Windows版を見ながら


−:
オリジナルモードはPC-8801版をベースにしています。ちなみにアレンジ版の音楽はMSX版がベースなんです。
山下氏(以下、山下):全機種切り替えできたら究極でしたね。『ハイドライド』って、各機種毎に若干仕様が違うんですよね?
内藤氏(以下、内藤):いや、全然違います(笑)。
山下:そういえば、隠しキャラとかいましたよね。オクトパス倒すと人魚とか。
内藤:あれ、入っているの私知らなかったんですよ。FM-7担当のプログラマが勝手に入れてたんですよ。
山下:そうだったんですか。

各機種の違い


−:
今、製品に入れる『ハイドライドミュージアム』の制作をしてまして、各機種の特徴を書いているんですが、私やったことのない機種とかあるんですよ。資料見ながら書いているんですが、一番困っているのがPC-9801版で。あれって何が特徴なんですか?
内藤:あれは、PC-8801版を完全再現しているのが特徴なんです。何もかも一緒という(笑)。他の機種にはそれぞれ特徴があるんですが。

『ハイドライド』のプログラム


山下:
『ハイドライド』って、プレイ時間どの位かかるんでしたっけ?
内藤:最短で40分ですね。
山下:うわ〜、内藤さんクラスがやるとその位でいくんだ。その記録は聞いたことないなぁ。
内藤:私がやるとだいたい一時間位なんですが、確か記録が40分ですね。まずこの穴(ウィスプの迷宮)に入ってですね、真っ暗なんですけど、マップは覚えちゃってるんでプァーっと剣を取ってくるんですよ。で、いくつか、はしょっちゃうんですけど。
山下:なるほどねぇ〜。
−:ランプ取らないんですか。
内藤:いらないです。
山下:これ(Windows版)、タイマー表示付けて欲しいなぁ。
−:可能であれば、搭載したいんですが。(※結局、製品版には入りませんでした)
内藤:パソコンの時計機能は使わない方がいいですよ。遅いマシンの人が有利になっちゃうんで。
山下:さすが、元プログラマらしい意見。
−:開発指南を受けてしまいました(笑)。
内藤:まだ現役ですんで(笑)。『ハイドライド』って、敵のアルゴリズムが一匹一匹全部違うんですよ。当時全然(プログラム)テクニック知らなくって、サブルーチンの分離も知らなくて。
山下:ほぉほぉ。
内藤:割り込みも知らなくて。
山下:バラバラのアルゴリズムプログラムが入っている訳ですね。
内藤:ある意味貴重ですね。
−:チャレンジ!!AVG』に敵キャラのフローチャートが入っているじゃないですか。あれ、プログラムから解析されたんですか?
内藤:いや、あれはちゃんと最初に作っておいたヤツです。当時、私はフローチャートを作ってからプログラムしてました。優良プログラマだったんで(笑)。
山下:素晴らしいですね。
内藤:今はイイ加減ですけど(笑)。
−:今は作りながら考える、ですか。
内藤:悪一文字プログラマって呼ばれてます(笑)。

ウン周年といえば……


山下:
今年は『ハイドライド』が出て何年ですか? '84年だから……。
内藤:15年ですね。
−:最初、『ハイドライド』生誕15周年記念!とかいって売り出そうかとも考えてたんですが。
内藤:その何周年とかいうと、嫌な思い出が……。(広告のミュージックライブラリーを指して)この5周年記念の時に、色々と遅れたので……(笑)。『3Dゴルフシミュレーション』も遅れたし……。
山下:他に何が遅れたんですか?
内藤:ディ−ヴァの『カリ・ユガ(の光輝)』もそうですし……あと『レイドック』とか。
山下:あぁ、『レイドック』! 『レイドック』は延びましたねぇ〜。
内藤:あの辺りはスカスカ落ちましたからねぇ。5周年記念、“記念”って良くないなぁ、とか言って、10周年記念の時はささやかに記念のボールペン作っただけで済ましたり(笑)。
−:この間探し物をしていたら、社長室からそのボールペンが沢山出てきました。
内藤:余ってるんならクダサイ(笑)。

二人の出会い


山下:
内藤さんとはじめてお会いしたのって、考えてたんですけど……昔、秋葉原でT&Eさんがイベントやりましたよね。
内藤:はいはい。
山下:あれに呼んでいただいたのが最初だと思うんですけど。
内藤:ラジ館(ラジオ会館)ですよね。
山下:あれ何のイベントでしたっけ。
内藤:『ハイドライド』ですよね。何だったっけ。
−:ATTACK!』の第一回じゃないですか?
山下:あ、『ATTACK!』。
内藤:『ATTACK!』の第一回は確かラジ館だったんで。二回目が……体感『ハイドライド』(笑)。
山下:そんなのあったんですか。
内藤:スゴイですよアレは。山の中、駆けずり回りましたから。「お宝を取るんだ!」とかいって(笑)。
山下:一回目って何やりましたっけ?
内藤:ラジ館でウワァ〜、とかやって。
山下:ファンの集いみたいなヤツでしたよね。それに呼んでいただいて、はじめて内藤さんにお会いして。で、それ以降は……。
内藤:不思議な事にどこかでイベントする度にお会いして。
山下:そうそう。
内藤:あら、とかいって。
山下:特に僕、名古屋地区のショップのイベントによく呼んでいただいてたんで、内藤さんにお会いすることが多かったですね。
−:当時、名古屋といえばT&Eって感じでしたもんね。
内藤:でも、福岡でも仙台でも、なぜか北海道でもお会いしてましたよね(笑)。

プログラマという職業


−:
当時はPCゲームのライターといえば山下さん、って感じでしたよね。
内藤:No.1ライターでしたもんね。
山下:いえいえ、そんな。でも、あの頃書いた本を今読むと、恥ずかしいですよ、自分で。
内藤:いや、それは我々も進化してますから(笑)。私も当時のソースとか見ると恥ずかしいですよ。
山下:ソースはまだ一般人にわからないから、いいじゃないですか。本見ると「なんて文章書いてるんだ」とか思いますよ。レイアウトも無茶苦茶だし。
内藤:残っちゃいますからね。
山下:残っちゃいますから。そういえば、内藤さんにも特別な寄稿をしていただいたんですよ。
内藤:何でしたっけ?
山下:開発手記、『ハイドライド』の。
内藤:はいはいはい!『AVG&RPG』の、長いヤツですよね。
山下:ものすごい量書いていただいたんですよ、RPGはこうして作られる、『ハイドライド』って。あれすごく評判が良くて。
内藤:今もその本持ってますよ。しかも第一版のヤツ。
山下:素晴らしい(笑)。
内藤:あの後縮刷版が出たんですよね。
山下:出ました。
内藤:あのデカイやつを持ってるんですよ。
山下:貴重ですね、それ。
−:“スタープログラマー”っていう……。
内藤:懐かしい言葉ですね。
−:最近言わないですけど。
内藤:言わないですね。
山下:今はもうプログラマが多くなり過ぎちゃって、あんまり差別化が出来なくなっちゃたんでしょうね。昔はそれこそ内藤さんとか、中村光一さんとか、そういうプログラマとして売ってらした方々がいらっしゃって。
内藤:今は分業がハッキリしちゃって、プログラマはプログラムしか組まない、絵は描かない、企画は考えない、でしょう。あの頃は一人で何でもやってたんで。
山下:プログラマとかいいながら、ゲームデザインもされてましたからね。
内藤:これ(PC-8801版)、グラフィックも私描いたんですよ。
山下:へぇ〜、知らなかった。
内藤:音楽もそうです。やってないのはオープニングデモの一枚絵だけなんですね。
山下:スゴイ、多才ですね。
内藤:出来ちゃったんですね。
−:PC-8801版は全部ですよね。
内藤:ハイドライドII』の人間キャラまでは自分で作ったんですよ。あとは人に任せましたが。
−:その辺までが一人で出来る限界ですか。
内藤:まぁ、限界ですね。ゲーム作りも大きくなりましたから。