ロシアのクリミア侵攻は三つの意味と教訓がある。まず第一に、国連の無力化だ。
国連憲章は武力による威嚇、または行使による主権と領土の侵害を禁じている。今回ほど露骨な主権侵害は旧ソ連によるアフガニスタン侵攻以来、ほとんど例がない。それなのに、なぜ国連は積極的に動かないのか。
それは当のロシアが安全保障理事会の常任理事国であるからだ。ロシアは国連による介入には反対するに決まっているし、拒否権もある。国連は安保理決議がなければ武力介入できない。国連にできるのは、せいぜい強制力が伴わない総会での非難決議くらいだ。つまり国連に実質的な解決能力はない。
中国は南シナ海や尖閣諸島をめぐって「力による現状変更」をもくろんできた。だから、今回のクリミア侵攻は自分たちにとって、絶好のテストケースと思っているだろう。ロシアの挑戦が既成事実化されてしまうなら「自分たちも」と考えてもおかしくない。
当面は日米同盟の強化、やや長い目で見れば、アジア太平洋地域における集団防衛体制の構築ではないか。集団的自衛権を行使できなければ、日本はアジアの集団防衛体制に参加できないだろう。社説の論調とは違って、私が集団的自衛権を容認すべきだと考える理由の一つである。 (長谷川幸洋)
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