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『G0.5(前編)①』三橋貴明 AJER2014.3.11(5)
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現代ビジネスに連載「三橋貴明の第2次所得倍増計画」【第4回】第一章 アベノミクス「第三の矢」は所得格差を拡大する(後編)~労働者「逆転政策」、「非正規雇用の正規雇用化」を実現せよ!~ が掲載されました。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38613
さて、取り上げたい件が色々と貯まっているのですが、本日はこちら。
『FIT:経産省、太陽光制度見直し 認定後半年で失効」
http://mainichi.jp/select/news/20140313k0000m020023000c.html
再生可能エネルギーで発電した電気を一定価格で買い取る固定価格買い取り制度(FIT)を巡り、経済産業省は12日、国から計画の認定を受けてから6カ月以内に設備と土地を確保しない事業は、認定を自動的に失効させる制度を導入する方針を明らかにした。不当に高い利益を得ようと、認定後もなかなか事業を始めない業者を排除するため。設備容量50キロワット以上の太陽光発電が対象で、4月以降の認定分に適用する方向だ。
経産省が12日、FITの制度運用を議論する有識者の作業部会に見直し案を提出し、大筋で了承された。
FITを巡っては、国の計画認定により高値で電気を買い取ってもらえる権利を取得しながら、太陽光パネルの値下がりを待ってなかなか事業を始めない業者が問題となっていた。ただ、設備と土地の事前取得を認定の条件にするなど厳格化すれば、問題のない事業者の参入まで妨げる恐れがあるため、一定期間後に認定が自動的に切れる(失効)条件を設ける方向で検討していた。既に運転開始している事業の約8割が認定後6カ月以内に設備と土地を確保できており、今後は6カ月という期限を設ける。ただ、電気を送電線につなぐ電力会社との協議に時間がかかる場合は、延長を認める方針だ。
設備容量50キロワット未満の小規模事業は、件数が膨大なため適用を見送る。400キロワットの設備を40キロワットの設備に10分割して申請するなどの「抜け道」を防ぐため、同時期に事実上同じ土地で計画された小規模事業は、大規模な1件として認定する。』
実は、FITには普段「糾弾」している「外資規制がない」「買い取り代金が発電開始時ではなく認定時に決まる」などの問題の他に、「法の網の目をついた」小銭稼ぎの手法がいくつも存在します。
なぜ、今まで書かなかったといえば、冗談抜きに「真似される」と困るためです。何しろ、誰にでもできます。
3月12日に、ようやく経産省が上記の「小銭稼ぎ」の一部にメスを入れる姿勢を明確化し、話が進みそうなので公開します。
FITの法、すなわち再生可能エネルギー特別措置法(正式名称は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」)はザル法案で、色々と「想定していない」のです。何しろ、震災後のどさくさに通されてしまったショック・ドクトリン法であるため、中身について十分な吟味が行われませんでした。
というわけで、FITは法的に(主だったものだけで)三つの小銭稼ぎを可能としてしまっているのです。
(1)空枠取り:もちろん、2012年時点で42円/kWhという「世界最高」の買取価格を確定させるため、年度末までに大臣認定と書類提出を終わらせ、じっくりとパネル価格に下落を待つスタイルになります(現在の買取価格38円/kWhも、文句なしで世界一の高さ)。一応、空枠取りは将来的に発電事業を開始する予定にはなっているわけですが、「いつ」始めるかは事業者側の勝手です。
(2)ブローカー:こちらは端から発電ビジネスをやる気などありません。大臣認定と書類提出で「42年/kWh」などと買取価格を確定させ、土地および買取価格の「権利」を転売する「ビジネス」になります。間もなく、買取価格が改訂される時期(年度末)ですので、現在もブローカーや空枠取りの認定申し込みが殺到していることでしょう。いわゆる「駆け込み認定」です。
(3)小分け:これは技術的に少し難しいのですが、FIT事業で太陽光発電ビジネスをする際に、50Kw未満の低圧連系であれば、数百万円のコストがかかる高圧受電設備や、電気主任技術者が不要というルールになっています。というわけで、たとえば10000Kwのメガソーラーの場合、49.9Kwの太陽光発電x200件に「小分け」してしまうわけです。結果的に、FIT事業者側は各種のコストを節約できるのに加え、本来は事業者が負担しなければならない系統対策コストが需要家負担になります。
いかがでしょうか。よくもまあ、こんな細かいことを考えるなあ、と、感心したくなりますが、彼らに入る「小銭」の出どころは、我々が毎月支払っている再エネ賦課金なので、笑いごとではありません。
日本に限らず、FITで先行した欧州も再生可能エネルギー法(ドイツ)はザルだったようです。とはいえ、最大の「ザル」は、当初の欧州諸国はFITの買い取り金額の上限を儲けなかったことだと思います(日本のFITにもありません)。
結果的に、「美味しい市場」であるメガソーラーへの投資が殺到し、国民の再エネ賦課金負担は上昇していきました。特に無茶苦茶な状況になったのが、再生可能エネルギー法成立一番乗りだったドイツです。
再生可能エネルギー法成立以降、ドイツでは発電に占める再生可能エネルギーの割合が7%から23%に伸びました。結果的に、ユーザーは巨額の賦課金(日本の再エネ賦課金と同じ)の支払いを強いられているわけです。
その額、驚くなかれ230億ユーロ!(約3兆2200億円、2013年)。不安定な再生可能エネルギーを利用するために、ドイツ国民は一人当たり年間4万円を超える負担をしている計算になります(世帯当たりではなく国民一人当たりです)。しかも、ドイツは大容量の電気を使う大企業は、賦課金負担を免除されているのです(これは日本も同じ)。
日本はドイツのように悲惨な状況になる前に、早めにFITを潰さなければなりません。そのためには、FITについて「正しい情報」を二本国民や政治家に知ってもらう必要があり、しつこく、しつこく批判を続けているわけです。
経済産業省は、このたびFITの規制(認定から六か月以内に設備と土地を確保しないと失効。小分けの禁止)を実施することになりましたが、50Kw未満の小規模事業者は適用外です(こっちの方が数が圧倒的に多いにも関わらず)。まだまだ、ブローカー行為や空枠取りは横行するでしょう。しかも、適用が「4月以降認定分」からなので、今月末までの「駆け込み認定」分は対象外になってしまいます。
それにしても、上記が現実でありながら、
「再生可能エネルギーが電気料金を引き下げ、脱原発を可能とする」
「ドイツのように再生可能エネルギーにシフトし、脱原発を実現しよう」
などと平気で口にする人が少なくないわけですから、無知というのは怖いものです。少し考えてみれば、「そんな甘い話はない」ということに気が付きそうなものです。
と言いますか、この手のことを「考えなくなった」のが、まさに戦後の日本国民であり、バカの壁ならぬ「戦後レジームの壁」なのでしょう。というわけで、戦後レジームの壁を打ち破るためにも、皆様、正しい情報を知り、周囲の方々に教えて差し上げて下さい。
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