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  1. スイスに学ぶ核兵器・原子爆弾が使われたときの対処法

スイスに学ぶ核兵器・原子爆弾が使われたときの対処法

はじめに

スイスといえば、永世中立国家であることで有名です。自然豊かでなんとなく平和な印象のあるスイス。しかしその裏では、永世中立国として自国民の自由と独立を守るために、他国からの侵略を防ぐための徹底的な対策や設備が整えられています。

スイスの有事のときの対応は、民間レベルにまで浸透しています。その一環として、冷戦時代、緊急時や有事に備えた「心構え」から「対処法」までが事細かに記されている『民間防衛』と呼ばれる本が、スイス政府から国民全員に配られました。

今回はその中から、わたしたちが核兵器や原子爆弾による脅威にさらされたときに、どのように行動すべきかをご紹介します。

核兵器(原子爆弾)の威力

原子爆弾は何が恐ろしいのか?

『民間防衛』によると、原子爆弾の影響で恐ろしいのは以下の3つであるとされています。

  • 1:熱
  • 2:圧力
  • 3:放射能

「原子爆弾」というと放射能の被害に目が行きがちですが、爆発直後は特にによる被害が恐ろしいようです。

原爆が爆発すると、数百万度という太陽の表面温度の何倍にも達する白熱したガス球ができます。これから放射される熱線は、光と同じ速度で数秒間照射され、火傷や失明を引き起こすおそれがあります。

また火災による被害も尋常ではありません。原爆の熱は建物・森林などすべての可燃性のものを発火させます。さらに、この熱風によって電線が切れたり、ガス管が破壊されるなどすると二次的な火災を引き起こします。

1:熱(熱線)に対する防護

「あなたの運命は1秒の何分の1かできまる」

尋常でない熱線を放出する原爆ですが、『民間防衛』には熱線から身を守るための方法として以下のように書かれています。

 爆発のときに、避難所や溝の中など、熱線の陰になるような所にいれば、あまり恐れる必要はない。

 しかし、爆発のときに戸外にいたら、つまり、突然あたり一面を輝やかす光球に襲われたら、あなたの運命は1秒の何分の1かできまることになろう。急いで遮蔽物の陰に飛び込めなかったら、その場で地上に伏せ、顔を下にし、両手を身体の下に隠しなさい。透明なものでないならば、どんなものでも、あなたの衣服でも、ある程度は熱線を防ぐことができる。このことを忘れないように。(『民間防衛』スイス政府編・原書房編集部訳・p77)
熱線は一瞬で被害を及ぼします。すぐさま溝の中など陰になるようなところに逃げ込むのが大切ですが、それが無理な場合は顔と両手を守りながらその場に伏せることが大切です。

2:圧力(圧力波)に対する防護

核爆発には圧力波が伴う

核爆発が起こると、熱線や放射能の他に「圧力波」が起こります。

爆発の中心部の圧力は数十万気圧にもなっており、激しい疾風のように周囲に広がります。風の行く手にあるものは、強い圧力波によって一気に押しつぶされ、一部は台風のような突風で吹き飛ばされてしまいます。

圧力波は直接負傷者を出すことは少ないのですが、倒れた家屋や砕けたガラス窓によってケガをする間接的な被害を及ぼします。圧力波によって吹き飛ばされた破片は、空中を飛び散り、まるで弾丸のようになります。

「逆風」も危ない

爆発により強烈な圧力波が吹き荒れた後には「逆風」が吹き込みます。

 圧力波が襲った直後には、低圧状態が生じて、周囲の空気が吹き込み、今までとは逆の方向に、前よりは幾分弱いが烈風が長い時間吹き続ける。(同上・p78)

圧力波による気圧の変化で、今度は反対の方向から風が吹くのです。反対方向からも危険な破片が飛んでくる恐れがあるので、圧力波が去ったからといって安心するのは早計です。

この事実はあまり知られていないと思うので、頭に入れておきたいところです。

戸外で圧力波に襲われそうになったら

圧力波が起こったときは避難所に避難していることが望ましいですが、万が一屋外で襲われそうになったときは、以下のことを思い出してください。

もし戸外で不意に圧力波に襲われそうになったら、すぐに地に伏せて、圧力波が過ぎ去るまで、つまり破片が飛びかわなくなるまで待ちなさい。地面の高低起伏、つまり、くぼんだ所でも圧力波は防げる。(同上・p79)
熱線の被害にあったときと同じように、その場に伏せることが大切です。

3:放射能に対する防護

原子爆弾による放射能の被害

原子爆弾によるもっとも恐ろしい被害として誰もが知っている「放射能」。福島第一原子力発電所の事故では、東日本を中心に甚大な被害を与え、今でもなお問題が解決されていません。

原子爆弾の場合、爆発の際に発生する放射能を「一次放射線」、爆発の後に空気中に舞った核分裂物質が発生させる放射能を「二次放射線」と呼びます。

放射線で人間が影響を受けるレベルとは?

『民間防衛』には、放射能の被害について細かく書かれています。

人体の受けた放射線の量はレントゲン単位(レム)で示されるが、5レム以下なら危険はない。1回の放射線量が100レム以下なら人体への害はまだ少ないと思われるが、400レムになると放射線を浴びた者の半分が死亡する。600レムを超えれば全員が死ぬ。放射能は、放射線病という人体への有害な作用のほかに、高い放射線量を受ければ生殖機能に重大な障害を起こす。(同上・p82)

「100レム」は「1シーベルト」です。つまり、4シーベルトの放射能を浴びると半分の人が死に至り、6シーベルトの放射能を受けると全員が死にます。

また、500キロトン原子爆弾が爆発すると、屋外にいた場合、一次放射線として以下の放射能を受ける説明されています。

  • 爆心地から2000m地点:600レム(6シーベルト)
  • 爆心地から2300m地点:200レム(2シーベルト)
  • 爆心地から2800m地点:25レム(0.25シーベルト)

これはあくまで500キロトン原子爆弾の例ですが、2000m地点から800メートル離れているだけで放射能の量が急速に下がることがわかります。

一次放射線に対する防護

原子爆弾から直接発生する一次放射線への防護するには、まず密度の高い物質で覆われたところに入ることが重要です。

例えば、1メートルのコンクリートで固めた覆いがあれば、一次放射線は200分の1に、1メートルの厚さの土なら150分の1になります。

もし戸外で核爆発の被害に遭ってしまったら、以下のことを実行してください。

もし戸外で核爆発にぶつかったら、すぐ地面にうつ伏せになること。爆発とともに生ずる放射線は、光と同じように直線的に広がるから、地面の小さなくぼ地にでも入っていれば、放射線の一部分を免れることができる。(同上・p83)
コンクリートでできた頑丈な建物や避難所など、身の回りの避難できそうな場所を普段からチェックしておきましょう。

永続的または二次放射線に対する防護

爆発後に影響を及ぼす二次放射線には特徴があります。まず、核爆発によってできる放射性物質(核分裂物質)は、地下や地表での爆発の場合、上空に舞い上がった土や破片に付着します。

また、破片の中でも大きいものや重いものは、爆発した付近の地表に落ちますが、小さいものや軽いものは上昇する原子雲に巻き込まれて、しばらくした後に広く地表に舞い降ります。

二次放射線はしばらくの間、日常生活に影響を与えます。

放射能による汚染が強い場合には、鉄道や郵便、その他いろいろな企業も、数日間活動を停止しなければならないので、食料その他の供給もストップする。家畜は死ぬか、あるいは死ななくても資料や飲み水を通じて放射性物質が体内に入るので、肉やミルクは食用に適さなくなることもある。(同上・p85)

原発事故で問題になったのは、核爆発の場合だとこの二次放射線であることがわかります。

もし付近で核爆発が起きたとき、その二次放射線から身を守るためには、

  • 放射性降下物を身体に受けたものと考えて、衣類をぬぎ捨てる
  • 身体の露出している部分を徹底的に洗う

などをする必要があります。

また、食品の安全性が確保されるまでの期間は備蓄した食糧だけで過ごす必要があります。

 われわれは、何日も、何週間も、放射能の汚染を受けない備蓄品だけで生活できるように準備しておく必要がある。(同上・p85)

 避難所には充分な水も用意しておくこと。飲料水(1人1日当たり2リットル)は、清潔な入れ物に保存して、ときどき新しく取りかえること。生牛乳の代用品として、濃縮ミルクや粉ミルクも準備しておくこと。(同上・p86)

もし原子爆弾が爆発したら・・・もしもの時の心構え

日本は原子爆弾が投下された唯一の国ですが、半世紀以上たった今では原爆が具体的にどのようなものなのかを知っている人は少ないでしょう。『民間防衛』には原子爆弾が投下されたときを想定した対策が以下のように記されています。

爆発に遭う前にしておくべきこと

・避難所は、いつでも使えるようにしておきなさい。何週間も避難所で過ごさなければならないから、食料や水は充分に貯えておきなさい。警報はできるだけ早目にだされるが、警報が出てから爆発が起こるまで、多くの場合1~2分しかないから、ふだん用意を怠っていると取り返しがつかない。(同上・p89)

・空襲警報が鳴ったら、いつ何どき核兵器が使用されるかしれないから、常にガスマスクを手元から離さないように。ガスマスクは、放射性のチリが肺の中に入るのを防いでくれる。戸外にいるときは、一番近い避難所がどこにあるか、身を隠すものがどこにあるかを、よく確かめておきなさい。(同上・p89)

・避難所から出るときは、衣服をキチンと着なさい。身体のあらゆる部分がむき出しにならないように、ズキンやネッカチーフ、手袋などで覆いなさい。(同上・p89)

爆発のとき

・避難所では、そこの責任者や監督者の指示に従いなさい。

・戸外で空襲警報を耳にしたら、すぐに身を隠せるものの中に入らなければならないが、その余裕は1~2分しかない。身を隠すのに一番よいのは、くぼ地、つまり砂利を掘った穴、河川の河床、排水溝などである。(同上・p90)

・身を隠せるものの中に入ったら、両目を閉じ、両腕で顔をおおい、両手は身体の下に隠すこと。余裕があったら、手袋やネッカチーフ、マントなどを身につけ、口は鼻を布で隠しなさい。

・もし、家の内外を問わず、警報が出ないうちに突然爆発の閃光に襲われたら、すぐそのまま床や地上に身を伏せて、目を閉じ、顔や両手を隠しなさい。

・閃光と圧力波が過ぎ去り、そのあたりを破片が飛びかわなくなったら、体の露出している部分は、全部、手袋やネッカチーフ、マントなどでおおいなさい。ひどいホコリがたっている場合には、防毒マスクや防塵マスクをつけなさい。(同上・p90)

爆発の後で

・避難所を離れるときは、その責任者や監督者の指示に従いなさい。
 
・負傷者が出たら、すぐ救助を開始し、それから火災との闘いを始めなさい。

・放射能から保護されていない食料品は、ラジオ放送を聞いて、危険性がないことがわからないうちは食べないこと。日用品は、すべて水と石鹸で洗うか、ぬれぞうきんで拭き清めること。

・砂ボコリはブラシをかけて、髪からきれいに落し、衣類も丁寧にたたいてホコリを落とすこと。(同上・p91)

おわりに

原発事故も原子爆弾も、どちらも放射線の被害が恐ろしいものですが、核爆弾の場合は、まず爆発による「一次放射線」「熱線」「圧力波」に気を付ける必要があります。

日本が今のまま平和な状態が続けば、ここで紹介した知識は全く必要のないものですが、この平和が続くとは限りません。今の日本になんとなく不穏な空気を感じている方は、ぜひ今からもしものことを考えておくことをおすすめします。

さらに詳しい情報を知りたい方は、原書房より出版されている『民間防衛』をチェックしてみましょう。

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参考資料:『民間防衛』スイス政府編・原書房編集部訳

(image by PresenPic)

本記事は、2014年03月12日公開時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

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