東京電力福島第一原発の事故によって平穏な生活を奪われたなどとして、福島、栃木両県の住民や首都圏への避難者ら計278人が10日、東電と国に1人あたり1千万~1800万円の慰謝料などを求めて、東京地裁に集団損害賠償請求訴訟を起こした。請求総額は約60億円に上る。

 弁護団によると、原告には事故当時、福島第一原発が立地する福島県大熊町に住んでいた東電の現役社員も含まれる。東京地裁にはこれまで避難者ら48人が慰謝料など計6億円を求めて、同様に提訴している。

 今回の原告中、約150人が福島県田村市常葉町早稲川地区の住民。同原発から20~30キロ圏の旧緊急時避難準備区域の住民には東電から1人あたり月額10万円の慰謝料が支払われたが、そこからわずかに外れていた。「線量が高い地域なのに、十分な賠償を受けられていない。線引きは不当だ」とし、国には東電への指導責任があると訴える。

 提訴について東電は「訴状が送達されていないため詳細はわからないが、真摯(しんし)に対応する」、原子力規制庁は「現時点ではコメントできない」としている。