日米韓:首脳会談見通せず 日韓外務次官、主張に隔たり
毎日新聞 2014年03月12日 21時36分(最終更新 03月12日 23時28分)
【吉永康朗、ソウル大貫智子】外務省の斎木昭隆事務次官は12日、韓国を訪れ、韓国外務省の趙太庸(チョ・テヨン)第1次官と約3時間会談した。斎木氏は、日韓関係の改善を求める米国の意向を踏まえ、24、25日にオランダ・ハーグで開かれる核安全保障サミットでの日米韓3カ国首脳会談を打診した。ただ、韓国側は従軍慰安婦問題などで対日批判を続けており、実現できるかは不透明だ。
日韓外交筋によると、斎木氏は北朝鮮情勢に関し「日米韓3カ国の協力が重要だ」と指摘、趙氏も同意した。斎木氏は安全保障面での協力を深めるためにも、安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領、オバマ米大統領の会談を打診した。斎木氏はまた、「日韓両国は基本的な価値を共有している」と対話の必要性を強調。趙氏は「日韓関係の発展には日本が正しい歴史認識を持つことが必要だ」と原則的な立場を繰り返した。
韓国側が重視する慰安婦問題では、斎木氏は旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」を継承する立場を説明したが、韓国側はさらに「誠意ある対応」を求め平行線だった。斎木氏は滞在予定を切り上げて12日夜に帰国し、羽田空港で記者団に「このままではいけないという認識は共通している。個別の内容は答えられない」と語った。
日本政府は、2月13日の米韓外相会談でケリー国務長官が日韓関係の改善を求めたのを足がかりに、対話の糸口を探ってきた。日韓首脳会談が困難な中、「米国の意向」(外務省関係者)の3カ国首脳会談にかじを切った。「日韓なら歴史認識の話になるが、米国が入れば違う話題になる」(政府関係者)との狙いもある。
菅義偉官房長官は10日の記者会見で、河野談話作成の検証作業について「談話を見直すことはない」と明言した。発言直後に、米国務省が評価する姿勢を示すなど、日米からは反発を強める韓国に沈静化を促す動きが出ている。
ただ、韓国は12日に日本メディアが3カ国首脳会談の構想を報道したことに反発。日本に押された形で会談に応じれば世論の批判が噴出しかねず、韓国外務省幹部は「どのような形式であろうと、日本の歴史認識の変化が前提だ」と強調する。与党・セヌリ党議員も「米国の提案ならまだ良いが、日本の提案なら韓国は乗れない」と述べた。