March 14, 2014
航空機が謎の失踪を遂げるというのは、アメリア・イアハートの時代の話だ。ところが現在、宇宙時代のシステムを搭載した250トンのジャンボジェット、マレーシア航空MH370便「ボーイング777」が6日間も消息不明になっている。それというのも、不明機の飛行経路と運航システムに関する最も重要な情報が、機上のフライトデータレコーダー(FDR)、すなわちブラックボックスの中に封じ込められているためだ。
10カ国あまりが協力し、約2万7000カイリ(約5万キロ)にわたって捜索活動を行う中、航空専門家の間では、
航空機と地上との通信手段を変えるべきか否かをめぐる議論が浮上している。
現在のところ、航空機と地上との通信手段は数えるほどしかない。そのどれもが異なる方向を指し示している
ことが、不明機の捜索を一層困難にしている。以下に、4つの主な通信手段を紹介する。
◆ 1. トランスポンダ
すべての民間航空機は、航空交通管制からの質問信号に応答する信号を発するためのトランスポンダを搭載し
ている。トランスポンダを使うと、指・・・
10カ国あまりが協力し、約2万7000カイリ(約5万キロ)にわたって捜索活動を行う中、航空専門家の間では、
航空機と地上との通信手段を変えるべきか否かをめぐる議論が浮上している。
現在のところ、航空機と地上との通信手段は数えるほどしかない。そのどれもが異なる方向を指し示している
ことが、不明機の捜索を一層困難にしている。以下に、4つの主な通信手段を紹介する。
◆ 1. トランスポンダ
すべての民間航空機は、航空交通管制からの質問信号に応答する信号を発するためのトランスポンダを搭載し
ている。トランスポンダを使うと、指定の4桁のコードによって個々の航空機を識別できるため、管制官は航空
機の速度、高度、進行方向を追跡することが可能だ。
マレーシア航空MH370便の場合、マレーシアのクアラルンプールから中国の北京へ向かうフライトの離陸から
約40分後にトランスポンダが機能を停止しており、そのため同機は南シナ海で消息を絶ったと考えられた。機能
を停止したのは、トランスポンダのスイッチが故意に切られたためか、あるいは航空機の電気系統が壊滅的なダ
メージを受けたためかはわかっていない。
◆ 2. レーダー
トランスポンダがなくても、地上レーダー(一次レーダー)を使って航空機の飛行経路を追跡できるが、個々
の航空機の識別はできない。MH370便が管制レーダーのスクリーンから消えた約1時間後、クアラルンプールから
西のマラッカ海峡へ向かう機影をとらえたのは、マレーシア軍の一次レーダーだった。
この機影が不明機のものである可能性をマレーシア軍が示唆したため、捜索範囲はマレー半島の西側海域にも
広げられた。その後、当局はこの可能性に疑問をもち、アメリカの国家運輸安全委員会とアメリカ連邦航空局の
専門家に、このレーダー機影の解釈を依頼している。
長距離の海上飛行では、管制レーダーが常に使用できるわけではないため、パイロットが管制官や航空会社と
高周波数帯の無線通信を使って連絡を維持している。
◆ 3. 機上コンピューター
データ監視システムが航空機システムのパフォーマンスを監視し、異常コードなどの少量のデータを地上の航
空会社に送信していると、ボーイング社の広報担当マーク・バーテル(Marc Birtel)氏は述べる。また、機体
に搭載したセンサーと、衛星を使ったリアルタイムのデータ送信によって航行中のエンジンのパフォーマンスを
追跡し、整備スタッフが前もって部品を発注したり、エンジン修理設備のある整備基地へ航路を変更させるな
ど、効率的に修理の準備を整えられるようにしている。
「Wall Street Journal」紙は米国時間3月13日、不明機から送信されたエンジンデータに基づき、同機が管制の
レーダーから消えた後、4時間飛行を続けた可能性が考えられると報じた。事実なら、捜索範囲はさらに拡大さ
れる。しかし、マレーシア政府とマレーシア航空は、エンジンが動き続けていたとする報道を否定している。
「The Guardian」紙の報道によると、ヒシャムディン・フセイン国防相兼運輸相代理は13日の記者会見におい
て、ボーイング社もエンジンを製造したロールス・ロイス社も、航空機から最後にデータが送信されたのは、
(消息を絶つ少し前の)現地時間3月8日午前1時07分だったとしていると述べている。
◆ 4. ブラックボックス
現行のフライトデータレコーダー(FDR)、すなわちブラックボックスが収集している包括的データを捜索隊
が入手できるなら、MH370便の捜索には何の困難もないだろう。ブラックボックスのデータにはGPSの位置情報も
含まれている。そのためブラックボックスは飛行中、衛星を使ってデータをリアルタイムかつ継続的に地上に送
信すべきだという意見もある。
ブラックボックスには、航空機が水没すると作動する音響発信機が備わっている。音波を発することで、ソナ
ーによる位置特定を容易にするものだ。また航空機には、陸上で墜落した場合に無線信号を発する緊急用のビー
コンも搭載されている。
データを現状のように保存すべきか、あるいは送信すべきかをめぐる議論は、2009年に発生したエールフラン
ス447便の墜落事故をきっかけに過熱した。同機はブラジルのリオデジャネイロからフランスのパリへ向かう途
中、大西洋の海中深く沈んだ。ブラックボックスには事故原因の解明に十分な情報が含まれていたが、発見され
るまでに2年以上を要した。音響発信機のバッテリーは30日しかもたないため、発信はとうに途絶えていた。
しかし、航空会社はデータ送信に踏み切ることを拒んでいる。世界中を年間何百万回とフライトする航空機か
らのデータを衛星を使って送信するのには巨額のコストがかかるのに対し、航空機の墜落事故は発生件数が少な
いというのがその理由だ。
PHOTOGRAPH BY AP