高レベル放射性廃棄物:地層処分、地下水との闘い
毎日新聞 2014年03月13日 10時25分(最終更新 03月13日 13時22分)
原発が2020年ごろまで稼働する場合、その数は4万本に上る。高線量、高熱の固化体を30〜50年間かけて冷ました後、地層処分する。厚さ19センチの炭素鋼容器に入れ、さらに厚さ70センチの粘土の緩衝材で覆って埋める。放射性物質の溶け出しを防ぐ多重のバリアだ。
◇新たな課題も浮上
だが、同研究所で実物を使ってバリアの有効性を確認する実験はしない。「最終処分場にはしない」という地元との約束から、放射性物質の持ち込みは厳禁。フランスで地下研究所のある土地が処分場の候補地になったことも、地元の疑念をかき立てているだけに、水や岩盤の研究に絞っているのが実情だという。
地層処分して穴を埋め戻せば地層は再び安定状態に戻り、水も出なくなるとされる。それを確認する埋め戻し実験が2年後に始まるが、今年2月、エネルギー基本計画の政府原案に「回収可能性」が新たに盛り込まれた。技術の進歩で処分方法を見直した場合や不測のトラブルに備えて、いつでも固化体を取り出せるよう坑道を埋めずに残すことが求められたのだ。
想定される最終処分場の面積は皇居の4〜7倍。研究所よりはるかに広い。膨大な量の地下水が、坑道を埋め戻さないことでより長い期間出続ける。周辺の地下水が坑道に集まる可能性に加え、それが安全性にどんな影響を及ぼすかも未知数だ。
さまざまな課題はあるが、それでも「人間の世界の方がはるかに不確実。廃棄物を地上で、人の手で管理し続けるより、地下に保管する方が安全だ」と、経済産業省の地層処分技術に関する作業部会の杤山修委員長は強調する。【山田大輔】