15歳のニュース:竹富町の教科書、何が違う 検定パスでも国家観に差 /大阪

毎日新聞 2013年10月19日 地方版

 中学、高校の授業で使う教科書を巡り、地域や学界を巻き込んで問題化するケースが起きています。沖縄県八重山地方のケースを中心に、「教科書」とは何か、を考えました。【山成孝治】

 日本の学校で用いられる教科書とは、文部科学相の検定を経たものか、文科省自身が著作の名義を持つものだけです。昨年度、発行された教科書は、小学校51種、280点、中学校が66種、131点、高校が957種、989点に上ります。

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 日本の最西端に位置する沖縄県八重山地方の石垣市、竹富町、与那国町の3市町で、中学校公民教科書の選定が問題化したのは2011年8月でした。教科書を選ぶ「地区協議会」が、かつて「新しい歴史教科書をつくる会」と協力した扶桑社の子会社、育鵬(いくほう)社が発行する「新しいみんなの公民」を答申。石垣市と与那国町は答申通りに選定しました。竹富町は「地方教育行政法」を根拠に答申を拒否し、東京書籍が発行する「新しい社会 公民」を採択したのです。

 義務教育の教科書は別の法律に基づき、児童、生徒に無償で提供されますが、同一地区内で同じものを使うことを前提にしており、違う教科書を選んだ竹富町は無償化の対象外になりました。このため、同町教委は寄付金約1万7000円で23冊を購入し、生徒に配布。翌年度も竹富町は他の2市町と同一の育鵬社版を使うよう文科省が指導しましたが、東京書籍版を採用。自前で31冊を準備して生徒に配ったのです。

 しかし、下村博文・文科相は18日、竹富町の公民教科書の扱いが「違法状態だ」として、「地方自治法」に基づいて竹富町教委に是正要求を出すよう沖縄県教委に指示しました。

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 それでは、その2冊を比べてみましょう。上の表は目次の抜粋です。第5章は、「中学校学習指導要領解説」では「国際社会に対する理解を深めさせ、国際社会における我が国の役割について考えさせるとともに、人類の一員としてよりよい社会を築いていくために解決しなければならない様々(さまざま)な課題について探究させ、自分の考えをまとめさせること」を主な課題にしている章です。その中の2項目について、別項にまとめてみました(A、B)。検定済みでも、内容に大きな差があるのです。

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