姿 美保子です
新調されたバウホールの緞帳おひろめ公演でもある宙組公演感激日記を
ワリとマジに語らせていただきます。
1978年に開場した宝塚バウホールは
次代を担う若手生徒や演出家の登竜門としての役割も担っているホールです。
改めてそのホールの性格を認識した上で
「the WILD Meets the WILD」を観てみますと
来年、宝塚歌劇百周年の年に大劇場デビューを果たすことが決まった演出家・生田大和さんが
“この劇場でやりたいことを全てやってみた!”
のがこの作品なのではと感じました。
めまぐるしいまでの舞台転換。
砂交じりのかわいた風が吹いてきそうな舞台
リアルなセット。
効果的に映し出されるだけでなく時には舞台上を走り抜ける映像。
こだわりの照明。
魅力的な色彩。
絵になる構図
おまけに今回は軽妙なドタバタ感まで。
しかも複雑な人物設定。
驚きの顔を幾つも持っている神父グレゴリー(夏美よう)、
いったいこの人は何なのだと言いたくなるようなベンジャミンの父親(凛城きら)。
そうしたよくわからない大人の元で育った結果
息子のベンジャミン(七海ひろき)はならず者の賞金首になり
街で医学を学んでいたはずのベンジャミンの従弟・ジェレミー(蓮水ゆうや)は
「義賊のキラー・ビー」と呼ばれる覆面カウボーイになったりしたのでしょうか。
幼いころ兄弟のように仲良く育ったこの二人、10年ぶりに再開した時には
方やお尋ね者、方や成り行きの保安官という複雑な立場。
で、お互いに銃を突きつけ合う事態になってしまうのです。
しかもジェレミーに至っては色んな顔の過去を引きずって苦しんでいるし・・・
んー、複雑です。
そこに加わるヒロインはと言いますと
キュートでパワフルな賞金稼ぎの女・エマ(花乃まりあ)。
大劇場「銀河英雄伝説」「モンテ・クリスト伯」と続けて新人公演でヒロインを演じた注目の96期娘役。
やけに威勢のい女性ですが、ハツラツとしたかわいさが憎めないヒロイン。
もう一人はジェレミーの恋人・マティルダ(愛花ちさき)
七海さんと愛花さんは同期生での恋人同士。
愛花さんはやんちゃなベンジャミンを見守っているようで、大人なしっとりしたいい女っぷりです。
それからベンジャミンの3人の仲間たち。
髭面のリーダー・アンドリュー(桜木みなと)、フィリップ(春瀬央季)、レナード(星吹彩翔)、
この3人のガンマンぶりはなかなか見事でそれぞれいい味を出しています。
包帯を巻いた腕を吊っている男はダミアン(風羽玲亜)
特に何をするでもないのですが不思議な存在感があります。
そして一番目立っているのは何といっても彼!
キラッキラの新聞記者・ネッド(澄輝さやと)
その涼やかな笑顔は後を引きますよ。
相反して「悪!!」と顔に書いてあるようなオールバックのイケメンは
グレゴリーの息子で市長のギルバート(蒼羽りく)。
でも彼もなかなか複雑な生い立ちなんでしょうね。
結局のところ
親たちがややこしいことしちゃうから
子どもたちの人生まで巻き込まれてしまっているようで
何かといえば銃をふりまわす若者たちが愛おしくさえあります。
それぞれに複雑な背景を持っている登場人物たちが
“ワリと”というより“大真面目”に大汗をかいてウエスタンを演じている
「the WILD Meets the WILD」
このミュージカル、うまくはまるとこの上なく爽快な西部劇になると思うのですが
なかなか手ごわいこのテンポ感!
しかもフィナーレでは
さっきまで泥臭い西部の男や女達を演じていた出演者が
キザリ倒してしゃれたダンスナンバーを繰り広げているのですから
演じる側にとってはかなりハードルが高い公演と言えるでしょう。
さて公演ごとにテーマカラーを打ち出す生田大和さん、
今回のテーマカラーは?
との問いに
『青と赤!まずこの色が頭に浮かびました」
と答えて下さいました。
確かに、木と革と砂、茶色に覆われた西部劇の世界に、
窓から漏れる光の青さや町の劇場にかかる幕の赤などが印象的でした。
ちなみに
2014年2月の大劇場デビュー作
花組「ラスト・タイクーン ーハリウッドの帝王、不滅の愛」のテーマカラーは
『白』!
そう、ハリウッドのスクリーンの色だそうです。
「the WILD Meets the WILD」
感激日記は
8月2日(金)午後2時〜放送
8月3日(土)午後3時〜再放送