遠藤を送り倒しで下す白鵬(右)=ボディメーカーコロシアム
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◇春場所<3日目>
白鵬(29)=宮城野=は遠藤(23)=追手風=を問題にせず、玉鷲を圧倒した日馬富士とともに3連勝とした。綱とりの鶴竜(28)=井筒=は隠岐の海に押し出されて土がついた。稀勢の里は松鳳山を寄り倒して3連勝。琴奨菊は栃乃若を寄り切って2勝目を挙げた。
史上最速金星を狙う遠藤に、白鵬は立ち合いで強烈な張り手をお見舞いして送り倒した。「あいさつ(代わり)どうこうとはないですけど、若手の勢いがあって声援も大きい。いい緊張感があった」。張っていかずとも勝てるはずだが、「3・11」への思いが横綱を熱くさせたのだろう。
29回目の優勝を狙う場所で、この日が29歳の誕生日。「巡り合わせがある。早々と3月で決めたい気持ちもある」と宣言した。稽古後に家族、後援者からお祝いの連絡があったといい、「ほんとに両親に感謝ですね」と喜んだ。
ただ、「誕生日であるからこそ、東日本大震災への思いは誰よりも強いものがある」と言い続けている。「きょうは震災の日でもある。力士代表として、いろいろ考えさせられた。その中で横綱として結果を、白星を求められますが、勝ち負けではなく、その奥に違う相撲道の道があるのではないか。社会貢献するとか。宿命のひとつだと思います」と取組後に静かに語った。
震災による原発事故でモンゴルの家族から帰ってこいと言われた。「全力士の代表として、『帰る』と言ったら大変なことになる。ほかのスポーツとは違うんだという思いがあった」。横綱の責任だった。
力士会が被災地に贈る土俵も、岩手県山田町に続き、2つめが1200万円かけ宮城県気仙沼市に夏ごろ完成予定。その後は福島県に3つめを贈る。
震災直後に被災地を慰問した。そのときは「逆に勇気をいただいた」と振り返るが、今は「まだ3年、もう3年。被災された方に復興が届いていない。土俵の上からですが、少しでもきょうの横綱はよかったと思ってくれれば」。忘れられない誕生日が今年もきた。(岸本隆)
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