カーシェアリング事業は
世界でも日本が一番成功しやすい
パーク24株式会社 西川光一氏インタビュー(前編)
インターネットの発達やライフスタイルの変化、あるいは経済的理由を背景に、モノを個人で所有する時代から、コミュニティで共有する時代へと変化してきている。特に「若者の車離れ」が指摘される自動車関連業界においては、カーシェアリング事業が注目を浴びている。業界トップの〈タイムズカープラス〉を運営するタイムズ24株式会社。同社社長であり、同社を傘下にもつパーク24株式会社社長の西川光一氏に、カーシェアリング事業について話を伺った。全2回。
カーシェアリングは90年代から温めていた事業だった
――カーシェアリング事業を始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
1995年頃の当社は、駐車場が全国に2000カ所といった規模でしたが、目標は全国4000カ所を掲げていました。そこまで到達すれば、その規模を武器にして新たなビジネスができるのではないかと考えていました。
実はその頃、第1次電気自動車ブームがあったのです。当時は充電に8時間かかり、走行可能距離も40㎞程度という時代でしたので、あまり普及はしないだろうと思っていたものの、電気自動車自体への興味はありました。そこで、もし4000カ所の駐車場ができれば、東京だけでも1000カ所以上になり、山手線内だけでも200カ所くらいはできる。山手線内であれば走行距離が短くても十分だろうから、タイムズ駐車場に電気自動車を配置すれば新しいビジネスができるのではないか、とその当時から話をしていました。
その後上場を果たしてからは、収益を上げるために駐車場ビジネスに注力してきましたが、その事業アイデアはずっと頭にありました。それから徐々に、カーシェアリングという単語をいろんな媒体で見かけるようになり、2009年にマツダレンタカー(現タイムズモビリティネットワークス株式会社)をグループ化したことをきっかけに、この事業を始めることになりました。
――マツダレンタカーはカーシェアリング事業を見据えてグループ化したのでしょうか。
そうです。当社は自前主義ですので、メンテナンス会社もコールセンターも駐車場システムもすべて自前です。しかしながらカーシェアリング事業での車の管理ノウハウを蓄積するには1~2年では無理だろうと思っていました。すでに先行している会社もありましたので、それに対抗するために、マツダレンタカーのノウハウを得ることにしたのです。そのおかげで、5年間で車両保有台数7000台を超えることができました。おそらく自前でやっていたら、ようやく1000台といった程度だったと思います。
また、現在はレンタカーとカーシェアリングを「タイムズカー」というブランドで展開しているのですが、利用時間や行き先によって使い分けていただくことができるようになり、サービスラインアップが充実し、ユーザーメリットも高くなりました。
意思決定としてはよかったと思っています。
――海外のカーシェアリング事業は参考にされたのでしょうか。
ほとんどしませんでした。元々はスイスから始まったビジネスですが、ヨーロッパのカーシェアリング事業は公共が場所を提供し、民間が運営するといった、日本でいう第3セクター方式になっています。
アメリカでは2000年にボストンで創業した、ジップカーという会社があります。ジップカーは世界最大のカーシェアリングの会社で1万台以上を保有しているのですが、たまたま出張でボストンに行った際に、そこの経営陣と話をする機会を得ました。その時、カーシェアリングの決め手は “Convinience”(利便性)と “Choice”(選択肢)と言われました。この “Choice” だけが唯一、私の中になかったイメージでした。すなわち車種のバリエーションが大事だ、ということです。参考にしたのはそのくらいでしたね。
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