朝鮮総連:立ち退き公算大 本部建物、高松の企業落札へ
毎日新聞 2014年03月12日 20時42分(最終更新 03月12日 23時14分)
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の競売で、東京地裁は12日、昨年10月の再入札の開札手続きを20日にやり直すと明らかにした。再入札には、書類不備で落札を無効とされたモンゴル企業と高松市の不動産会社「マルナカホールディングス」しか参加しておらず、同社が落札する見通しとなった。同社の代理人弁護士は朝鮮総連に明け渡しを求める考えを表明、総連は立ち退きを迫られる公算が大きくなった。
落札者が決まらない場合は改めて入札を実施するのが一般的で、入札結果を調べる開札だけをやり直すのは異例。朝鮮総連に対する債権を有する整理回収機構が競売を申し立ててから1年8カ月が経過しており、地裁は早期終結を図ったとみられる。24日に売却の可否を正式決定する。
競売の対象は東京都千代田区にある中央本部の土地約2390平方メートルと、地上10階、地下2階で延べ床面積約1万1730平方メートルの建物。代理人によると、マルナカホールディングスは不動産投資目的で入札に参加した。応札価格は不明だが、近日中に落札に必要な保証金(約5億円)を納付するという。
マルナカホールディングスは資本金5000万円。傘下のマルナカと山陽マルナカが四国や中国地方でスーパーマーケットを展開していたが、2011年11月に両社をイオンに売却していた。【川名壮志、伊藤遥】
◇「組織弱体化、打つ手なし」総連関係者
朝鮮総連中央本部の土地・建物を高松市の「マルナカホールディングス」が落札する公算が大きくなったことについて、総連関係者は「退去せざるを得ないだろう。組織の力も以前に比べ弱まり、手の打ちようがない」と話した。活動拠点から退去を迫られることで、組織の衰退傾向に拍車がかかりそうだ。
公安当局によると、総連の構成員は数十年前から減少傾向が続き、現在は数万人とされる。2002年、金正日(キムジョンイル)総書記(当時)が日本人拉致を認めたことで、組織の求心力や資金力が急速に失われたとの指摘もある。
朝鮮総連が現在の場所に中央本部を構えたのは1960年代初め。現在のビルは86年に建設された。事実上の「北朝鮮大使館」と呼ばれ、総連にとって象徴的な建物だった。
公安関係者は「北朝鮮が核やミサイル開発で国際的に孤立するのに伴い、朝鮮総連の力も弱まった」と指摘。今後は別の施設に移転し、活動を継続せざるを得ないとの見通しを示した。