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第1回】すごいや!「やおい穴」は本当にあったんだ!
やおい穴。それは、ボーイズラブ(やおい)作品において、男性キャラ同士が性交する際に描かれる正体不明の“穴”の通称。存在はささやかれるものの、共通認識の確立していなかったその“穴”の真相にせまるため、AV監督の二村ヒトシさん、BL研究家の金田淳子さん、そして編集者・文筆家の岡田育さんの3人がタブーなき激論を交わします。*(アナル/やおい穴)の迷宮に迷い込んだ3人が、“穴”を掘り尽くした果てにたどりつく場所は? 前人未到(たぶん)の領域に到達する歴史的瞬間をお見逃しなく!(全8回)
※本連載には、刺激的な内容・画像などがふくまれています。職場や公共の空間での閲覧にはご注意ください。

左から、岡田育さん、金田淳子さん、二村ヒトシさん。ゲンロンカフェにてなぜかジョジョ立ち。
穴だけに……ツッコミどころ満載
岡田 さて、このたび * の聖地と呼ばれる五反田(※1)で「やおい穴」について語るイベントを開催する運びとなりました。今まで腐女子の間で「お尻のあたりに、男同士がうまいこと結合できる穴があるらしい」という共通認識はあったものの、これまで深くは追究されてこなかった「やおい穴」について、女側と男側の双方からじっくりと掘り下げていきたいと思います。
※1:五反田はSM系風俗店のメッカ。男性が自身の肛門を責めてもらえる専門店が多数あるほか、マニアックなものだと、乳首責め限定の店などもある。「男性が受け身になれる」「男性が声を出してよがれる街」として(一部では)有名。
二村・金田 よろしくお願いします!
岡田 とはいえ「やおい穴」という言葉は、そもそもの定義があいまいなんですよね。素直に現実のアナル、肛門と捉えられればいいのですが、BL作品を見れば見るほど、ブツが肛門に挿入されているとは思えないセックス描写が多いんですよ。
二村 体位とか見ても、「そこに穴はねぇだろ!」とツッコミたくなる体位で挿れていますよね。あとは「その角度では入らないのではないか?」「ツルンと滑らかに入りすぎ」という疑問もある。
岡田 そうそう。あと、やおい穴って、だいたい“濡れる”ものなんですが、「潤滑油を使っているのか?」「肛門から液体を出しているのか?」「だとしても、そもそもこんなに濡れるのか?」と、ツッコミどころが満載なんです。
金田 それはやっぱり、穴だから。
岡田 ツッコミ待ちだと(笑)。だからこそ、実はそこに肛門ではない、何か別の穴があるんじゃないかと、思い描いてしまうんですよね。ここでお見せしたいのが、「やおい穴の派閥関係図」です。
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著者プロフィール
アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應義塾幼稚舎卒で慶應大学文学部中退。Dogmaからリリースした『美しい痴女の接吻とセックス』『ふたなりレズビアン』『妹に犯されたい』『集団痴女』『すべての女性があなたより背が高い世界』『マ○コがマ○コに恋をする理由(わけ)』各シリーズで、画期的なエロ演出を数多く創案。現在は、MotheRs(痴女専門)・美少年出版社(女装っ子専門)・レズれ!(女性同士専門)・欲望解放(本人のセックス専門)の4つのAVレーベルを主宰・経営するほか、ベイビー・エンターテイメント、ソフト・オン・デマンド、エスワン、ムーディーズ等からも監督作品を発売。昨年からソフト・オン・デマンド制作部門であるSODクリエイト社の顧問(若手監督への「エロとは何か」指導を担当)にも就任。著書に『恋とセックスで幸せになる秘密』(イースト・プレス)など。対談集『淑女のはらわた』(洋泉社)も発売中。
公式サイト:nimurahitoshi.net
twitter:@nimurahitoshi / @love_sex_bot
社会学者。やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家。1973年富山県生まれ。東京大学法学部を卒業後、文学部に学士入学。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(社会学)。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見信哉編著、有斐閣、2006年)の「第十章 マンガ同人誌 解釈共同体のポリティクス」。ひげ・めがね・老人・武将・ヘタレ・年下攻が大好物。ジェンダー論、社会学の視点から、やおいを研究している。
1980年生まれ東京都出身。編集者・文筆家。文化系WEB女子集団「久谷女子」メンバー。フジテレビ系『とくダネ!』コメンテーターとして出演中。私は普通の人間です。
ウェブサイト:okadaic.net
Twitter:@okadaic