稀勢の里を攻める遠藤(右)=ボディメーカーコロシアム
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◇春場所<5日目>
東前頭筆頭の遠藤(23)=追手風=が、かど番大関の稀勢の里を逆転の突き落としで破り、今場所初白星を挙げた。初土俵から7場所目での大関戦初勝利は、年6場所制となった1958年以降で2位タイのスピード記録。稀勢の里は初黒星を喫した。白鵬、日馬富士の両横綱は盤石の内容で全勝を守った。
ラストチャンスをモノにした。勝ったのが分かった遠藤は舌をペロリ。花道を引き揚げるまで表情を変えなかったが、テレビのインタビューに呼ばれると笑みがこぼれた。
「本当に信じられないというか、『勝ったんだ』とあらためて思っています。勝って師匠(追手風親方)の顔を見た時に実感がわいた。(5日間で)1番勝てると思ってなかったので。1番勝っただけでも上出来です」
初日から2横綱、2大関と対戦し4連敗。だが最後の大関戦でついに勝った。まげの結えない「ざんばら髪」の力士が大関を倒すのは、年6場所制となった1958年以降で初めてという快挙。夏場所にはまげが結えるかもしれないため、この日の勝利は貴重なのだ。
声援を力に変えた。今場所初めて地元の「追手風・遠藤穴水後援会」の32人が遠藤の実家のある石川県穴水町などからバスで約7時間かけて駆けつけた。東前頭筆頭に躍進したのを機に新調した2枚の横断幕やB4サイズの手作りの応援ボードで地元が生んだスターを後押し。遠藤も「みなさんが来てくれて無事勝ててよかった」とホッとしていた。
地元の応援はこれだけではない。遠藤が帰省すると立ち寄るすし屋「福寿し」の店主松本志郎さんは、昨年秋場所の幕内に上がった時と初場所で敢闘賞を受賞した際、ラベルに「祝幕内昇進(敢闘賞) 遠藤関」とプリントされた焼酎をプレゼントした。「次の焼酎は賞をもらうとか、三役昇進の時に取っておきます」と、三賞か勝ち越して三役に上がれば今場所で3本目の記念焼酎を造るという。焼酎も飲む遠藤にとってうれしいごほうびが増えるかもしれない。
横綱、大関戦を終えたが、まだ三役との対戦が残っている。「気を引き締めて頑張りたい。この1勝を無駄にしないようにしたい」。長岡(のちの大関朝潮)に次ぐデビュー7場所目で初めての大関撃破は豊山に並ぶ史上2位タイ。そんな記録に脇目も触れず、勝ってかぶとの緒をしめよ、との心構えでホープが中盤戦を迎える。 (永井響太)
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