アンネの日記:30代男が破損関与供述 建造物侵入で逮捕
毎日新聞 2014年03月13日 11時06分(最終更新 03月13日 12時48分)
東京都内の公立図書館などで「アンネの日記」や関連書籍が相次いで破られた事件に絡み、被害に遭った豊島区の大型書店に不法に侵入したとして、警視庁捜査1課が30代の無職の男を建造物侵入容疑で逮捕していたことが捜査関係者への取材で分かった。男は図書館でアンネ関連の書籍を破ったことについてもほのめかす供述をしているという。ただ、供述にはあいまいな点もあることから男の関与について刑事責任能力も含め慎重に調べている。
捜査関係者によると、男は2月19日と22日、豊島区南池袋2の「ジュンク堂書店池袋本店」にビラを張る目的で立ち入った容疑で、今月7日逮捕された。同課の調べに容疑を認めているという。ビラには「アシスタントとゴーストライターは違います」などと意味不明の文言が手書きされ、思想的な背景はうかがえないという。
同書店では2月21日、3階の売り場で「アンネの日記」2冊が破られているのを店員が発見したが、男は同日にも書店を訪れていたことが確認された。この店では1月にも関連本数冊が破られていた。
都内では昨年2月以降、杉並区▽中野区▽武蔵野市−−など計5区3市の公立図書館38カ所で計311冊の被害が確認された。うち最多の杉並区では11の図書館で121冊が破られた。大半の図書館は今年1月下旬〜2月中旬に被害が発覚。手でちぎったように扇形に破られる場合が多いが、カッターナイフのような刃物で切り取られたものもあった。
本の種類は、アンネ関連以外でもホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)、第二次世界大戦中に多くのユダヤ人を救った日本人外交官の杉原千畝に関する書籍など数十種類に上っている。
警視庁は2月24日に同種事件としては異例の捜査本部を設置。手口が似ており、被害地域も23区北西部と隣接市に集中していることから同一犯による器物損壊事件の可能性が高いとみて、各図書館のホームページへのアクセス記録や防犯カメラ画像の解析、本の指紋の分析などを進めていた。
また、事件を巡っては、米国のユダヤ系人権団体が日本側に加害者の特定を求める声明を発表するなど国際的な反響が広がっていた。在日イスラエル大使館が被害自治体に関連本300冊の提供を申し出たほか、個人から各図書館への寄贈も相次いでいる。【松本惇、山崎征克、神保圭作】