【３・１１から３年】日本製紙石巻、特別な日に格別な金星

１回２死一塁、２ランを放った伊東（中央）がチームメートとグータッチ

　◆社会人野球東京大会第２日　▽予選リーグＤ組　ＪＸ―ＥＮＥＯＳ０―６日本製紙石巻（１１日・大田スタジアム）　予選リーグが行われ、日本製紙石巻がＪＸ―ＥＮＥＯＳに６―０で快勝した。伊東亮大外野手（２４）が２ランを含む３安打４打点を挙げ、昨年の都市対抗連覇チームから大金星。東日本大震災で工場が被害を受け、練習もままならない苦難を乗り越えた。またセガサミーを率いる元ロッテ内野手の初芝清監督（４７）は、三菱自動車岡崎を３―０で下し、就任初勝利をマークした。

　ハイタッチをかわす選手たちに笑顔はなかった。特別な勝利をかみしめるようにぐっと表情を引き締めていた。就任１年目で、これが公式戦初勝利の伊藤大造監督（４７）は「うちにとってベストゲーム。何か見えない力が働いたのかな。選手に感謝します」と感慨深げだった。

力投を見せた佐々木

　ウオーミングアップ前にチームだけで黙とうをささげ、試合に臨んだ。初回、伊東の右越え２ランなどで３点を先制。３回にも伊東の２点適時三塁打などで３点を加えると、投げては先発の佐々木拓也投手（２４）が緩急をつけた投球で５安打完封した。

　１１年３月１１日も今大会に参加していた。準決勝で敗れて東京・八王子市内のホテルに着いた後、東日本大震災が起きた。チームが石巻に戻ったのは約１か月後。坂の上にある室内練習場のすぐ下まで、がれきや焼けこげた車が押し寄せ、選手たちは工場内の泥かきなど復旧作業に追われた。練習で使用していた石巻市民球場は自衛隊の駐留基地になったため、北海道・旭川工場に移って５月中旬に練習再開。昨年３年ぶりに都市対抗に出場するなど少しずつ力をつけてきた。

　「この日に勝つことで、ちょっとでも勇気を与えられたかなと思う」と伊東。これで１勝１敗となり、予選突破は１２日の明治安田生命戦に持ち越された。今年のチームスローガンは「石巻力～行動の軌跡～」。決勝トーナメントに進んで、復興に向かっている地元の応援や支援に応えるつもりだ。