東芝データ流出:「氷山の一角」…防衛策に限界
毎日新聞 2014年03月13日 21時10分(最終更新 03月14日 00時31分)
東芝の技術流出事件で、日本企業が海外企業から最先端技術を狙われている実態が改めて明らかになった。日本企業は情報漏れを防ぐ対策を急ぐが、悪意のある流出を完全に防ぐことは難しい。今回の東芝事件も「氷山の一角」との声が強い。
電機をはじめ日本の製造業は、高度な技術力を武器に激しい国際競争に打ち勝ってきた。しかし2000年代ごろから、中国や韓国企業が日本企業の技術力を求め、技術者を高額報酬で引き抜く動きを強めた。08年秋のリーマン・ショックを機に、日本の製造大手が人員削減を進めると、海外企業が雇用の「受け皿」となり、技術流出がじわじわ進んだと見られている。
今回の事件でデータ流出が明らかになった「NAND型フラッシュメモリー」は東芝自身が開発した製品で、現在は韓国サムスン電子と激しい開発競争を展開中だ。東芝は多くの製品を海外で生産するが、同製品の製造には高い技術が必要なため、全量を三重県四日市市で生産。厳重に管理をしていたというが流出は防げなかった。
多くの企業は、社員の退職時に、情報漏えいを禁じる契約を結んだり、機密情報には容易にアクセスできない仕組みを導入したりするなど、さまざまな対応で技術流出を防ごうとしている。NECは社員ごとに情報の閲覧や印刷などの権限を細かく設定し、操作を詳細に記録。機密性の高い情報を扱う部署は入退室のカードを複数設けたり、金属探知機でパソコンやUSBメモリーの持ち込みを調べたりしている。日立製作所は会社のパソコンにUSBメモリーを差し込んでも書き込めないようにしている。
ただ、悪意をもった内部の人間が情報を外部に持ち出そうとすれば「完全には防ぎきれない」(電機大手)という。退職時に契約を結んでも、契約を破った場合の賠償リスクが海外企業からの報酬と比較して小さければ効果は薄い。新日鉄住金の法務担当役員は「盗用すれば経済的、社会的リスクが大きいという意識を徹底させることが必要だ」と話す。