「3.11」のおよそ1100年前、869年7月9日、東北地方は日本海溝で発生した貞観地震(推定M8.3以上)による巨大津波に襲われたことが、歴史書『日本三代実録』に記されている。
それを裏付けるための地質学的な調査を続けている一人が、東北大学の菅原大助さん(災害科学国際研究所)だ。
早くから貞観地震に着目していた箕浦幸治さん(東北大学大学院理学研究科教授、古環境変動学グループ、地学専攻)のもとで大学院生としてその課題に取り組み、現在は津波「工学」と津波「理学」のコラボレーションの研究の場である今村文彦さんの災害科学国際研究所のメンバーだ。野外調査とともにコンピュータによる津波シミュレーションもこなす、いわばデジタル地質学者だ。
その菅原さんに同行し貞観地震の痕跡を調べるフィールドワークの様子を見せてもらったのは、2012年2月のことだ。その場所を聞いて驚いた。
宮城県仙台市若林区荒浜。
ここは、私にとって「3.11」以降、とりわけ深い思い入れのある場所で、何度も訪ねてきたところだったからだ。
少し長くなるが、私と「荒浜」について述べておきたい。