ダイヤモンドの本物・偽物の見分け方

2014.03.14 12:00
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近年はジュエリー市場も偽ダイヤがゴ~ロゴロ氾濫中。ここではラボの合成ではない偽ダイヤを掴まされないために知っておきたいポイントをまとめてみました。


本物:天然ダイヤモンドvs.合成ダイヤモンド


1950年代半ばまでダイヤモンドは地下から掘り出した天然物ONLYでした。ダイヤモンドの生成にはとてつもない高温と圧力が必要なんですが、自然界でそんな環境が存在するのは地殻の140~190km下だけ。生成には10億年から33億年もの年月がかかります。人間の手に届くのはそのうち、たまたま地質変化や地殻変動の力で地表にア~ラヨットと押し上げられたダイヤだけでした。

そんな超希少な状況を一変させたのが、1953年に実現した「HPHT(高温高圧処理:high-pressure high-temperature)」と「CVD(化学気相蒸着:chemical vapor deposition)」というダイヤモンド合成法です。

HPHTは地下深くの高温高圧環境を再現する合成法で、CVDは炭化水素の混合気体による合成法。現在ラボで生成する合成ダイヤモンド市場はこのふたつがほぼ独占しています。

あとふたつ合成法には、デトネーションによる合成法(炭素を多く含む化学物質を爆発させてナノメートル級の大きさのダイヤを生成する方法)と、高出力の超音波でグラファイトを処理するキャビテーション法もあるのですが、こちらはHPHTとCVDのように広く商用化されるには至っていません。

合成ダイヤモンドの特性は工法・目的に応じて異なるものの、基本、地下から掘った天然物と変わりありません。むしろ人間が管理する環境で生成した人工ダイヤモンドの方が天然ダイヤモンドより硬度も熱伝導性も電気伝導性も優れているぐらいです。人工ダイヤには天然ダイヤのような不純物(inclusions)もありません。というわけで、ここでは天然ダイヤと合成ダイヤはふたつまとめて「本物」のダイヤモンドと呼ぶことにします。


本物の偽ダイヤモンド


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キュービックジルコニア(Cubic Zirconia)

テレビショッピングQVCでよく「キュービックジルコニア(業界ではCZと呼ぶ)」という言葉が出てきますけど、このCZは1976年のデビュー以来、現在に至るまで市場で一番広く認知されている偽ダイヤです。二酸化ジルコニウム(ZrO2)の結晶から生成されたもので、硬くて(ダイヤモンドほどじゃないけど)、無傷で、普通は無色(着色したものもあります)。価値は同サイズ・同クオリティーの本物のダイヤモンドとは比較にもならない安物です。

Image: got baby!


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モアッサナイト(Moissanite)

ダイヤモンドのように輝く上、硬さもダイヤモンドに近いため、採掘現場でも10年近く本物と思い込まれていたようですが、このモアッサナイト(モアッサ石とも)もダイヤモンドとは別物です。1893年にこの鉱物を発見したアンリ・モアッサン(Henri Moissan)氏の名にあやかってこう呼ばれてますが、その正体は炭化ケイ素(silicon carbide)なんでございますよ。

モアッサナイトは自然界では滅多に生成されないので、世の中に出回るものはほぼ間違いなく人造。ラボで生成に初成功したのはシリコン発見者でもあるイェンス・ヤコブ・ベルセリウス(Jöns Jacob Berzelius)氏ですが、後に粉砕・切削工具用の代用ダイヤモンドとして商用化したのはエドワード・グッドリッチ・アチソン(Edward Goodrich Acheson)氏です。

モアッサナイトは人が知る限り最も硬い物質で、用途は主に工業用ですが、貴金属にも使われます。CZほどメジャーではありませんが、モアッサナイトも本物のダイヤモンドとは比べるべくもない安物です。


違いの見分け方


違いを見分ける一番てっとり早い方法は、その道のプロに鑑定してもらうこと。ダイヤモンド鑑定の資格認定機関の世界的権威は「アメリカ宝石学会(Gemological Institute of America:GIA)」と「アメリカ宝石協会(American Gem Society Laboratories:AGSL)」で、真珠からルビーまで貴金属・宝石の質を検分し、鑑定書を発行しています。

チャレンジしてみたい方は、以下の各ポイントをチェックしてみてね。


鑑定の4C

1950年代までは鑑定の基準・方法もまちまちで、同じ石なのに鑑定士によって結果はまちまち…なんてこともありました。が、この混乱に終止符を打ったのがGIAが打ち出した「4C」という格付け基準です。登場以来、鑑定基準として世界中で広く採用されています。

4CではColor(色)、Clarity(透明度)、Cut(カット)、Carat weight(カラットで示す重さ)という4つのCでダイヤモンドを評価します。

  • Color(色): 普通のダイヤモンドはDからZの23段階で色を評価します。1個だけ眺めてやるのは難しいので、一定の照明と精密な視認環境で、既に評価済みの「マスターストーン(基準石)」と見比べて行います。GIAによると、D級は「真水の水滴のように無色透明」、最も高いZ級は「黄や茶色に染まっている」もの。

  • Clarity(透明度): インクルージョン(内包物)と傷を11段階で評価します。一番高いのは「Flawless(FL:無傷)」(10倍に拡大しても内包物も傷も見えない)で、一番低いのは「Imperfection 3(I3:不完全)」(10倍に拡大するとどっちも見えて透明度と輝きに支障を来すレベル)。

  • Cut(カット):貴金属のダイヤモンドは最も美しく輝くかたちにカットしていますが、中でも主流の丸型のラウンド・ブリリアンカット、これは鑑定の対象になります。GIAのサイトによると、各切子面(facet)それぞれの比重を計算し、ダイヤを真上から見た時の美しさに与える影響を見るんだそうな。「Excellent(EX:優秀)からPoor(P:貧弱)までの5段階、DからZまでの段階評価を使い、輝き(光を弾く度合い)、ファイヤー(ディスパージョン。光の拡散度)、シンチュレーション(スパークル。光のきらめき)、そして全体的デザインとカット職人の技量まであらゆる要素を判定する」そうです。

  • Carat Weight(カラットで示す重量): 概してダイヤモンドは重ければ重いほど価値は上がります。1カラットとは200ミリグラムのことで、これを100等分すると1ポイント。1カラット=200mg=100ポイントです。鑑定士が「25ポイント」だと言ったら、それは「0.25カラット」という意味。


4Cはダイヤモンド鑑定の国際基準として定着してるので、どの鑑定書にも4Cの基本情報は記載されています。こんな風に。


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鑑定書は石の真贋と質を保証するものなので、鑑定書付きの宝石は、鑑定書が偽物でない限り本物ということになります。


ただ見る



「左が本物、右が偽ダイヤ(0:22)。輝きの違いは一目瞭然。紙やすりかけると偽ダイヤはボロボロに傷がつく。本物はインクルージョンがあるけど、偽ダイヤはない」


もちろん鑑定書のないダイヤモンドが全部偽ダイヤモンドと決まったわけではありませんけどね。プロに鑑定してもらうのが一番ですが、そこまでしたくない人もいると思うので、簡単な見分け方をいくつか紹介しておきますね。


偽物は下の文字が読める

ダイヤモンドは「屈折率」が高い、つまり石を通過するときに光が結晶格子でかなり曲がります。他方、キュービックジルコニアは「プロズム効果」、つまりジュエリー業界で「ファイヤー」と呼ばれる光の拡散度が強く、綿ボールみたいに見えるのです。

石がルーズ(指輪や宝飾にマウントしてない素の状態)なら、頭(とんがってない方)を下にして新聞紙に置いてみてください。下の文字が読めたら、その石はたぶん偽物です。 本物なら、トップからとんがってる方を見た場合、屈折率高すぎて石の先端さえ見えなくなります(これはマウント後のダイヤモンドを見分けるのに便利)。

同様に、白い無地の紙に点を描いて石を置いて覗いてみましょう。複屈折で下の点が2つに見えたら、それはダイヤモンドではなく、たぶんモアッサナイトです。


偽物は完璧過ぎる

人間がコントロールしてない自然環境で生まれた天然ダイヤモンドにはよく、黄・茶色の色味や、他の鉱物の薄片(インクルージョン)が格子構造の中に少し混じってます。一方、完全な衛生状態で生成したCZ(キュービックジルコニア)には欠点がありません。 もちろん中には欠点らしい欠点もない奇跡の本物ダイヤもあるので、欠点がないから本物…とは言い切れませんけどね。

あと注目ポイントは宝石のガードル(カットで先端にキュッと締まる手前の一番幅のあるところ)。ガードル周りが面取りしてなくてスムーズに丸くなっていれば、そやつはCZ(キュービックジルコニア)です。ダイヤモンドには必ず平面の切子面(facet)があります。面が沢山あって円に近い形になることはありますが、それでも丸くはなりません。


偽物は2倍重い

CZ(キュービックジルコニア)は見た目はダイヤモンドそっくりだけど、密度は結構あります。比重は5.6~6.0で、同じ体積で比べた場合、CZはダイヤモンドより大体1.7倍重いんです。マウントしてない石のダイヤモンドなら比べるのは簡単。CZと本物のダイヤを掌に置いて、 ポンポンと優しく弾かせてみるとすぐ、どっちがキュービックジルコニア(重い)でどっちがダイヤモンド(軽い)かわかりますよ~。


偽物は曇る

息をかける原始的な鑑定方法もあります。汚くなった眼鏡を磨く時みたいにハーッと息をかけて曇らそうとしても、本物のダイヤは思うように曇りません。ダイヤモンドは熱伝導率が高いので、曇らせても曇らせてもすぐ晴れてしまうのです。曇れば、それはおそらく偽物です。


テストしてみよう


以上ご紹介した方法はアバウトな鑑定方法なので、使うときもそのつもりで。もっと正確に鑑定できる方法も沢山あるのですが、こちらは市販の鑑別器具が必要です。


電気を通してやる

モアッサナイトとダイヤモンドを一瞥しただけで見分けるのは、さしもの経験を積んだ鑑定士でも不可能に近いため、ある程度カラット貯めこんでる宝石商には電気のモアッサナイト&ダイヤモンド判別器なるものを常備してます。電気伝導率に開きがあるので、この手のひら端末でちょこっと電流を流して導電性を計測すれば鑑定は一発!


熱を通してやる

ダイヤモンドは熱伝導率も電気伝導率に負けないぐらい高いので、熱伝導ダイヤモンドテスターにかければ30秒未満で鑑定は完了です。装置内にはサーミスタが2つあって、中の熱い銅片から石に伝導する熱量を計測するんですね。模造ダイヤより本物のダイヤは熱をどんどん通す(逃がす)ので、熱を加えてから触ってヒンヤリ冷たかったら、それは間違いなくクールな本物ダイヤちゃん。




これで質屋のスターになれる…ことはないにしても、詐欺から身を守る足しにはなりそうですね。


BI - GIA - Wikihow - Wiki 1, 2 - Racked - Smithsonian - eHow
top image: Africa Studio


ANDREW TARANTOLA(原文/satomi)

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