By Alexander Martin
- Agence France-Presse/Getty Images
- 小保方晴子博士(1月28日、神戸)
理化学研究所は今週、同研究所の日本人研究者が中心になって新万能細胞「STAP(スタップ)細胞」を作製したとする画期的な研究論文の撤回を検討していると発表した。英科学誌ネイチャーに1月末に掲載されたこの研究論文は、幹細胞を作製する、より安全で簡単な技術を開発したとしていた。
なぜ論文の撤回を検討するのか。以下はこの研究と、主執筆者である小保方晴子博士(理研の研究ユニットリーダー)をめぐって浮上した5つの疑惑だ。理研は、これらの疑問点を調査中で、14日に暫定調査結果を発表すると述べている。小保方博士にも電子メールでコメントを求めたが、回答はなかった。
▽画像の不自然さ
1) ネイチャーに掲載された2つの研究論文のうち1つの論文の中で、別個の実験から作製されたはずの2つの胎盤の画像が同一に見える。この疑惑は、Pubpeerなど公開論文に関する投稿サイト上で指摘されたもので、理研が2月13日に調査を開始するきっかけの1つとなった。
2) ネイチャー論文に使用された画像は、小保方博士による2011年の博士論文で使われていた画像と酷似している。論文の共同執筆者の一人、山梨大学の若山照彦教授によれば、画像は異なる時期に異なる実験で撮影されたはず。若山教授は、この事実に気付いたのをきっかけに、論文の取り下げを小保方博士などに今週勧告したと述べた。NHKは、これら2つの画像を比較した分析を放映した。
論文の共同執筆者の一人であるハーバード大学医学大学院のチャールズ・バカンティ教授は、論文には若干のミスがあったが、STAP細胞作製の結論に影響するものではないと述べている。
▽資料のコピー疑惑
3) ネイチャー論文で、研究者たちが顕微鏡でSTAP細胞の染色体に異常がないかを観察する方法が描写されているが、それが、ドイツの大学の研究者たちが2005年に発表したマウスの胚性幹細胞に関する論文(マウス胚性幹細胞のマルチカラー核型分析)の一部の文章とほとんど同一だった。
4) 幹細胞研究をめぐる疑惑を追跡している日本人ブロガーは、小保方氏が早稲田大学に提出した2011年の博士論文とみられるものを掲載した。この論文の相当な部分が、米国立保健研究所(NIH)の幹細胞に関するウェブサイトの文章と同一だったという。早稲田大学の広報担当者は、このブログに掲載された論文は、小保方氏のものに間違いないと思うと述べ、大学が疑惑を調査していると語った。
▽ネイチャー論文内容と、執筆者のその後の説明の食い違い
5) 理研は5日、小保方博士ら理研の研究者たちがSTAP細胞作製のために使ったプロトコル(方法)を公開した。しかしクネプラー・ラブ・ステムセル・ブログ(Knoepfler Lab Stem Cell Blog カリフォルニア大学デービス校の幹細胞研究者ポール・クネプラー博士が運営)などは、手順に示された新たな叙述と、当初の論文の間に食い違いがあるのを発見した。クネプラー博士によれば、とりわけ新たな叙述では、幹細胞は、当初の論文のように白血球細胞由来ではなかったことが示されているという。
原文(英語):Five Allegations Against Riken Stem-Cell Researcher in Japan
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/03/12/five-allegations-against-riken-stem-cell-researcher-in-japan/