◆ 「いじめ特定できぬ」 地裁、原告の訴え棄却

 県立高畠高校で2006年11月、渋谷美穂さん(当時16)が自殺したのはいじめが原因だったとして両親が県に約8920万円の損害賠償を求めた訴訟で、山形地裁(石垣陽介裁判長)は11日、「いじめの可能性は否定できないが、具体的に特定することができない」などとして、原告の請求を棄却した。

 判決は、美穂さんの遺書は学校生活でのいじめをうかがわせるものであり「臭いに関する誹謗(ひ・ぼう)中傷が継続的に行われていた可能性を否定できない」と指摘。ただ、誰がいつごろ、どのようないじめをしたかが不明で、学校の予見可能性や結果回避可能性を裏付けるには至らないとした。

 学校が行った調査については▽形式的で誘導的な質問にとどまる傾向にあった▽遺書の内容や遺族提供の情報について吟味分析した跡がない▽情報を多角度から分析検討したか疑問――と、「調査が不十分」という原告の主張に理解を示したが、「それが直ちにいじめの事実の隠蔽(いん・ぺい)にあたるとはいえないし、殊更にいじめの事実を隠蔽(いん・ぺい)する目的があったとは認め難い」とした。

 判決後に会見した父登喜男さん(62)は「いろんな人が声をあげて社会を変えてきたが、まだ司法の壁は厚いと感じた」と話した。

 両親はこれまで、第三者機関による調査を再三訴え、昨年12月にも文部科学省に要請書を提出したが、実現していない。母真理子さん(53)は「調査を尽くさない時点で早々にいじめを否定する学校の姿勢が、裁判を通じて明らかになった」。

 代理人の原田敬三弁護士は「今回の事件は、当事者である学校や教育委員会が調査を行うことが不適切であることを示す典型だ」と断じた。控訴するかは、今後検討するという。

 判決を受けて吉村美栄子知事は「亡くなられた生徒さんのご冥福を改めてお祈り申し上げます。教育委員会には、子どもたちが安心して学べる学校づくりに、これまで以上にしっかりと取り組んでいただきたいと考えています」とのコメントを出した。(松本紗知)