先週、秋葉原はコトブキヤの5階にあります特設会場にて「中国嫁日記」作者、井上純一のトークショーに行ってきました。

 前回は同じ会場で「嫌韓流」の作者を向かえ「嫌韓VS中国嫁」というキャッチで開催されました。
http://blog.livedoor.jp/afugankoukuu/archives/1630823.html
 会場では山野車輪を徹底的に痛めつける井上純一、というまるでヒクソン・グレイシーの試合のような状況だったのですが、



今回迎える相手はカラスヤサトシ、もてない男のエッセイ漫画、というスタンスで細々食いつないできた漫画家です。
カラスヤサトシ (アフタヌーンKC (425))カラスヤサトシ (アフタヌーンKC (425))
著者:カラスヤ サトシ
販売元:講談社
(2006-08-23)
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 今回のキャッチは「オタ婚対決」。かたや「もてない男」を売りに雑誌連載を続けながら突然出来ちゃった婚をした男、
結婚しないと思ってた オタクがDQNな恋をした! (チャンピオンREDコミックス)結婚しないと思ってた オタクがDQNな恋をした! (チャンピオンREDコミックス)
著者:カラスヤサトシ
販売元:秋田書店
(2012-01-20)
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かたや40過ぎで中国人の若い嫁をゲットしたオタクの裏切り者です。
中国嫁日記 一中国嫁日記 一
著者:井上 純一
販売元:エンターブレイン
(2011-08-12)
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なんと言いますか、
デビルマン(TV版)VSライダーマンのような裏切り度対決を期待せずにはいられません。
 井上もブログで語っています。

ワタシは、
『自分を棚において』言いたい!!

そんなことが
許されていいのかと!!!
私の愛した、あの孤独でモテないカラスヤさんを帰して!! と!

責めたい!
『自分を棚において』も責めたい!!
http://blog.livedoor.jp/keumaya-china/archives/2012-03.ht...

 午後7時のスタートを前に満員の開場はこれから始まるであろう熱い戦いを象徴するかのように熱気に包まれておりました。と、言うかパイプ椅子ぎっしり詰め込んで身動きすらままならん、というのは防災的にいかがなモノかと思わずにはいられません。

 さて、7時5分にトークショー開始。戦いの火蓋が切って落とされました。

 まず顔をあわせた両者、最初の話題は井上が持ち出した雑誌「BREAK Max」5月号に掲載された漫画家、福満しげゆきのインタビューについてでした。
 http://natalie.mu/comic/news/66412

 福満しげゆきという人はモーニングやアクションと言った対象年齢高めの漫画誌でエッセイ漫画を連載している、

僕の小規模な生活(3) (モーニングKCDX)僕の小規模な生活(3) (モーニングKCDX)
著者:福満 しげゆき
販売元:講談社
(2009-11-20)
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 カラスヤサトシみたいな漫画家です。

 キャリアを比較してみると案外この紹介は的を射ているかも知れません。
しかもカラスヤサトシを紹介する際にも使えるリバーシブル仕様。 

 その福満先生がこのインタビューでカラスヤをDisっていることについて井上が聞くと
「なんか生活圏がダブってるみたいで・・」と困惑気味です。まぁわからないでもありませんね。

 引き続き当たり障りのない会話が続きます。テーマはこちらです。

カラスヤは何故編集者と仲違いするのか

 当のトラブルを起こした「結婚しないと思ってた」の編集者K城さんをゲストに盛り上がります。編集者とのトラブルの話から話がそれて、井上の持論「編集者は必ずしも必要ない」へと話が続いていきます。

「俺って実際出版社の編集から相手されなくたって、アフィリエイトだけで食っていけますから。」

 見事な天狗
でございますね。こんな発言のすぐ後で
「『実るほど、頭をたれる稲穂かな』といいましてね。こういう態度が大事なんですよ」とよくわからない説教をしてしまいます。これはセルフ説教とでも言えばいいんでしょうか。なんだか天龍の言葉
「お客さんがいなかったらドロップキックだって痛くて出来ないよ」
を思い出してしまいました。

 ここでインターバルです。次ラウンドからテーマは「カラスヤはオタクか?」へとシフトしていきます。

 オタクとは何か?

 これは中々難しいテーマでございます。下手をすれば100人100様のオタク観があるかもしれません。戦いはオタクとは何ぞや、というステージに移りました。

 カラスヤの新刊「結婚しないと思ってた」はサブタイトルが「オタクがDQNな恋をした」となっています。これはこれで火種になった(カラスヤが奥さんから「私はDQNじゃない」と責められたそうです)のですが、カラスヤはオタクなのか?という疑義が発生したのです。

 カラスヤ本人は「自分はガシャポンを集めてるし、必殺は全てコンプリートしてるからオタクなんじゃないですか?」というスタンスです。これに井上が反発します。

 オタクとは趣味嗜好単体で成立するものではなく、それによって形成されるコミュニティである。

 これが井上のオタク論です。オタクはコミュ二ケーション不全なので人とのかかわりを自分の知識を用い無いと築くことが出来ません。この場合の知識とは当然オタ知識なのです。
 オタクと会話した人には分かるかと思いますが、オタクは時々一般人には理解不能な単語を会話に混ぜてきます。これは相手が「自分の仲間かどうか」を調べるための
アクティブソナーのようなもので、これに反応するかどうかで仲間判定を行うわけです。
 オタクとは常に周囲にソナーを発し続けて自分の仲間とそうでないものとを区別して無ければ生きていけない、難儀な生き物なのですね。

 ところがカラスヤサトシは見た目もオタっぽいし、ガシャポンも集めているかも知れないが、井上の発するソナーに全く反応しません。なんだか見ていて旧UWFが新日本プロレスのリングに上がっていた頃を思い出してしまいました。あの頃も空気を読まないUWF勢に親日の選手はイライラしていたものです。

 痺れを切らした井上はとうとう凶器攻撃に出てしまいます。壇上にあったカラスヤの本を床に叩きつけたのです。すわ場外乱闘か、と会場内が盛り上がります。
 しかしカラスヤは動じません。「何をするんですか」とあまりに当たり前の反応をしてしまいます。

 ことここにいたって井上は悟ります。カラスヤサトシはオタクではない、と。この対談はプロレスではなく異種格闘技戦だったのですね。かみ合わないのも無理ありません。

 以降は山野車輪のときと同様、本人を目の前にして、何故いまいちメジャーになれないのか、どうやったら売れるか、を語ります。
巨大なお世話ですね

 井上のカラスヤ論、というよりエッセイ漫画論は中々面白かったです。そして散々駄目だしをして結論が、

 カラスヤサトシは売れちゃ駄目

 というかなり酷いものとなってしまいました。これには流石にカラスヤ本人も苦笑いです。

 とりあえず結論らしきものが出たのでイベントは終了しました。

 いやいや世の中には面白い人がいるものですね。