(2014年3月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
シリコンバレーの投資家にとって、サイバーセキュリティー新興企業が最新の興味の対象になった。こうした投資家はオンライン上の犯罪者と戦うための最新技術を支援しようとしており、ベンチャーキャピタル(VC)投資が同セクターに殺到している。
調査会社プリブコのデータによると、サイバーセキュリティー産業のアーリーステージ(創業初期段階)の資金調達は昨年60%近く増加し、全世界で2億4400万ドルに達した。M&A(合併・買収)件数はそれ以上の速さで増えており、前年比100%を超す伸びを見せ、週1件以上のペースに達している。こうした数字は、大抵は従業員数が少ない若い企業に総額数十億ドルのバリュエーション(価値評価)が与えられていることを示唆している。
サイバーセキュリティー企業に対する投資ブームの背景には、サイバー犯罪が増加していることや、米小売り大手ターゲットでのデータ流出やソフトウエア大手アドビでの顧客情報窃盗など、注目を集める攻撃が脅威の大きさを浮き彫りにしたことがある。
サイバー犯罪の増加で企業の意識が大きく変化
シリコンバレーのVC企業クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)のパートナー、テッド・シュライン氏は、多くの企業で「非常に大きな意識の変化」が起き、サイバーセキュリティーにお金をかける意欲が高まっていると言う。
「悪者が賢くなり、以前より潤沢な資金を持つようになり、手口も変わった。善い者はその動きについていかなければならない。その結果、グローバル2000(世界の有力企業2000社)などでは自社システムを守るために莫大な支出が行われている」
大学などの新しい分野も攻撃の被害者のリストの上位に来るようになり、小さな企業さえもが主要な標的になっている。
話題の新興企業数社の取締役会に名を連ね、今年1月に約10億ドルでファイア・アイに買収されたマンディアントを支援していたシュライン氏は、企業幹部は今、世の中には2つのタイプの企業しかないことに気づいたと言う。つまり、システムを侵害され、その事実を知っている企業と、侵害され、それを知らない企業の2つだ。
ネットワーク機器大手シスコシステムズの報告書によると、全体として、サイバー犯罪は昨年と比べ14%増加している。複数の国家が企業から知的財産を盗んで国内の競合企業に渡すためにハッカーを支援していると非難されている一方、高度なスキルがない人でも金銭的利益のためにツールを買って脆弱性を利用できるようにする闇市場が誕生している。