ウクライナをめぐり米露が激しく対立するなか、両国の宇宙飛行士3人が3月11日、そろって国際宇宙ステーション(ISS)から地球に無事帰還した。ISSの運営などに関する米露の協力体制について、米航空宇宙局(NASA)は「全て通常通り」と強調する。ただ、ISSへの“送迎”はロシアの宇宙船ソユーズが一手に引き受けており、関係が悪化すれば輸送手段のない米国の飛行士の帰還に不安が生じかねない。このため、米政府は民間企業による「宇宙タクシー」計画を強力に支援しロシア依存からの脱却を急ぐ構えだ。ウクライナ情勢が宇宙にも波及している。
中央アジアのカザフスタンに広がる雪原にソユーズ宇宙船で無事着陸した3人は、ロシアのバイコヌール宇宙基地のスタッフに出迎えられ、がっちりと手を握り合った。帰還したのは、ISS船長の任務を日本の若田光一さんに引き継いだロシアのオレク・コトフさん(48)とセルゲイ・リザンスキーさん(39)、米国のマイク・ホプキンスさん(45)の3人。
コトフさんは、ロシア軍が侵攻したウクライナのクリミア半島の出身で、2007年と09〜10年に計526日間、ISSに滞在した経験を持つロシアを代表する飛行士。ソチ五輪の聖火を持って宇宙遊泳を行ったほか、今回が初の宇宙飛行となる2人をがっちりサポートした。
ホプキンスさんは、ソユーズからツイッターに「家に帰る途中だ」と投稿する余裕もみせ、チームワークの良さをうかがわせた。
帰還に先立つ今月(3月)4日、NASAのチャールズ・ボールデン長官(67)は「(宇宙での)米国とロシアの関係は全て通常通りだ」と強調。「米国は13年間にわたり、ISSの運営に参加しており、その間いくつもの国際危機を乗り越えてきた」と語った。一方で、ウクライナ情勢について、「状況を見守っている。必要になれば飛行士の安全を確保するための危機管理策を検討するが、現時点でそうすべき理由はない」とも述べ、一抹の不安をのぞかせた。
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