わかったわね?」

「はい、葵さん!」「おいおい、いくらロングコースってったって、そりゃぁ・・・」

「やるのよ!!」

 

 がーっとほえる少女葵においたられて、新庄と加賀は工作台に飛んでいった。

 

「加賀、大会用の調整は無理だ。耐久性を落とそう」

「新庄、そりゃ、この大会中に『あれ』みたいなぶっとびしようってのか?」

「・・・やめておこう、うん」

 

 

 

 

 

 

「ハヤト、お疲れさま」

「がんばったのは、アスラーダだよ」

 

 少年ハヤトが片手でかざすそれを、まぶしそうに見つめる少女アスカ。

 ショップ「スゴウ」の看板娘にして少年ハヤトの幼なじみ。

 はじめは実家のショップ販売促進で入った世界だったが、その深さは恐ろしいほどだった。

 そんな魔窟で二年連続で全国大会を制して、ダブルワンと言われた少年ハヤトだったが、今年の大会は不参加であった。

 何しろ特殊な霊症にかかってしまい、参加できなかったからだ。

 この一事がなければ三期連続の優勝、伝説とまで言われる浪速のペガサスに並ぶと言われていただけにアスカも残念に思っていたが、あのネットPVをみて、ハヤトが息を吹き返してくれた。

 

 あの、GS伊達雪之丞の言葉が、ハヤトの心に火を付けてくれた。

 

『「やるさ、間違いなく。でも、勝ち負けなんて関係ないな。俺は強い奴に会いに行くんだ」』

 

 霊症の影響で鬱状態であった風見ハヤトの復活だった。

 

「・・・アスカ、この空気、いいよね」

「・・・うん」

 

 たかがおもちゃ、たかがミニ四駆。

 だけど、心が熱く燃える何かならば関係ない。

 

「(ハヤトにこんな顔させてくれた伊達さんに感謝だけど、それ以上に横島さんに感謝かな? だって、ハヤトのシリコダ○を取り返してくれたんだもん)」

 

 男モテする雪之丞。

 女モテする横島忠夫。

 

 共に娑婆鬼と戦ったのに、こんなところにも差が出ていたりする。

 

 

 

 

 

 各県の代表やスポット参加がとぎれた頃、その車体が現れた。

 それは制御不能とまで言われた伝説の車体。

 それは入手不可能とうたわれた幻の車体。

 

 プテラノドンX。

 

 その金色の車体が特設コースを走っていた。

 タイムアタックの隙間を縫うように。

 人々の注目は俄然高まっていた。

 

 まるで地をはうかのように、まるで風のように走りきったその車体を受け取ったのは、少年たちの希望の灯をともした一人の男。

 伝説の東京代表、伊達雪之丞その人であった。

 ラップタイムは、なんと現在首位の風見ハヤト/アスラーダを三秒も上回るものであった。

 通常ラップで0.5を削るとなれば苦難のほどは恐ろしいものであるが、今回の三倍コースの距離だけで考えれば不可能ではない。しかし三種の別コースをつなぎ合わせた設定を考えれば、それは更に難しい話。

 ロスと耐久性、そして電力消費を極限状態まで見極める必要がある。

 それを、軽々と三秒短縮。

 この結果を見て燃え上がらないチューナーは居ない。

 が、別の意味で燃え上がったバカがいた。

 

 

「すみません、伊達選手。再計量をお願いします」

「は、昔からかわらねぇな、大会本部ってのは」

 

 そう、雪之丞は苦笑いであった。

 彼のチューンは昔から異常扱いであったためか、東京大会レベルでは段違いすぎてレギュレーション違反が疑われるほどであった。

 そんな懐かしいやりとりの中、もう一台の車体がラップを終了する。

 結果は雪之丞とほぼどうタイム。

 計測誤差の順位で暫定二位。

 

『ウインダム2/近畿剛一』

 

 その表示がでた瞬間、歓声が渦巻き、銀一も周囲に頭を下げまくる。

 

「自分のも再計量ですかねぇ?」

 

 にこやかに差し出された車体、ウインダム2を怖々と受け取った大会役員であったが、さらなる歓声がその手を止める。

 タイムを更に一秒縮めた車体。

 

『ペガサス2/横島忠夫・ケイ』

 

 にこやかに車体を持ってきた少年ケイと横島を見て息を止める役員。

 

「昔のタイムに近いてんだ。ややこしい茶々は早く終えてくれ」

 

 かつて横島も、その早さからレギュレーション違反を疑われたのであった。

 

「え、にいちゃん、もっと早くなるのぉ!?」

「おお。こんなのチューニングタイムだ。あと2秒縮められるぞ」

 

 ざっとした試算であったが、大会全盛期のタイムに比べればまだまだだと横島は感じている。

 

「おー。すげーーー! 兄ちゃん、早くセッティングしよぉ!」

「あー、このおっちゃんたちが、俺らの車体、ずるしてないか調べさせろって言ってきてるんだ」

 

 希望に光っていた目が、急に曇ってゆくケイ。

 

「・・・えーーーー、報道部の人とかタミ○本社の人とか、いっぱい撮影してたのに、ずるなんか出来るはずないじゃん」

「それを疑うのが、あの人たちの仕事なんだよ」

「いやな仕事させられてるんだねぇ」

「そうだなぁ」

 

 という会話をしてたら、AOIさん所とかSUGOUさん所とかが殴り込みしてきて、そんなバカな疑惑に時間をかけるぐらいならチューンを早くして二秒縮めて見せろと言う騒ぎになった。

 どうやら、タミ○本社のある静岡県代表がイチャモンを付けてきたらしい。

 設計限界速度を出してもあのタイムはあり得ない。絶対にレギュレーション違反をしているはずだ、と。

 更に言えば、静岡県代表は静清○行頭取の家系だそうで、それなりの圧力があるとかないとか。

 

「・・・なんだか、一気にシラケたな」

 

 ショップSUGOUの若き店主、菅生修は肩をすくめる。

 

「そうですわね、本当にばかばかしい」

 

 ショップ「AOI」の葵少女も苦々しく、吐き捨てるようにつぶやく。

 

「ま、仕方ねぇだろ、こんなバカな妨害はかわらねぇし、あのころから静岡県代表は全国大会で底辺だったのもかわらねぇぜ」

 

 自分の車体を受け取った雪之丞が言うと、菅生修が苦笑いであった。

 

「そりゃぁ、伊達君。君や横島君のような化け物がいた時代だ。無茶を言うものじゃないと思うが?」

「あら、修さん。お知り合いで?」

「僕もあのころは全国大会に挑んでいたからね。彼らを知らないわけがない」

 

 苦々しい笑顔で雪之丞に握手する菅生修。

 

「PVを見てね、あのころの熱さが戻ってきたよ。感謝してるよ、伊達君」

「かまわねぇよ、菅生。何のかんのいってもお遊びだ、・・・だからこそ真剣にやった方がおもしれぇ」

 

 握手をする修に雪之丞がケイを紹介して見せた。

 

「今日初めて『これ』を覚えた、ダチのケイだ」

「・・・あ、あの、よろしくおねがいします!!」

 

 自分の所の少年と同い年ほどの少年を見て、すこし顔をゆるめてしまう修。

 少年好きというわけではないが、がんばっている少年は好きであった。

 

「君には最高の師匠たちが居るようだね、全国大会で待ってるよ」

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄金に輝く、重厚な車体は、第一コーナーを曲がりきることなくコースを飛び出して宙を舞った。

 それは金色に輝くドリルスピン。

 それはタイヤのついた水平発射式ロケット。

 それは、フラグというフラグを乱立させた女が辿った「オチ」というなの結末。

 もう、大きさなんか無視の勢いで飛び出した「それ」は、もの凄いはやさで宙を舞いつつ会場の壁に激突し、四散した。

 

 

「あ・・・・ああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 がっくりと崩れる葉加瀬聡美はさておいて、マッドXのスペックを見た大会参加者の誰もがこの結果を想像していたというのだから、すこし業の深い集団なのかもしれない。

 

「ど、ど、どうしてですかぁ!? 最高の素材とスペック、ハイパワーモーターとバッテリー、最高の、最高の・・・」

 

 完全に落ちてしまっている葉加瀬に、横島は肩をたたく。

 

「あんなぁ、パワーがあり過ぎなんだよ。ふつうの車にだって核パルスエンジンは乗せないだろ?」

「でも、でもぉ・・・」

「よく考えてみろって。限られた素材と環境で、厳しいレギュレーションをパスして最高を目指す。この遊びに対して、なにをバカにできる要素があるんだよ?」

 

 ボロボロに泣いていた葉加瀬聡美は、嗚咽をやめて顔を上げる。

 

「・・・それは少し萌えますね」

 

 金満マッド研究者の顔から、大学研究室のエコ研究者の顔に。

 

「だろ? じゃ、ちょっと時間を作って、その工夫をしてみっか?」

 

 そういって横島は、未だ開店中のタミ○ショップに乗り込んで、ベースマシンや交換パーツ、オプションパーツを買い進め、そして30分ほどで葉加瀬に組ませる。

 

「あ、あのぉ、こんな安っぽいので早いんですか?」

「まぁまぁ、F1にはF1の、ミニ四駆にはミニ四駆のチューンがあるって実感できるって」

 

 そんな台詞と共に、走らされた「マッドファースト」は、タイム的には第五位に潜り込むものであった。

 

「・・・す、すごい。飛び出さない、こわれない!!」

 

 自分のマシンを手にしてあれこれとレギュレーションの範囲を確認し始めた葉加瀬聡美を背後に、横島はマイクを手にした。

 

「会場のみなさん、あとこの会場は三時間ほど解放されています。今みたいな『横島セット』や『近畿セット』のレシピは特設ショップで公開されてますので、どうぞお試しください!」

 

 わーっと盛り上がる観客席から、何人もの子供が特設ショップに走り込む。

 同様に、全国大会出場レベルのチューナーたちに、横島や伊達、近畿が取り囲まれあれこれと質問の嵐となる。

 まさに、世代を越えて世界を共有した者たちの楽園ともいえる光景であった。

 

 

 その後、チューニングタイムアタックのタイムは接戦となったものの、本格的なセットアップをした横島や伊達雪之丞、そして近畿剛一のタイムを越えるモノはおらず、現行の勝利者たちから伝説の勝利者たちへレベルの高いリスペクトが送られ、麻帆良は「ミニ四駆」の聖地と高い評判を得た。

 

 以後、全国大会以上の高いレベルを求められる伝説のステージとして、麻帆良は有名になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 日中のほとんどをミニ四駆に費やした横島であったが、ウルティマホラ決勝には間に合ったので観客席に潜り込んだ。

 が、滑り込んでみた場所がヤバかった。

 

「ただおぉ、よいものをぷれぜんとしてくれたぁ・・・」

 

 ミイラ寸前にまで干からびた父親と、

 

「・・・忠夫、弟と妹、どっちがいいかしら?」

 

 なんつうか、二十台後半ぐらいまで若返ってしまった母親。

 

「横島君、今後のことで相談があるの。後で時間ちょうだいね?」

「ママ、それは美神令子除霊事務所グループへの挑戦かしら?」

「あら、令子。これはいただいたプレゼントへのお礼♪なのよ?」

「ママ、私も同席するわよ」

「・・・っち」

「舌打ちってどう言うことよ、ママァァァ!!!」

 

 と、娘と対して変わらない見た目にまで若返った美神美智恵と令子親子。

 

 あと、なんか、ヌレヌレっぽく若くなったエミさんとかもの凄く色っぽい感じの刀子さんとかシスターシャークティーは若手でやり手って感じで。

 

「まぁ、試験使用はレポートで答えるけど、どれだけ増産できるんだい? 忠夫」

 

 その母の一言で周囲の喧噪は消えた。

 気づけばその席は、なぜか年かさのある女性で埋まっていた。

 ウルティマホラ決勝であるにも関わらず、もの凄い熱気で、とんでもない熱い視線が横島に集中しているのがわかってしまった。

 

「・・・増産つうか、大量生産は無理だぞ。今のところ、手元の碑技術ってものの実証検証試験をしてるだけだからな。一応オカルトパテント通過まで販売はせんぞ」

 

 ・・・重いため息が周囲に満ちる。

 

「とはいえ、オカルトパテント取得のための実証試験は必要だから、少量配布は・・・」

 

 瞬間、津波のようなおばはん、年かさのある女性の波が訪れようとしたが、GS関係者や魔法先生関係者による威嚇が輪を作る。

 ステージ上の接戦など遙かに越える殺気が渦巻いていたりする。

 

「(とってもやりにくいアルね)」

 

 ステージ上の古菲にはいい迷惑だったかもしれない。

 

 

 ともあれ、適量の配布に対して拡散防止のための呪術的契約、そしてレポートの提出という結構面倒な条件を出した割には参加希望者が三桁に達し、空恐ろしい話に思えたわけだが、基本、横島百合恵による影響力拡充とコネクション強化に使われる分もあるので、どうなるかは不明であったりする。

 という実利的な話は置いておいて、麻帆良の格闘頂点であるウルティマホラ優勝者となったのは、予想に違わぬ強者、古菲となった。

 優勝賞金や副賞などを受け取った後、にこやかな笑顔で手を振りつつこんなことを言った。

 

「横島老師ぃ~! 麻帆良祭後の約束、楽しみにしてるアルヨォ~」

 

 実に意味深な台詞に、久しく嫉妬に狂った男子たちの追跡半が現れたのであった。

 

 

「相変わらずね、横島君」

 

 

 何となくほっとした女性陣であったのでした。

 

 

 

 

 

 

 さすがに三日間つきあうほど暇じゃない、という方々も多く、時間にとらわれない方々以外は結構二日目で帰ってしまった。

 いや、三日間を十二分に楽しむというという大人の方が少ないわけで。

 逆に、学生組は三日目の麻帆良祭を楽しんでいた。

 

 

「あ、ペガサスだぁ!!」「すげぇ、浪速のペガサスだ!!」

 

 

 昨日の大会の影響か、横島・雪之丞・銀一の三人は小学生の注目の的であった。

 それに加えて、綺麗どころの美神陣営や横島事務所関係者が居るとなると、人混みなのに人の輪ができてしまうほど。

 

「すまない、きれいなお姉ちゃんたちを案内してる最中なんだ。ミニ四駆はまた今度な?」

「「「「「えええええええええ」」」」」

 

 不満いっぱいの小学生たちに、今度事務所にショーウインドウを作って、ペガサス2・ウインダム2、そしてプテラノドンXを展示する約束をすると、逆に大いに感謝されたりなんかする。

 

 

 さすがに全クラスを回るなんて真似はできなかったけど、おつき合いのあるところやなんかを中心に、茶道部、哲学研究会、天文部等々を回り、そして運命の扉が開かれたのは「図書館島」。

 図書館探検部の体験入部イベントでのことであった。

 

 無駄に性能の良いGSチームが、想定コースを外れて降下してしまい、部員ですら到達していないエリアまで行ってしまったのだ。

 無線ナビしていた部員たちはパニックになったが、さすがGSは冷静で、眼前の光景を理解していた。

 

 

 

「・・・美神さん、ドラゴンっていたんすね」

「まぁ、飛竜って所じゃないかしら」

「美神殿、あれ、食べて良いでござるか?」

「シロちゃん、あれは一応食べ物じゃないと思うわよ?」

 

 

 

 こんな会話が聞こえてきているのだから、もう、本当にパニック。

 背後で聞いていた魔法先生たちは、どうやって誤魔かで大騒ぎになっていたが、観戦していた横島事務所所属のエヴァがもの凄い角度で切り込んでいた。

 

「・・・うむ、さすがGS。以前、恐竜の幽霊を除霊したことがあると聞いたが、日本にドラゴンも居たのか」

 

 一瞬の静寂の後、納得の空気が広まっていた。

 

「「「「「ああ、なるほど、さすがGS」」」」」

 

 人、それを現実逃避ともいう。

 

 ともあれ、人間の理解能力を超えた先にある現実をどうにかするのがGSという存在であることを考えれば、まさに本職といえるワケだが・・・

 

 

「・・・ホーミング、レーザァーーーーーー!!」

 

 

 横島の両手から発射した霊波砲が幾重にも分かれて空中のドラゴンに直撃する。

 その攻撃力で即死はしないが、両手で支える皮翼がずたぼろになり、一気に高度を落とす。

 

 

「わをぉぉぉぉぉぉぉぉんんん!!!!」

 

 

 まるで空中を駆けるかの如くに襲いかかるシロの霊波刀が更に翼を切り刻む。

 

 

「食らいなさい!!」「いきます!!」

 

 

 どこから出したのか、禁酒法時代のギャングのようなマシンガンを出した美神とおキヌが光の弾丸を無数に敵へたたき込む。 

 すでにガード以外できていないドラゴンは、ブレスを吐く間もなく、重々しい体を光に散らした。

 

 

「あああああああ、酷いでござる酷いでござるぅ! 一口味見させてほしかったでござるぅ!!」

 

 

 ああ、GSってそういう奴らなんだ、と実に深い納得が得られた図書館探検部及び観客であったのであった。

 

「・・・そういえば、この映像って誰がとってるんだ?」

「ああ、なんかGSチームで影が薄い大男が居たんで、預けたって話だぜ?」

「へぇ・・・」

 

 

 影が薄い人、哀れ。

 

 

 

 

 

 

 三日目の麻帆良祭夕刻。

 

 

 ここで行われたのは全校ゾンビオニであった。

 希望参加者の1%が鬼として登録され、そして最後まで生き残れれば優勝。

 逆に鬼側はどれだけ鬼を増やせたかで優勝者が決まるシステムであった。

 中でも横島事務所関係者とGS関係者ははじめから鬼に設定されており、「鬼側最優秀候補」とまで言われている。

 

 開始十分で、参加者の70%が鬼になったのは悪夢以外の何者でもないだろう。

 正直、そんな事態になるとは誰も予想していなかった。

 そのため、もの凄い早い終了が訪れると思われたが、残り30%が強かった。

 というかしぶとかった。

 

 実は、女子中等部2-Aがメイン逃亡者だったわけだが。

 

 あの手この手で追いつめて、罠も使い、霊能も使って追いつめたのだが、三人の少女が逃げ延びた。

 

 超鈴音。

 麻帆良最強の頭脳と評判の少女。

 言わずとしれた有名人で、事態の推移を冷静に受け止めつつも逃げ切ったものとして表彰された。

 

 神楽坂アスナ。

 腕力的に最強ともっぱら評判の悲劇の乙女。

 一時期、失恋で有名になったが、それでも持ち前ののポジティブさで切り抜け、今回は主に腕力的な非凡さが発揮され表彰。

 

 春日美空。

 最速の似非シスター。

 横島たちによる大人げのない交渉や、同僚のシスターである「ココネ」も人質にしたりしたのだが、それでも捕まることはなく逃げ切った乙女。

 ただし、見捨てたということでココネからの信頼は急落したという。

 ココネ自身は「ヨコシマン」に協力したが結果が出なかったと落ち込んだらしいが、麻帆良祭後に一緒に遊ぶ約束をして逆に盛り上がったとかなんだとか。

 

 鬼側の優秀者は、まぁ予想の範囲内であったとしれる。

 

 最多鬼賞:チーム横島 美神令子

 ※単独でもっとも効率的に鬼を増やした

 

 最速鬼賞:チーム横島 伊達雪之丞

 ※10人単位の鬼を最速で増やした

 

 最悪鬼賞:チーム横島 横島忠夫

 ※運営の想定を越えた手法で鬼をもっとも増やした

  ・人質 ・罠 ・買収 等々・・・

 

 さすがにここまで鬼側が多彩な彩りを見せるとは思っていなかった運営側は、次は絶対に運営じゃなくて参加者ではいる、と心に決めたそうである。

 

 ともあれ、波乱がありつつ、どこか事件性が薄く感じられた麻帆良祭は終わった。

 ただし、所々のクラスで、内装に施された加工をそのままにしてほしいという声が高かったのは、無駄に性能の高い麻帆良学生の影響なのかどうなのか?

 

 

 

 

 

 

 手合わせのやくそくぅ~ということで、古菲と横島が向き合ったのは、麻帆良祭一週間後であった。

 

 様々な柵があり、それなりに問題を解決しなければならなかった案件が多かったことが原因なのだが、自業自得な面も大きく割と本気で忙しかった。

 ミニ四駆関連で夏大会に招待されていたり、碑技術の案件でオカルトパテントが早々に通ってしまったり、その権利者として名前が入っている関係で、表の政財界から干渉がもの凄い勢いになってしまっていたりという「オカルト」系のものから、図書館島を本格攻略して、本来行ってはいけないところまで攻略してしまった関係で表に出してはいけない映像が表沙汰になったと猛烈な抗議が「秘匿」側のMM本国からきたり、その代償を求められたりなんだったりとモニュッとした経緯もあったが、そんなもの警備側の手落ちで表のオカルトには関係ありませんと強気で対応してスルーしたり。

 

 まぁ、一般のGS事務所としてはあり得ない「外交」をしていたというわけだ。

 

 

 とはいえ、MM本国のスルー以外は割と本格的に対応した影響で、「横島」の名が良い意味で表のオカルトとして刻まれ、人類の敵としての名前は霧散しつつあった。

 やはり、人類の半分の人口を占めるであろう性別の大半から求められるであろうオカルトアイテムを開発したという事実は、あらゆる意味で重いのだ。

 

 そんなわけで、六道経由、美神美智恵経由、横島百合子経由という三種コネクションルートによって一定数がばらまかれ、そしてそのコネクションルートの権威を猛烈な勢いで強化させた。

 もちろん、開発元である横島忠夫の元には莫大な資金が流れ込んできたのだが、この流入資金も関係者に大盤振る舞いしているあたり、商人と言うよりも別の何かなのであろうと母百合子は感心したという。

 

 それはさておき。

 

 横島忠夫と古菲の打ち合いは、カンフーアクションのようにはならなかった。

 古菲が打ち込むが、横島はその勢いを飲み込む。

 

 拳を蹴りを。

 叩き、打ち、擦るという中国拳法の骨子ともいえる攻撃手法をすべて呑み込んでしまう。

 相手を見る攻撃を、見せぬ攻撃を、あり得ない角度からの攻撃を、フェイントを、すべてを。

 

 ここまで巧く行かなければ焦るのがふつうだ。

 全く通じぬ自分の功夫に疑問を感じ、ゲシュタルト崩壊を起こすほどになるはずであった。

 しかし、古菲はゆがまない。

 自分の届かぬ先がふれられる存在として目の前にいて、そして対話できるのだ。

 これほどの喜びはあるだろうか?

 

 いや、ない。

 

 全身汗だくになり道場の冷たい床にうつ伏せになった古菲は、生まれて初めて心の底からの敗北を認め、そして再戦を望む。

 ただし・・・

 

「横島さん、いや、横島老師! ワタシを弟子にしてほしいアル!!」

 

 十分に修行して技を盗んでから。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、古菲もGS事務所勤務をすることのなった。

 除霊、というものを理解しつつ、今まで逃げるほか無かった対象に攻撃を当てられると聞いて燃え上がったのだ。

 当初は霊力の認識ができていなかったが、気の認識からアプローチしたところ、かなり順調に認識できていた。

 

 

「古ばかりズルいでござるな。拙者も修行させて欲しいでござる」

「えーーーーーーーー」

「ご・ざ・る」

 

 

 半ば強引に事務所入りを結構した楓。

 まぁ、横島自身、かわいい女の子が増えること自体に問題を感じていないので、かなりスルーだが、個人で妖怪変化と戦える経験と技術を持っている楓はすでに助手レベルであることを知るのはしばらく先のことであった。

 まぁ、何と言っても文化祭の後は期末試験が虎視眈々と待ち受けているわけで、仕事や修行よりも優先すべきという横島事務所の方針に従うほか無いわけだが。

 

 

 

 

「んー、アスナちゃんもずいぶん手が掛からなくなったわねぇ」

 

 実感のこもった愛子の言葉。

 

「え、そ、そうですか?」

 

 追撃するようにコノカもウンウンとうなづいている。

 

「ほんまやでぇ、アスナ。ノートも的確に取れてるしなぁ」

「うわ、なんかうれしいかも」

 

 バカレンジャーと呼ばれていたのは文化祭以前まで。

 後の小テストではすでにバカレンジャーから抜けており、成績予想で「中位以上」という結果が出ている。

 この結果に焦ったのは同じバカレンジャーばかりではない。

 ポストバカレンジャーと分類される生徒たち全体に危機感が広がっており、その焦りは共有されていた。

 様々な危機感の中で、もっとも切実なのは「桜咲刹那」だろう。

 今まで堅持していた「このちゃんから離れてガード」をかなぐり捨てるほどに追いつめられており、密着ガードに切り替えたと宣言した上でコノカに勉強を教わり始めたほどであった。

 

「このちゃん、ごめんなぁ、うちのかってばかりおしつけてごめんなぁ」

「ええんよ、せっちゃん。いろいろと理由があったのはしっとるし、お父様の教育方針の責任やもんなぁ」

 

 よしよし、と頭をなでるコノカにとって、今の刹那は「バカわいい」親友なわけで。

 先日までアスナが占めていたポジションでもあった。

 もしかするとコノカは、友人をだめな娘にする悪女なのかもしれない、とアスナは考えて・・・

 

「アスナ、なにか考えとる?」

「・・・イエ、カンガエテイマセン」

 

 

 やべーーーー、と内心のアスナは汗塗れであったが、表面上の動揺は抑えることに成功している。

 がんばれ、アスナ。

 癒しと思えた友人の本質は、結構真っ黒だぞ。

 

 

 

 

 

 事務所構成員の中で、新規参入組である楓と古菲は、現行のバカレンジャーである。

 当然の如くに成績不良者など修行の妨げになるということで、赤点などいっさい許さないという事務所方針の元で愛子空間合宿が行われている。

 修行と勉強が渾然一体となった脳筋学習法は割と二人には好評で、暗記系の問題などは筋肉に覚えさせるといきまいていたりする。

 こんな勉強手法はどこからきたのかと言えば、伊達雪之丞の学習法であった。

 非常に偏った脳筋学習であったが、実の所、某女学院のぶっ込み系女子や武術系お嬢様に好評で、同級生の中にも結構広がっているという噂。

 

 脳筋恐るべし、というか、霊能科って脳筋なんですよね、やっぱり。

 

 それもさておき。

 

 着実に、現役バカレンジャーの脱退実績が積み重なる中、バカリーダーことバカブラックのユエとピンクこと蒔絵が焦っていた。

 エレベーター式だから困らない、と公言していたバカレンジャー崩壊の危機だからだ。

 

「どうしよう、みんな勉強してて、なんか空気悪い感じ」

「・・・すこし面白くありませんね」

 

 勉強などと言うものは、必要な分野を必要なだけ学べばいい、というのがユエの持論であったが、さすがに「バカ」コミュニティーの縮小は悩ましい限り。

 担任の放任によって今まで放置されていた「赤点」保持者の部活参加が、しずな担任就任以降禁止される方向性になっていると知れば、もう逃げ場がないことが理解できる。

 

「・・・どうするぅ?」

 

 言葉の向こうには、今更勉強なんて無理だヨォという言葉が見え隠れしている蒔絵の台詞。

 

「・・・そうですね、すこしズルをしましょう」

 

 黒豆納豆コーラというジュースをすすりながら、ユエは清々しい笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「というわけで、ヨコえもん。なんとかしてください」

「おねがい、ヨコえもん!」

「「「「「おねがいしまーーーす」」」」」

 

 ユエとマキエ、さらにはチアリーダー三人組に加えてでこピンロケット等々、単純に言えばふつう成績組以下の2ーA揃い踏みであった。

 

「いや、ほれ、俺らもまじめに勉強してるだけだぞ?」

 

 肩をすくめる横島に、ユエはずずいっと詰め寄った。

 

「そこはかとなく、オカルトチートの香りがするのです」

「・・・う」

 

 全くないとは言えないので言葉に詰まるのだが、基本的には時間をかけた努力なので一応は胸を張る横島。

 

「・・・っち、期待はずれですね」

「いや、ダイエットと勉強には王道はねぇぞ」

 

 とはいえ、時間をかければ成績も上がる、ということで、愛子空間合宿に取り込んでみたのだが・・・

 

 

「横島君、あの子たち・・・」

「ん? まじめにやってるか?」

「・・・事実上無限に時間が確保できるとわかってから、もう、勉強なんかしている暇はないって感じで」

 

 思わず天を仰ぐ横島であったが、そこに助けの手が。

 

 

「おや、横島君。どうしたのかね?」

「(きゅぴーーーーん)」

 

 最終兵器の登場に、にっこりほほえむ横島であった。

 

 

 かくして、期末試験を前にして強化合宿を行った2-A生徒たちの成績は上がった。

 具体的に言うと、バカレンジャーというカテゴリーが消失したレベルで。

 ぶっちぎりで成績不良になっていた生徒たちが居なくなった影響は大きく、学年全体の成績の底上げにもなったというのだから、いままでバカレンジャーを放置していた罪業は深いと言える。

 

 底なし沼のような評判低下は避けられないタカミチであったが、今は戦火の彼方。

 火薬の煙の彼方の生活で何を思うのかは不明だが、何を失ったかを指折り数える生活をしていることは確かであった。

 

 それはさておき、2-Aの成績向上の背後には「GTN」ことグレートティーチャー新田の陰ありと噂が立ってはPTAも黙っておられず、大きく不満の声を上げたものであるが・・・

 

「なに、自習中に同じ部屋でたっていただけですぞ?」

 

 との言葉に、PTAではなく現役生徒たちの同情の声が響きわたった。

 ああ、なんて環境だ。いかに成績が上がろうとも、それだけは避けたい、と。

 かくして、試験勉強で某GSに頼ると成績は上がるがGTNがついてくると言う評判は広まり、本当に追いつめられた者の最後の手段として浸透したのであった。

 

 

 

 試験休み明け、万年びりっけつであった「A」組がトップに輝いた。

 二年の学年トップであり、三学年トップの点数であった。

 この奇跡の裏側はすでに有名で、「GTN」の効能がすばらしいことと愛子先生の手腕がトンでもないことが有名になってしまった。

 手に取れた成績表も今までにない内容で、殆どの生徒にとって気軽で気楽な夏休み突入と言えた。

 

 中等部女子はそんな流れだが、共学区某高校の1教室もにたような流れであった。

 愛子先生による個別教室のおかげで、成績不振者が消えて教員としての成績も上がったと担任も満足げであったり。

 

「で、横島。うちのてるみがおまえと遊びたいと言ってきてるんだが、時間をとれるか?」

「あー、かおるちゃんよぉ、夏休みは書き入れ時なんだがなぁ」

「アフターケア、だろ?」

「・・・了解、八月にはいると全国巡業で仕事が入ってるから、七月中に頼むわ」

「わかった」

 

 という予約が入る程度には人気になっている。

 

 そんな横島が事務所に戻ると、まるでそのまま中等部が引っ越ししてきたかのような勢いで女子中学生が集まっていた。

 

「・・・あー、アヤカちゃんや。これ何事?」

「実は、宿題を夏休み最初に終わらせようと言う話になったとき、愛子先生にご協力いただければ、かなり計画的に終わるのではないかという話になりまして・・・」

「「「「「よろしくおねがいしまーーーす!」」」」」

 

 うわぁ、と、思わず愛子を見る横島。

 

「もう、味占めちゃって。GTNも付ける?」

「「「「「それはごかんべん!!」」」」」

 

 かなり常駐率が高いGTN。

 愛子空間と密接な関係を感じられる話であった。

 

「んー、まぁ、うちの事務所の娘も七月中には宿題を完全に終わらせることなぁ? 仕事で全国巡業するから」

 

 おお、と何故か盛り上がる女子中学生の中で飛びついてきたのはエヴァンジェリン=A=K=マクダウエルそのひと。

 

「きょ、きょ、京都は行くか、いくのかぁ!?」

「あ、ああ、うん、コノカちゃんをGSに、って学園長ばかりじゃなくて実の父親にも挨拶せんとまずいしなぁ」

「・・・・おおおおおおおお」

 

 崩れ落ちるように声を漏らすエヴァを受け止めつつ、事情に詳しそうな茶々丸をみると、なぜかウンウンと頷いている。

 

「マスターは、日本趣味、それも古式ゆかしい日本文化を好んでいらっしゃる関係で、京都などの文化建築を好んでいます」

 

 ああ、なるほどな、と納得の横島。

 せっかく日本にいるのに、15年間もおあずけされてれば、そりゃ暴走もするか。

 

「あら、エヴァンジェリンさん。京都ぐらい個人で・・・」

「いいんちょ、エヴァちゃんは霊症で遠出できんかったんよ? わすれたんか?」

「・・・失礼しました、エヴァンジェリンさん。最近の闊達な姿を見ていますと、本当に忘れてしまっていましたわ」

「よい、雪広アヤカ。この夏休みでそんな思いをすべて吹き飛ばしてくれるわ」

 

 いい笑顔のエヴァは、早速宿題を始めるのであった。

 

「茶々丸、おまえも終わらせるのだぞ」

「はい、マスター」

 

 にこやか主従にほだされて、クラスメイトたちは持ち込んだ宿題の処理を始めたのであった。

 

 

「じゃ、俺らもやっとこうぜ」

「おう」

「はぁ、この宿題って、一気にやるもんじゃないと思うんだけど?」

「はいはい、タマモやん。がんばりましょうねぇ?」

 

 高校生組も早々に終わらせるための活動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 夏休み初めということで油断している生徒も多いが、いきなり宿題会をしているということで遊びに来た魔法先生や魔法生徒が驚いている。

 

「あ、あのぉ、私たちもやっていいですか?」

「おお、かまわんぞ」

「じゃ、じゃぁ、とりにいってきますぅ!!」

 

 とまぁ、こんな行動に移る魔法生徒も多数で。

 中にはシスターシャークティーのような、自分の受け持ちの魔法生徒のまじめな姿に涙を浮かべて感動している人も居たりする。

 

「ありがとう、ありがとう横島君。ワタシは今まで、こんなに感動したことはないわ!!」

「あー、美空ちゃんも結構まじめなところありますよ?」

「それをワタシに見せてくれないのなら、ワタシにとって無いも同然」

 

 はらはらと涙を流して感動をかみしめるシスターの視線に、どうにもこうにも居心地の悪い者を感じる春日美空であったが、勉強するという空気になっている環境でそれをやめてしまうのももったいないので、惰性ながら進めることにした彼女は、結構まじめであることが解る。

 

「・・・あー、ココネちゃんも連れてきた方がいいんじゃないっすか?」

「? ココネはまじめに一人でできる子よ?」

「いやいや、そうじゃなくて。こんな感じでみんなが集まってワイワイしている事に参加できなかったら、仲間外れにされたって拗ねるんじゃないっすか?」

 

 思わず、え、という顔でこちらを見ているシスターへ、横島は苦笑い。

 

「美空ちゃんだって、ひとりじゃやる気が起きないことでもみんなと一緒なら、って思うぐらいです。ココネちゃんだっていっしょでしょ?」

 

 その言葉を聞いて、自分の不明を理解したシスターシャークティーは、電光石火でココネをつれてきたのだが、案の定不機嫌。

 

「シスターとミソラだけ。ずるい」

 

 ともあれ、横島事務所に遊びに来れたという時点で記念が急激に上向きになり、みんなで夏休みの宿題をしていると理解して、自分の課題を黙々と始めたのであった。

 

「ココネ、解らないことは何でも聞くがいいっすよ?」

「・・・ヨコシマンに聞くから、ミソラはいい」

「な、なんだってぇ・・・、これが噂の寝取られ、寝取られなのかぁ・・・」

「ミソラうるさい」

「がぁーーーーん」

 

 

 とまぁ、こんなコントが所々で起きるのだが、やはりまじめに終わらせたい熱意の方が上回り、事務所コーヒーや事務所お茶菓子の差し入れ以外ではかなりまじめに進められたのであった。

 

 

 

 

 

「うわぁ、夏休みの宿題をこんなに早く進めたのって初めてかも」

「こんなに解る宿題って初めてだよね、お姉ちゃん」

「そうだねぇ、本当に愛子先生様々♪」

 

 バカレンジャー脱退を宣言した元ピンク、マキエ。

 今まで勉強が解らなくて宿題をどうやって解けばよいかすら解らなかった彼女にとって、理解しやすい内容の宿題という時点で破格の体験であり、昼頃から夕方まで一気に勉強するなんて経験は初めてのことであった。

 同じく、双子の鳴滝姉妹にとっても新鮮なもので、正直に言うともう少し集中して宿題をやっていても良いかもとすら思っていたのであった。

 そんな彼女たちをサポートするのは言わずとしれた愛子先生。

 彼女の的確なフォローのおかげで、殆どの生徒が初日で半分以上の宿題を終えていた。

 

「なんかさぁ、これ終わらせれば、夏休み最終日までお父さんの世話を焼けるって思うと、こう、盛り上がっちゃった」

 

 誰の台詞かはさておいて、麻帆良再弱と言われるバスケット部所属の某中学生は、今までにない手応えに感動していたりする。

 

「・・・うん、これなら県大会向けの特訓合宿に宿題なしでいけそう」

 

 水泳部所属の某中学生も鼻息が荒かったが、彼女の注目は水泳から少しそれていた。

 そう、この事務所の主である横島忠夫を視界の端にひっかけていたのだ。

 

 彼女自身、成長に恵まれた身体の影響で、男性からの目が気になるためか、男性恐怖症をすこし発症していた。

 加えて友人関係の影響で異性との接触が多いものの彼女自身は望んだ関係ではないので断り続けていることにも原因があるだろう。

 男性は、性的な視線で自分を見つめ、そしていやらしい思いをぶつけてくるものである、というのが中学生の、大河内アキラの感覚であった。

 

 

 

 似たような思いをぶつけられて辟易としていたはずの乙女、那波千鶴とも同じ感覚についての話をよくしていたのだが、何故か最近になって那波千鶴が高校生の男性に恋するようになった。

 何で、とおもって聞いてみると、

 

「だって、あの人。ワタシのことを小学生ぐらいの女の子って『思いこもうと』してるんですもの。かわいいのよ?」

 

 そういえば、彼、横島忠夫は「高校生以上じゃなければロリ」なんだったっけ?

 

 思わず吹いてしまった話だけど、彼はそれを実践していた。

 いや、高校生を軟派しているというワケじゃないんだけど、大河内アキラなどの「超高校生級」女子中学生が居てもがっついてこないのが好意的に感じられていた。

 

 そばで顔を見てみると少し格好良い。

 そばで声を聞くと、何となく格好良い。

 彼にまとう空気があるとすれば、それは暖かく気持ちのよいもの。

 

 なんだろう、この思い。

 なんだろう、この気持ち。

 なんだろう、胸の中がポカポカするみたいな、そんな感じ。

 

 うん、自分だけじゃ解らないから、誰かに相談してみよう、そうしよう。

 




なんつうか、オリキャラを一から作るよりも別から引っ張ってくる、なんと二次w
レースとなるとサイバーしちゃうのが神代クオリティーw

あと、心の動きをちまちま入れることで、ご都合主義にテコ入れなんかもしています。
あー、あと、作品内で三月はタカミチ不幸ですw

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