「斜陽」と言われて久しい出版業界に身を置く私たち同業者の集まりで、もはや挨拶代わりとして、かならず話題にあがるのが不景気ネタである。
「またギャラを叩かれた」だの「校了で終電を逃してもタクシー代が出ない」だの「カメラマンを付けてくれないからライターみずからデジカメで撮影して取材相手に嫌な顔をされた」だの「ロケ弁が叙々苑のカルビ弁当からコンビニ弁当になった」だの……、聞けば聞くほど気分がダークになるネタばかりだ。
で、先日もまた、私と紙媒体メインのライター3人とウェブ制作の編集者1人というメンバーで飲みに行って、例に漏れずライター衆が持ち寄った不景気ネタが炸裂し、それに対して一番年長である私が「僕はもう、自分が死ぬまで出版界が持ちこたえてくれたらラッキーくらいの逃げ切り体制に入っているから」と枯れたアダルトを気取った発言で煙に巻く……といった流れで、場はサッドな空気でじわっと盛り上がっていたのだけれど、そこで唐突にウェブ編集者の語った持論が、なかなか興味深かったので、少々長くなるが紹介しよう。
「皆さん、そんなにヒマなんですか(ウェブ関係者ならではの無神経な一言w)? じゃあ今度、ウチの仕事やってくださいよー。今、ウチの業界って、マジでちゃんと文章の書けるプロのライターさんを探してるんですよ。ボクも最初はウェブサイトってビジュアルが勝負だと思ってたんですよ。可読性が高くて目立つデザインだとか……。でもね、そういうのって、ネットの世界じゃ限界があるんですよ。写真だって、いくら大御所に発注してもパソコンやスマホの画面だと紙みたいにキレイに載せられないじゃないじゃないですか。極論、写真なんてイマドキはプロが撮ってもスマホで素人が撮っても、ほとんど見分けがつかないし……。つまりですね、最終的にウェブサイトのクオリティを決めるのは“テキスト”なんですよ。ネット社会がメインを占めるこれからは“テキストのプロ”の時代なんですよ!」
2014年03月12日