村井チェアマンの会見での主なやりとりは次の通り。

 「村井でございます。今、話がありましたが、3月8日、浦和レッズ対サガン鳥栖の試合で一部サポーターによる差別的言動、行為がありました。Jリーグ全体を統括する立場、チェアマンとして支えていただいているすべてのみなさんに多大な迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。処分に対して報告します」

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 「処分を今朝、決めました。この間の経緯を説明します。一報を受けまして、レッズの淵田社長が10日月曜日に来ていただき、事実報告をいただきました。それに対し、私のほうから事実確認をお願いいたしました。期限は今週末の明日いっぱいまでとお願いした次第です。ただこの間、日々日々、Jリーグに対する信用失墜の声がきかれていましたし、口頭、電話でも逐一、報告を求めていました。昨日、22時30分、第一報の文書の形で経過報告を受けた。今朝7時25分、最終の事実確認をまとめてもらった文書を受け取った。今日の11時に淵田社長に来ていただき、私の処分案を伝えました。この間、本来は裁定委員会で第三者の助言を受け諮問をする。(裁定委員会委員長の)堀田先生に口頭で案に対する意見を求めたところ、内容についてご理解いただき最終的に文書と口頭でのやりとりが一致したので、本日クラブに内容を伝えました。本件は、すべての良心あるサポーター、この試合を楽しみにしている清水側のサポーター、選手、関係者、すべての人を裏切る形となった。本件、自分としても厳しく受け止めて二度とないように周知徹底したい」

 ――なぜ無観客試合という結論に至ったか。制裁の理由に累犯があるということがあるが、それが処分の重さを決める判断材料となったか

 「無観客試合に関してはFIFA(国際サッカー連盟)の規定、例えば差別的な行為があった場合は懲罰としては無観客ですかね。こういう条文があります。違反者がサポーターの場合は、と。重大な違反には40万円以上の罰金を科した上で、重大な違反には観客のいない試合の開催、その上で試合の没収、勝ち点の減点、または資格剝奪(はくだつ)などがある。根拠にしたのはFIFAの規定、それに基づく詳細なルール。サポーターでも重大な場合は無観客試合があると。今回は、累犯という質問があったが、差別的な行為が過去にも言動としてあったことを踏まえて重大な差別的内容ととらえ、無観客試合とした。この先には降格とか会員資格の剝奪(はくだつ)とかあるが、こういう行為が繰り返されればそれも視野に入ってくる」

 ――「JAPANESE ONLY」の文言の意図をクラブがどう判断して、どう報告を受け、リーグとしてどう判断したか。撤去までに不手際があったと思うが、どういう説明を受け、チェアマンとしてどう判断したか

 「JAPANESE ONLY」の文言を浦和側がどう解釈したかは後で浦和の記者会見で出ると思うが、私の認識は、掲出の側の意図はどうあれ、見た外国人の方が差別的と受け止めるというのは自然で、私も差別的表現と認識している。不手際については、浦和から私が報告を受けた内容とほぼ同等のことを開示してくれという話をしましたので、時系列的に細かく会見で話があると思う。その内容を受けた私の心証は、撤去せよと指示したにもかかわらず、試合終了まで放置された。これは違反行為をサポーターがしただけでなく、差別的掲示をそのまま放置したのは、差別的な行為に加担したと受け止められてもしかたがないとクラブ側には言った」

 ――これまでは、裁定委員会を開くにあたって、解決まで時間を要するケースが多かったが、今回、異例のスピードです。これは人種差別的行為を重大に受け止めたことの表れか

 「そうですね。チェアマンメッセージで一人でも多くの新たな観客を迎えたいと、お年寄りでも子どもでも女性でも家族連れでも。固定したコアサポーター以外にも、新しい人をお迎えしたいと言っていた。私の基本方針であり、当然、外国人の方もそう。様々な人に来ていただきたいという私の信念、思いに対して真逆の行為でした。私の判断として意思を早く伝えたかった。それから、Jリーグは子どもたちが1番なりたい将来の職業のナンバーワンなのです。子どもたちに、仲間はずれはしてはいけないとJリーグは伝える責任があると、多くの関係者にそうしたメッセージを(伝えたくて)。Jリーグの100年構想とか理念はサッカーにかかわらず豊かなスポーツ文化を広げる信念があったと私は理解していて。仲間はずれはしてはいけないと、早く子どもたちに伝えたかった」

 ――再発防止に向けてリーグとして出来ること、やるべきことをどう考えているか

 「こうした問題はハウツー、マニュアル、禁句集があるものではなく、それを受けとる側への気持ちの感受性をどう養うかが本質的なテーマ。こういう言葉が良くてこれは駄目というのは、ハウツーにあるのではなくて、サッカーに関わる人がこの問題をどう感じるか、感受性をどう高めるかという問題と思っている。特効薬があるわけではないし、短期で解決できるものではないが、問題の本質が極めて重いと伝えることから始まって。そういう意味では無観客試合は強烈なメッセージを持っていると私はこの案にしたが、まずはそのメッセージを伝えること。リーグとしては人権問題、差別に対して周知徹底するトレーニング、広報活動、このあたりを再点検して強化したい」

 ――無観客になるとチケットの払い戻しなど出るが、費用的負担、人的サポートもすべて浦和が負担か

 「制裁に伴う金銭的負担は原則、浦和が持つと通知している。浦和側は今回の件を深く受け止めている。自らの制裁処分を発表すると思うが、浦和が改善するプロセスにおいてわれわれが助言できることはしていく。ただ直接的な金銭負担は浦和の負担」

 ――試合終了まで撤去できなかったと言っていたが、掲示者の同意なしに撤去できないという取り決めがあったと聞いている。Jリーグのルールと違うと思うが、それが存在したことについて。また、写真を見る限り手の届く位置に横断幕があった。外す人がいなかったサイレント・マジョリティー(積極的に発言しないが多数派である人)が浦和の問題を繰り返したと思うが、それに対してどう思うか