麻帆良学園 三学期 終了式
ふぉふぉふぉ……。
……遠くでバ○タン星人の声がする。
んあ？ テレビつけっぱなし？ ……あれ？ 俺、レッ○マンなんて見てたっけ……？ って、やべっ！ 今、終了式やった！
「新年度から正式に本校の英語科教員となる、ネギ・スプリングフィールド先生じゃ！」
おおっ、ネギが紹介されてる、もう式は大体終わっとるみたいだな……。
きょろきょろ、と、横島は周りを伺う。
……、よし、居眠りこいてたのは気付かれてない見たいだ……、っ！？
と、安堵したのも束の間、一人の少女の視線が、自分に向いているのに気が付いた。
あちゃー、見られてたか？
横島は、頭を掻いて、苦笑いを浮かべる。
少女は、クスリ、と、笑い、口元を指差した。
……、口……？
横島が口元に手を持っていくと、うわ、恥っ！ こりゃ涎か！？
横島の口の周りは涎で汚れていたらしい。
ゴシゴシ、と、袖口で擦る横島を見て、少女はあらあら、と、微笑むのだった。
彼女、那波千鶴、は、その後終始微笑んだままだった。
「と、言うわけで２−Ａの皆さん！ 三年になってからもよろしくお願いしまーす！」
「よろしくー！ ネギ先生―！！」 「先生、こっちむいてー！！」
教壇で挨拶をするネギに、生徒達は大はしゃぎである。
その様子を横島は、教室の後ろで眺めていた。
「おい」
そこに声が掛かる。
「どうした？ エヴァちゃん」
横島を呼んだのはエヴァンジェリンだった。
横島は、エヴァの席に向かって歩いていく。
「……、此処最近な、私の家の近くに工事中の区画があってな……？」
「はい？」
突然の話に、横島は、ついて行く事が出来ない。
「……、昨日、一昨日と、家で昼寝をしていたらなぁ、工事の音でよく眠れなかったんだ……」
「……、へぇ」
つまり、こう言う事だろうか？
エヴァちゃんは、昨日、一昨日、と昼寝をしていた。
でも、いつの間にか始まった何かの工事の音で、安眠を妨害されて、不機嫌である、と？
「まあ、そんな所だな」
ふん、と、鼻を鳴らす。
「……？ 俺を呼んだわけは？」
首を傾げる横島。
「ああ、愚痴を聞いてもらいたかった、ただそれだけだ」
と、エヴァは笑って見せる。 ……、でも、その笑顔が怖いのは何故？
「あー、そーなの？」
災難だなー、うんうん。 と、横島は頷いて返す、が。
「……それと、工事の発注者に文句を言おうと思ってな……？」
「それって如何言うこ……んぎゃっ！？」
横島は脇腹に感じた激痛に、悲鳴をあげた。
「如何言う事も何も……」
キリキリキリ…………！！
「痛い痛い痛いっ！ エヴァちゃん、ちょっ！」
「茶々丸に調べさせたら、工事の発注者は横島らしくてなぁ……、なあに、千切るまではせん」
ギリギリギリギリ…………！！
更に強い力が加わって行き、横島の顔は痛みに赤く染まっていく。
「ちょっ！ しらなっ！！ 知らないって！！」
「そんな訳無いだろう……？ 爺にも確認は取った……、お前が私の安眠を妨害したとな……！」
ギチギチギチギチギチ…………！！
「千切れるっ！ エヴァちゃっ！ だめだってっ！ 千切れるっ！！」
「人間そう簡単に千切れはせん……、横島、なら、なんだと言うのだ、あの工事は！」
私の家の横で行き成り工事を始めおって！！
「ぎゃーー！！」
「あ、わりぃ、それ、俺だ。 工事の発注さ、横島の名前で頼んだんだったわ」
今まで成り行きを見ていた雪乃が、口を挟む。
エヴァの家の隣、と、工事場所がはっきりした為、雪乃は思い出したようだ。
ちなみに、雪乃の席はエヴァの隣だったりする。
「はぁっ？」
エヴァは勢い良く、雪乃の方を向く！ そう、それが行けなかった。
何とも言えない音が辺りに響く……。
何と言うか、こう……、生肉を手で引き千切ったような……？
「「あ」」
エヴァと雪乃は硬直する。
確りとその音を聞いたのは、この二人と、エヴァの前の席で真面目に、ネギが話をしているのを聞いている茶々丸だけだった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ！！！！」
声にならない悲鳴を上げた横島は、硬直したエヴァの手を振りほどき、教室を飛び出した……！！
「……、あ、あは、あはは、あはははははははは」
「……まあ、文珠で治しに行ったんだろ……？」
と、冷や汗を流しながら、二人。
「後でちゃんと謝っておけよ？」
「……あ、ああ……」
「そ、そうだ、さっきの話だ！ 雪乃！ さっきの話は本当か！」
「あ？ ああ、エヴァの家の隣に、今、新居建設中」
横島の名前を使ったのは、世帯主が成人してないと、厄介だからだ。 と、雪乃。
「や、ややこしい真似をっ！？」
だんっ！
と、エヴァは机を叩く。
大きな音がしたが、２−Ａの生徒達は何かの話に夢中で、その音を気にする様子は無かった。
そして、
ガラガラガラ……。
と、ドアが開く。
横島が、まだ脂汗を流している額を拭いながら、教室へと戻ってきた。
ラガラガラガ……。
ぴしゃ、と、ドアが閉まる。
「ふぅ、エライ目に遭った」
と、横島は溜息を吐いた。
「うぅっ！」
勿論それは、エヴァに聞こえており、エヴァは言葉を詰まらせた。
「よ、横島？ そ、その、だな……？」
忙しなく目を泳がせながらエヴァは横島に話しかける。
「あ、エヴァちゃん、心配しないでいーから」
と、横島は手を横に振ってみせる。
そんな横島に、エヴァは、
「……、す、すまなかった、な」
と、素直に謝った。
頭を下げて謝ったエヴァに、横島は、
「まー、事故みたいなものだったし……、千切れたのは」
流石にアレはマジで痛いから、もう勘弁な？ と、笑いかける。
魔装生徒！
ユキま！
第十話
「お、知らんうちにＬＨＲが終わってるぞ？」
その後三人で話をしていた横島達はＬＨＲが終わった事に気が付かなかった。
エヴァの従者である、茶々丸の姿も其処には無い。
「茶々丸が私を置いて行くとはな」
「マナもいねぇ」
教室には三人だけだった。
「ん？」
横島が何か黒板に書いてあることに気が付いた。
２−Ａ 学年トップおめでとうパーティー開催！！
一時間後、校舎裏の桜の木の下に、全員集合！！
ゆきのんは、絶対参加！！
横島先生、エヴァちゃんは、ゆきのんを連れて来る係だよ！
絶対連れて来てね！！
Ｂｙ ふーか＆ふみか
「……なんだこりゃ？」
「……さあな、うちのクラスは良く解らん」
「俺、絶対参加って、なんかやったか？」
普通にテスト受けてただけだったんだがな？ と、首を傾げる雪乃。
「まあ、パーティだってんだ、行かない訳無いよな？」
横島が雪乃に笑いかけ、
「まあな、俺だってそんなに付き合いが悪いわけじゃねぇよ」
と、雪乃がソレを笑い返す。
――― 一時間後
桜の木の下で……。
さて、これは如何言った状況だろうか？
俺の周りには、２−Ａの皆がワイワイと集まって来て。
「私のこと忘れないでねー」だの「はい、これ餞別」とか言って、いろいろな物を置いていく。
委員長こと、雪広あやかなんか……、
「雪乃さんの胸像を作らせました！」
とか何とかで、変な物押し付けてくるし。
？？？
う〜む、これは、如何言う事だろうか？
ふと、横島のほうを見てみると、桜の上の方を見て唖然としている。
桜の上？ 何かあるのか？
俺、伊達雪乃は振り向いた。
２−Ａ 学年トップおめでとうパーティー！！
＆
ゆきのん転校さよならパーティ！！
〜また会う日まで……！〜
と、書いてあった……。
俺は、顎が外れるかと思ったぜ……。
「なーんだ、結局アスナ達の勘違いかぁー」
「でも良かったじゃん！ ゆきのん転校しないんだし！」
あははははー！ と、笑い声が辺りに響く。
「もう、雪乃も雪乃よ、引越しの準備で忙しいとか言うから……」
ああ恥かしい！ と、アスナ。
「でも吃驚したなー、雪乃、家建ててるんやって？」
お金持ちやー、とは、このか。
「ああ、説明不足だったかもな、わりぃ」
そう言って、頭を下げる。
勘違いだったが、自分が転校する、と、言う事で餞別を持ってきてくれたのだ、雪乃はありがたい気持ちで一杯だった。
「でも、うちって全寮制じゃなかった？」
誰かが呟いた。
「あ、あれって申請すれば大丈夫なんだよ？」
と、それに返したのは、明石裕奈。
私、高校生になったら、家に戻ってお父さんの世話しようって思ってるから、それ調べたんだー。
だ、そうだ。
「「「ふ〜ん」」」
その言葉に、得心のいった一同。
しかし、更に持ち上がる疑問。
「じゃあ、ゆきのん、誰かと住むの？」
前に、両親はいないって、むぐっ！？ むがむが……！！
「おねぇちゃん！ 駄目だよ〜！」
遠慮のない発言をしようとした、鳴滝風香の口を、妹の史伽が慌てて塞ぐ。
「むぐ〜！ むぐぐ〜〜！！」
「ああ、いいよいいよ、ママが死んじまったのは、かなり昔の話しだし……、父親ってのは、どんな奴なのか見た事も聞いた事もねぇからな……」
そう言って、手をひらひらと振ってみせる雪乃。
雪乃が気にした様子は無い。
「ゆきのん……」
史伽は申し訳なさそうに、項垂れる。
「だから良いって、それよりもよ、風香、放してやんねぇとやばそうだぞ？」
「お姉ちゃんを？ ……ああっ！ お、お姉ちゃんっ！！」
先程まで、じたばたともがいていた風香だったが、酸欠なのか、ぐったりしてきていた。
史伽は慌てて、風香の口元を押さえている手を放す。
「ぶはっ！？ けほっ！ けほっ！！ もぅ！ ふみか、後で覚えてなさいよ〜！」
「あわわわっ！ ご、ごめんなさ〜い！！」
「で？ ゆきのんは誰かと一緒に住むんだよね？」
まだ、諦めてなかったのか、風香は雪乃に纏わり付く。
「ん、まあな、そもそも、六割はそいつが金を出すわけだしな……」
結局バイト増やしても、半々には出来なかったぜ……、と、舌打ちをする。
「ねぇねぇ、誰々？ 僕達の知ってる人〜？」
やっぱり女の人？ 男の人だったりとかしないの！？
男の人だったらやっぱり同棲って事になるのかな？
同棲！？ うわ〜、雪乃おとな〜！！
って言うか、雪乃に手を出すって……、ちょっと……。
……、う〜ん、確かに……。
ロリコン……？ いや、ペドフェリア……？
風香の質問に乗りかかるように、始まったソレは段々と収集が付かなくなっていく。
「まあ、お前らの知っている奴だなぁ……」
雪乃がボソッと呟く。
その呟きは、風に乗って……、
ぴくっ！！
遠くで、横島の耳が動いた。
「……、あいつ……、まさか此処で言ったりとか……」
横島は、雪乃達から少し離れた場所で、桜を見ていた。
右隣にマナ、左にはエヴァ、そして、茶々丸。
四人で、桜を肴に一杯やっていたのだ。 勿論、酒ではない、ジュースである、あしからず。
「いや、雪乃の事だから、事も無げに話してしまうかもしれないよ？ 先生」
ギンッ！
と、目を鈍く光らせる、真名。
「いや、流石に何も考えてないような、や、つ……、マ、マナちゃんは……、もしかして、知ってるのかなー？」
横島の頬を冷汗がつたう、嫌な汗、と、言うやつである。
「……この間、ね、……、いやいや、驚いたよ……、先生がまさか幼女趣味「「一寸待てぃ！」」
真名のその物言いに、横島は勿論、エヴァまでも喰い付いた。
「それは聞き捨「誰が幼女だ！！」」
横島の反論を遮り、エヴァが吼えた。
「……エヴァンジェリン、私は貴女の事を言ったわけでは……」
「だまれっ！ 私より背の高い雪乃が幼女なら、私も幼女になるだろうが！！ 人より54cmも背が高いからって……、ご、ご、ごじゅうよんせんち……」
その身体的落差に、ガクリ、と崩れ落ちる。 無理もない、大魔神佐○木のフォークも真っ青の落差である。
「お、落ち着いて、エヴァちゃん……、そもそも俺は幼女趣味じゃ、ないっ！！」
どど〜〜ん！！
と、高らかに宣言する横島。
「俺の趣味は、ボンッ！ キュッ！ ボ〜ンッ！ な、ネェちゃんだっ！ 乳！ 尻！ 太腿〜！！」
更に、声高に。
澄み切った空へ向かって、己の力を全てぶつけて……！
しかし……。
それが、一人の幼女……、もとい、少女の傷口を抉る事になろうとは……。
「…………、横島は、幼女趣味じゃ、ない……、私は、私は、何だ？ よう、じょ？」
よう、じょは、ダメ？ そう言えば、奴もそんな趣味じゃない、とか何とか……。
しかし、私は魔力さえ……、幻術が…………、バインバイ〜ン……。
やはり、この呪いを……、……、計画を前倒しに……。
エヴァはフラフラ、と、立ち上がり、坂を下っていく……。
「あ、え、エヴァちゃん？」
「……マスター」
エヴァのその様子に、茶々丸も立ち上がり、ペコリ、と、お辞儀をして、エヴァを追いかけて行った。
「お、俺、何か悪い事言ったかな？」
「いや、特に」
ないない、と、真名は手を振る。
「そうそう、先生」
「ん？」
「……参考までに聞きたいんだ、先生は、自分より背の高い女性は、如何、思う？」
がしっ！ と、横島の肩を鷲掴みにする、真名。
「え？ い、いや……」
「いっ、嫌なのか？」
真名の瞳に動揺の色が混じる。
「そ、そう言う訳じゃ……、か、格好いいなぁ……、とか？」
「……好きか嫌いかで、言うと？」
ゴクリ……。
「……好き、かな？」
「……、そう、か……、ありがとう先生、参考になった」
と、言うと、真名は、用事を思い出した、と、言って、横島に背を向けた。
「……、な、何だったんだ……？」
真名の遠くなっていく背中を見ながら、横島は、唖然としていた。
「……、ああ、先生」
真名が突然振り返り、
「雪乃は、先生との同棲……、否、『同居』か……、あまり人に隠すつもりは無さそうだったよ？」
そろそろ、止めた方が良いんじゃないかな？
と、横島の後ろを指差す。
その瞬間。
黄色い悲鳴が、桜の木を、丘を、校舎を、麻帆良学園を、大きく揺さ振ったのだった。
あとがき
バレました。
さて、仕事が大変に成ってまいりました。
疲れた疲れた。
レス返しです。
万々さん
＞……龍宮はかわいいわね（どこの火の術法士だよ！）
＞崩れ落ちた所とか……うむ。
可愛かったですか？ 良かった。
Tシローさん
＞今回同棲することが真名にばれましたが、多分真名は横雪の家に入り浸るんでしょうね。雪乃だけに出し抜かれないように。
＞エヴァとかも知ったら入り浸るだろうし。結果として、誰の家かわからない状況に。
……、我が物顔で寛ぐマナとエヴァ。
想像が容易にできちゃいますねー。
Ｃｙｎｏｓさん
＞ハルナフラグも有り？
そ、それは……！ ひ、秘密です。
一二三さん
＞後半は健気なマナに全俺が萌えた、ＧＪｗｗｗｗｗｗ
萌えは良いものですよね。
wataさん
＞Α組以外の生徒とも仲がいいようですね横島は人気が高そうだ…(本人知らず)
これからも、他のクラスの生徒とのちょこっと話入れて行きます、それで人気の有無が良く解るかと……！
アニメマンさん
＞まさかこの話におお振りが絡んでくるとは!
＞これからの出番はあるのでしょうか?
……おそらく、ちょこちょこっと、出てくる事になりそうです。
三橋廉は、恋、と、田島悠一朗は、田島悠、と、名前と性別を変えてみましたー。
梓ちゃんは、名前がそのまんま。
怒羅さん
＞＞『ＤＸ！ チョコレートサンデー』（980円）を、含む、1780円を、雪乃に奢らされたのであった。
＞………奢る額が増えとる！？
＞上手くやりやがった雪乃に乾杯な怒羅です。
かんぱ〜い！！
九頭竜さん
＞ベッドで一緒に寝ていることがばれたら真名あたりが…ガクガク(((；゜Д゜)))ブルブル
大変だぁっ！！ ガクガク(((；゜Д゜)))ブルブル
アイクさん
＞自分は男だと言い張っても、心は肉体に引きずられていく。転がるリンゴな雪乃さん。
もう、君（かおり）の知ってる、伊達雪之丞は死んだ……。
緑茶さん
＞デートにお邪魔虫が乱入するのを警戒する真名の反応が実に良い！
もうちょっと勢いをつけても良かったかと思いましたが……、マナですから、大人しめ、というか、クールにいってみました。
ARKさん
＞いやはや、今回も面白かったですわ。次話もよろしくです。
らじゃー！！
DOMさん
＞しかし、横島…ちゃんと教師やってたんだぁ（汗
流石に何もしないって訳には行かないでしょうし、ねぇ？
体育教師も試験監督ぐらいやらないと……。
トトロさん
＞そんなへっぽこな彼女に幸あれよ！彼女には、デ-ト編ではがんばって欲しいですね。
頑張らせましょう！ 頑張って書きましょう！！
xinnさん
＞マナがんばれ！！雪乃は一歩どころかゴール寸前だ、寮を爆破して雪乃邸に転がり込むんだw
刹那までもれなく付いてきちゃう！ とか……！？
……、あ、いいかも……？
HAPPYEND至上主義者さん
＞球道さんの真名は本当にかわいいったらないので、ひじょ〜〜〜うに楽しみです！！！！
ありがとうございます！！ その言葉……、癒されます！！
最後の砦さん
＞真名かわいい真名かわいい真名かわいい真名かわいい・・・
＞微妙に壊れた最後の砦です
＞真名かわいい！！もう恋する乙女状態ですね
＞頑張れ真名！負けるな真名！いや、二人で勝て！真名！！
壊れちゃダメー！！ 救急車ですか！？ 救急車―！！
では、また次回！！
ばっちこ〜い！！