麻帆良学園、学園長室。
そこに二人の人影が……。
一人は、近衛近右衛門、もう一人は、横島忠夫である。
近右衛門が横島に問う。
「どうかね？ 横島君……」
「良く頑張ってますよ、ネギ「このかを嫁に」って、またソレですかっ！？」
いい加減にしろっ！ と、やや強めの突っ込みを後頭部に叩きつける。
すぱこ〜んっ！
「ふぉっふぉっふぉ、いつ受けても横島君の突っ込みは小気味良いのぅ……」
「学園長のボケは、痴呆の方のボケなんじゃないですか？ 医者行って下さい、医者」
「死ぬ前に、曾孫が見たいのぅ……」
「Go 『老人』home!」 訳 さっさと老人ホームにでも入ってください、ボケ老人。
……、このようなやり取りは、日常茶飯事である。
「さて、本題じゃが……」
「はい、ネギ……、ネギ君は良くやっています、授業の進め方も教え方も上手い、だそうです」
雪之丞からの報告を、読み上げる。
「最初こそ、A組のやつらに押され気味でしたが、今ではちゃんと手綱を握れています、時々暴走しますが……。 まあ、合格点には十分すぎるでしょう、なんてったって２−Aですし」
「そうかそうか……、この様子なら、四月から正式な教員として採用出来そうじゃのう」
「ご苦労じゃった、横島君」
「はい」
「しかし、もう一つ、ネギ君には課題をクリアしてもらおうかの……、才能ある立派な魔法使いの候補生として……」
フォフォフォ、と、いつもより控えめに笑う、近右衛門。
その様子に横島は、
「……、学園長、あんまりややこしい事は止めて下さいよ……？」
碌な事にはならないだろうなぁ……、と、溜息を吐くのだった。
魔装生徒！
ユキま！
第八話
ＨＲの為に教室に向かっていた横島は、２−Ａの生徒、椎名桜子と明石裕奈と一緒に歩いているネギを見つけた。
「お、丁度いいとこに！ ……ネギ先生！ ちょっと、良いですか？」
生徒の前、と、いう事もあってキチンとした言葉遣いでネギを呼ぶ、横島。
こういった事も、教師として生活してきた一年半で身につけたものだ。
社会というものは、そういう事をキチンとしないと、生き辛い物なのである。
「あ、横島先生……、何かあったんですか？」
キョトン、と、ネギが首を傾げる。
「学園長先生が、これをネギ先生に渡してくれ、と」
そう言って、手紙を差し出す。
その手紙には、
「えっ！？ 僕への最終課題！？」
ネギ教育実習生 最終課題 と、書かれていた。
あわわっ！ こんな課題があるなんて聞いてなかったよー！？
これをクリアしないと、正式な先生にも、立派な魔法使いにもなれなくなっちゃうー！！
ネギの頭の中では、これでもか！ と、いうくらいの難しい課題が浮かび上がる。
悪のドラゴン退治！？ 攻撃魔法200個習得！？
た、たいへんだぁ〜〜！！
……、どんな課題なんだろう……？
ドキドキと五月蝿い位に鳴る鼓動、はたして、課題は？
ピラ……！
ねぎ君へ
次の期末試験で
二−Ａが最下位脱出できたら
正式な先生にしてあげる。
麻帆良学園学園長 近衛近右衛門
どーーーん！！
「「な……！ 期末で最下位脱出！？」」
後ろで、ネギの手紙を覗き見していた、横島も一緒に驚いた。
「「………」」
「な……、なーんだ簡単そうじゃないですかー！！ あはは！」
と、笑い出すネギ。
しかし……。
「…………」
横島の顔は青褪めていた。
「え〜、なになに？ どーしたのネギ君ー？」
「あー、ネギ君、本物の先生になるんだ！？」
「あっ、見ちゃダメですよぅ」
…………
………
……
三人がドタバタと2−Ａの教室に入っていっても、横島は、立ち尽くしたままだった。
「………、が、学園長、……、なんて難しい課題を……！？」
そんな課題やったら、悪のドラゴン倒したほーが楽じゃー！！
「……、も、文珠、使う、か……？」
横島は結局、雪乃とマナが迎えに来るまで、唸ったままだった。
「……最下位脱出ねぇ、あの爺、坊主の事、実は嫌いなんじゃねぇか？」
横島から話を聞いた、雪乃はため息混じりに、呟いた。
「……、やっぱそう思うよなぁ……、雪之丞！ 期末は平均十点アップで頼む！！」
「阿呆、無理言うな、百点超えちまうよ、マナに言え、マナに」
なんと伊達雪乃、実は学年十九位の学力の持ち主なのであった！
元々、完璧な義務教育を受けられなかった、伊達雪之丞。
普通の高校生活を送る、横島、ピート、タイガーに、羨望の眼差しを向ける事もあった程であった。
そこに、女子中、であるが、学園生活を送るチャンスがやって来たのだ！
『やぁぁってやるぜっ！！』と、かなりヤル気になって授業を受ける雪乃。
しかし、授業は自分の知らない事ばかり、転入当時、勉強に全くついていけなかった。
そんな雪乃が取った行動とは……！
『超！ 勉強合宿大会！！』 の決行、で、ある。
説明しよう！
エヴァンジェリンが所有する、
『わぁおっ！ 別荘内の一日は外の一時間なんだってよ！？』な、別荘の存在を高畑・Ｔ・タカミチから聞きつけた雪乃が、持ち前の猪突猛進……、コホンッ！
一途な性格を発揮、エヴァンジェリン邸へ不法侵入し、別荘を無断借用し、三ヶ月に及ぶ勉強合宿を行ったのだ。
ちなみに、エヴァンジェリンは、大激怒、氷の雨が降った。 横島に。
その三ヶ月が、エヴァンジェリンと打ち解ける切っ掛けになったことも、追記しておく。
と、まあ、そんなこんなで。
雪乃の学力は高い！ のである。
「じゃあ、マナちゃん、今回だけ、頑張って！」
ぱしん！
と、マナに手を合わせる横島。
「……、それは、依頼かな？ 横島先生」
キラン！ マナの目が光った。
「うっ！ も、もしかして、お金、取るんか？」
「ふふっ、私は高いよ？ 横島先生……？」
流し目を、送るマナ。
「色々あって、金が無「ああ、じゃあ、体で払っ」今すぐにでもっ！！」
そう言いながら、ネクタイを緩ませ、飛び掛ろうとする横島！
パンッ！
「ぶぎゃっ！？」
横島が足に力を籠めた時点での発砲。 慣れたものである。
「……、今度、映画にでも行こうと思っていてね、映画代と、その後のあんみつ代、それでいい」
「……、りょ〜かい〜」
額から血をドクドクと流しながら、マナに返答する横島。
グッ！
マナが小さくガッツポーズしたのに気が付いた者は、居なかった。
「おい、遊んでねぇで、さっさと教室行くぞ！ もうＨＲ始まってんだからな！」
「へ〜い」「ああ、今、行く」
先を歩く雪乃が、二人を促し、三人は教室へと向かうのだった。
横島は教室のドアを開ける。
ガラガラガラ……！
「すまん、おくれ……、ぶっ！？」
ドアを開けると……、桃色空間ですた。
２−Ａの真ん中で、五人の美少女達が下着姿に、否、上半身裸の娘すら……「「見るなっ！！」」んぎゃっ！！
ズンッ！
パンッ！
打撃音と銃声。
横島は崩れ落ちた。
「ぐ、ぐふっ！」
―――翌日
横島と雪乃は、麻帆良学園を出て、某有名家具ショップに来ていた。
ちなみに、『２−Ａ図書館島探検隊 バカレンジャーズ＋1』 と、言う団体が結成され、某所で遭難している事を、彼らは知らない。
「……、別に、家具なんて適当で良かったんだけどなぁ」
「ダメだろ、お前の部屋のは備え付けのやつなんだから、ちゃんと買わないと」
「でもなぁ……」
ぶつぶつと、文句を言うのは横島。
そんな横島の腕を取り、グイグイと引っ張って、店を練り歩く。
「お、あのソファ、格好良くねぇか？」
と、ハシャギ気味の雪乃。
「あー、そーだなー」
「お、食器棚はこんくらいかな？」
「まー、そんくらいだろー」
「すげぇ！ このキッチン、こんなとこにも収納があるぞ！！」
「おー、おとくだなー」
「……、適当な答え返すなよ、お前」
横島の適当な返答に、雪乃は不機嫌になる。
「あー、そーだなー」
「………井」
んだよっ、せっかく二人で建てる家なんだから、いい家にしたいじゃねーかよ！
もっと、ちゃんと考えろよなーっ！ 馬鹿横島！
横島の部屋、全部ピンクにしてやろうか……？
と、その時、雪乃の目にソレが飛び込んできた。
「うわっ！ なんだよコレ」
ソレはドギツイ紫のレースをふんだんにあしらった、ダブルベッド。 しかも、天蓋付きである。
コレを買う奴は本当にいるのだろうか？ と、疑いたくなるような、有り得ないベッドである。
「うわー、すげぇ色使い……」
ポフッ……！
若干引きながらも、雪乃はそのベッドに座ってみた。
「お？」
ポフンポフン……！
「おお！？」
ポフンポフンポフン……！
如何やら、色以外は、かなり良い物らしかった。
寝そべってみる。
「……おおー！！」
布団の肌触りもとても良い。
枕も丁度、雪乃に合っていた。
枕元の値段表を見てみる。
…………、全部込みで、167万。
た、たかいっ！ で、でも……、か、買えない事も、無い……！
あ、色は……、良かった、三種類あるみたいだ。
コレに、ピンクに……、良かった、まともな色が在った。
買うなら、この若草色のだな……。
しかし……。
「なー、横島？ これ良いかな？ 横島の分のベッド、買えなくなるかもしんねーけど」
「あー、いいんじゃねーの」
「まじかっ？」
雪乃の目が輝く！
「やったっ！ サンキュ！ 横島！ お前も使っていいからな、このベッド！」
「あー、ありがとなー」
この会話が、横島にとって、引き返せない道の始まりだったのかもしれない……。
一方その頃……。
「…………」
カリカリカリカリ……。
「……………………」
カリカリカリカリカリカリカリカリ…………。
寮の自室で勉強する、龍宮真名の姿があったそうな。
あとがき
仕事、辛い。
仕事の辛さを、小説を書くことで紛らわしています、球道です。
今回は安産でした、ネタ作り二分！
では、レス返しです。
Cynosさん
＞正に惚れ薬大騒動と言った感じで良かったですよ。
ありがとうございます、頑張った甲斐があります。
尾村イスさん
＞でしたら私的に真名とのラブラブがみてみたい！！ せめてキスシーンまで！！
どんなシチュエーションにしましょうか？
九州エステティシャンさん
＞雪之丞め、強情なｗ（爆
＞まぁそんなに簡単に堕ちて（爆）もらってもアレですからねｗ
もっと、こう、じわじわと、ですよね？
一二三さん
＞フハハハハハハハハハハ！！！
＞待った、待ったぞ〜、遂にこの時がきたのだユキま更新の日が！！遂に来たのだ〜〜〜〜〜〜〜っ！！！！
ヘイお待ち！ 毎度っ！
DOMさん
＞ああ、横島ってオカルトアイテムの相性が悪いんだなぁ…。
原作でも大抵のオカルトアイテムで痛い目見てますから、それを表現してみました。
ｗataさん
＞やっぱり横島が惚れ薬を飲みましたか…
＞(ネギまとクロスする場合、ほとんど三年生になってからだから惚れ薬騒動の話って無いんですよね)
やはり横島に飲ませる他無いよなー、と、言う事で飲ませました。
///さん
＞TSあり注意だけじゃ不親切では？
こ、壊れ表記もつけたほうが良かったですかね？
ARKさん
＞ありがとう、ありがとう遂に雪乃の壁に頭ガンガン「俺は男だー」感謝ですｗｗｗ
もう、此処だっ！ と、思ったので、咄嗟に……。
最後の砦さん
＞読んでいたら大ダメージを受けた最後の砦です
か、回復しないと！ 薬草食べますか？ ポーション使いますか？
紅蓮さん
＞ネクタイを引っ張ってキスって絵的に良いですよね。
そんな風にキスされたいですよね、こう……、奪われるようにっ！
黒野鈴さん
＞今までにネギまとＧＳのクロスで１８禁は無かったけど、球道さんに期待しています！
…………、む、難しい、ですよ？
Ｔシローさん
＞本編外で麻帆良の名物先生の一人に確実になってそうですね。
＞そして、横島の対象外の小・中学生に（面白い先生として）人気がありそう。
大人気でしょう、弄ると面白い大道芸人先生……、そりゃあ、大人気ですとも。
HAPPYEND至上主義者さん
＞今まで見た、真名をヒロインにしたクロス物の中で、もっとも違和感のないＳＳです。
すごく嬉しいです！ 少しずつ、真名と横島の出会いとか、書いていくつもりですので、待っていてください！
次も早めに書けるように頑張りますので、しばしお待ちください！
では、また今度。
ばっちこーい！！