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2014年3月13日 (木)

Japanese onlyは人種差別か?

サッカーのJリーグの浦和レッズのサポーターが入口のところに「Japanese Only」という横断幕を掲げたことが人種差別的であるとして,無期限入場禁止の処分を受けたというニュースが,NHKの9時のニュースのトップでかなりの時間を割いて流されていました。日本人以外のサポーターは,ゴール裏の「聖地」には入ってほしくないというのが,この横断幕の意図であるということのようです(真意はよくわかりませんが)。確かに,こういう行動は好ましくないでしょうし,チームにとっては外国人の客も大切でしょうから,そういう営業妨害行為をした者に何らかの処分をしようとすることも理解できないではありません。しかし,報道で流れていただけの情報から判断すると,「Japanese Only」は人種差別に仮に該当するとしても,悪質性は弱いものでしょう。背景となる文脈が何かあって,この文言から,特定の人種や個人を排撃していることが明らかであれば別ですが,そうでなければ,これは「外国人入るな」を,きわめてマイルドな表現で述べたとも言えるのです。そうなると,これは施設管理権侵害の問題はあるとしても,表現としてはある程度保護されるべきものともいえます。繰り返すように,これは好ましい表現ではのでないですが,そうだとしても,NHKのトップニュースで人種差別的行為があったという形で報道するのはやりすぎではないでしょうか。アメリカ人出ていけとか,韓国人出ていけ,中国人出ていけと書いているわけではないのですから。
 サッカーでの人種差別というと,日本人選手が欧州で露骨な差別を受けてきたことは周知の事実でしょう。現在もそうした実態がないわけではないでしょう。そういう日本人の選手が被害を受けていることのほうこそ,もっと報道してもよいのではないでしょうか。日本人の行為を悪く報道して,日本人が被害者となるほうはあまり報道しない(私が知らないだけで,ひょっとするとNHKも報道しているのかもしれませんが)というのは,バランスが欠けているように思います。
 こういうニュースがワールドニュースで報道されることの弊害も考えなければなりません。どこの国でも多かれ少なかれ外国人差別があります(イタリア代表の黒人FWのバロテッリもひどい差別を受けてきたと言われています)。日本のこうした報道は,日本人は差別に対して厳しい国なんだというメッセージよりも,人種差別をする国で,それを東京オリンピックがあるから是正しようとしているんだというようなメッセージになってしまうおそれがあるのです。
 今回のケースからは離れますが,そもそも,日本のなかでは,日本人優先が原則でよいというところから考えるべきです。そのうえで事柄の性質上,どこまで外国人にも同じように門戸を開放すべきかを考えていくという思考方法をとるべきだと思います。外国人のほうも,日本において自分たちがすべての面で日本人とまったく同じように扱われるべきだとは思っていないでしょう。私が外国に行くときも,差別はされたくないですが,差別的な経験をすることはやむを得ないと思っています。国というのはそういうものでしょう。
 ちなみに,無期限入場禁止という措置を受けたサポーターのほうこそ,自分たちの幸福追求権という人権を侵害をされたとみることはできないでしょうか(別に彼らの肩をもつ気はありませんが)。物事は,常に対立する両面からみていく必要があるように思います。

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