The Economist

救済から1年経ったキプロス:傷ついた島

2014.03.13(木)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年3月8日号)

ベイルアウト(救済)はうまくいっているが、ベイルインはうまく機能していない。

ユーロを導入してからようやく5年が経ったところで、キプロスは歴史書に歓迎されざる日を刻んだ。2013年3月、キプロスはユーロ圏で救済を受ける5番目の国になった。

 欧州の債権者がキプロス救済のために設定した条件には、緊縮財政や改革といったお決まりの要求だけではなく、銀行の「ベイルイン」――債券保有者や預金保険対象外の大口預金者に銀行の損失を負担させたり、新たな資本を出させたりする措置――という見慣れない要求も含まれていた。

 この小さな島の経験には大きな意味がある。債権者のベイルインは、欧州で将来の銀行危機が対処される方法になるからだ。

経済の落ち込みは予想ほどではなかったが・・・

 2週間近く銀行が閉鎖され、資本規制が課せられた昨年春のトラウマは、キプロスに壊滅的な影響を与えると思われていた。実際、経済は苦しんでいる(図参照)。

 国内総生産(GDP)は2012年に2.5%落ち込んだ後、昨年は5.4%減少した。痛みは受けたが、それでも実際のGDPの落ち込みは、欧州当局と国際通貨基金(IMF)を代表する「トロイカ」が昨年4月に予想した8.7%の減少よりは小さかった。

 キプロス経済には、多くの人が予想していたより回復力があることが分かった。救済を受けた時、キプロス経済は一般に、過度に膨張した銀行だけを頼りに急成長した経済だと見なされていた。2009年のピークには、銀行はアイスランド並みの規模に達しており、銀行資産が国のGDPの9倍に膨れ上がっていた。

 だが、キプロスはその他にも、特に観光や企業向けサービスといった強みがあり、どちらもまずまずよく持ち堪えている。

 2013年は、他の欧州諸国からの観光客を中心に訪問観光客の数が減ったが、ロシア人の流入のおかげで減少率は2.4%にとどまった。そして、ロシア人は他の観光客より多く支出するため、観光収入は8%増えた。リマソールのフォーシーズンズホテルでは、ロシア人が宿泊客の半分近くを占めている。地元のタクシー会社は、予約を管理するためにロシア語を話すスタッフを雇った。

 1つの不安は、経済のもう1つの柱である企業向けサービス(特に法律、金融関係のサービス)が、資本規制によって金融部門とともに苦しむのではないかということだった。企業向けサービスは経済的打撃を受けているが、経済全体より落ち込みは小さい。

 実際、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)…
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