意識を失っている俺と横島は、麻帆良学園、と言う学園に保護された。
目を覚ました俺を待っていたのは、異様に後頭部の長い爺だった。
爺は、俺たちを保護してくれた、麻穂良学園の学園長だという。
呆ける俺に、爺は白い封筒を差し出した。
「君達が、気絶した場所にあったもの、だそうじゃ、すまんが検めさせてもらったぞ……、その御蔭で、君達の状況も少しは把握しとる」
呼んでみるとええ、と、言うと、爺は部屋を後にした。
横島の様子を、見に行く、と。
最高指導者からの手紙によると。
キーやんです。
カクカクシカジカ、マルマルウマウマ、ツルカメツルカメ、な事情で。
ゲシュ○ンストやシュッ○バルトより、ヒュッ○バイン、と、言うことになりました。
ラプ○ーは、ビ○ガーやファル○ンより、避けるので、心配は要りません。
アル○アイゼンは巨人になるまでが厳しいですが、硬いので平気です。
グルン○ストは零から参まで、手を加えてやれば、最後の最後までエースです。
ダイ○ンガーは愛されすぎだと思います。
タ○クをグ○ンガストに乗せてみては如何でしょうか?
今回は良く動きますね、これなら発売延期も頷けます。
レ○ィーナ艦長が、ネグリジェとは、いやはや、驚きです。
追伸 二枚目からが本題です。
……あー、二枚目二枚目。
ため息を吐きつつ、二枚目を取り出す。
サッちゃんやでー。
正直、いきなりで戸惑っとると、思ったんで、此処に一筆啓上や。
半年くらい前から、デタント反対派の連中に、横っちとユッキーは、狙われとってん。
よーさん反対派がおって、二人の警備に人手を割けなくなって来とるんが現状で、こっちも頭抱えとんねん。 困るで、ホンマ。
そこで、今回の処置な訳や。
ホンマ、突然でスマンけど、ワイらがデタント反対派を、潰しまわってる間、ちょっと避難しててほしいねん。
片時も離れんと警護しとるんも、されるんも、嫌やろうし、キーやんは『護りは面倒です』とか言っとるし……。
まあ、そんなわけで、ちょっとした休暇だとおもて、ゆっくりしたってや!
PS ユッキーは、雪っちと、ユッキーどっちで呼ばれたほうがええ?
PS2 ユッキーの体は、いろんな要因が重なって、その姿に固定しててん。 こっちの世界に帰ってくる時に戻したるから、ちょお我慢したってな!
PS3 買ったでー!
手紙を畳む手が震える。
デタント反対派の奴等に狙われていた。 それは如何でもいい。
勝手に避難と称して、異世界に送られた。 そんなことも如何でもいい。
ユッキーとか、雪っちとか、…………どちらかと言うとユッキーだろうか?
それよりも問題があるだろう! 問題が!!
こんな姿になったいろんな要因ってなんだ! いろんな要因って!!
そこハッキリさせろ! ここが一番重要だろうがっ!!
ああ、こんな姿になっちまって……、俺は如何したらいいんだ……!
腕は、細くてなまっちょろいし、体はプニプにしてやがるし……。
顔は……。
顔は……?
今の自分の顔は、如何なっているのだろうか? 一回も見ていないことに気が付いた。
「鏡……、鏡……、ねぇか」
ちっ、と舌打ちする。
ベッドの脇に、ジャケットの掛けられた椅子があった。
「……よっ」
ジャケットの胸ポケットを弄る。
「……お、壊れてねぇな」
携帯電話だ。
こいつを……、カメラモードにして……、インカメラ……っと。
!!
こ、これはっ!!?
「ママに、似ている……!」
魔装生徒!
ユキま!
第三話
「よっ! おはよーさん」
学園長室の前で、横島と合流した。
「……、おう」
「何だよ、まだ怒ってんのか?」
「……、別に何でもねぇよ」
嘘だ。 かなり頭にきている。
と、言うより、横島の顔を見た瞬間に、再燃した。
「悪かったって、ちょっと調子に乗りすぎた」
手を合わせて、頭を下げる横島。
「……、ふん」
まあ、許してやるか。
今日は、今後のことについて、いくつか決めなきゃいけねぇ事があるらしい。
学園長室
「さて、横島忠夫君、伊達雪之丞君」
学園長、近衛近右衛門が、問いかける。
「君達は、これから先、如何するつもり、なのかね?」
「「…………」」
横島達は答えに詰まった。
如何するつもりなのか。
その問いに、戸惑った。
質問の意味を理解するのにも時間がかかった。
要するに、この二人は。
「「……何も考えてなかった」」
のである。
「ふぉっふぉっふぉっ! まあ、追々考えると良い、じゃあ、まずはこれじゃの……」
近右衛門が二枚の書類を、机に並べる。
一枚は、横島忠夫。
もう一枚は、伊達 と書いてある。
「……これは?」
横島が疑問の声を上げる。
「まあ、なんじゃ、これからこの世界で生活するには、戸籍が必要じゃ。 戸籍、って知っとる?」
「「知っとるわい!」」
俺達の世界にだって、戸籍はあるってーの!
と、突っ込みを入れる。
「ふぉっふぉっふぉっ! なら話は早いの、今からチョチョチョイッ、と、戸籍を作るんじゃよ」
さも当然のように言ってのける。
「これって、犯罪じゃないんですか?」
「いいんじゃねえの? この世界だと」
勿論、犯罪である。
「それはそうと、爺さん、俺の名前が書いてねぇんだが……?」
首を傾げる。
「うむ、今の伊達君は女の子じゃからのぅ、雪之丞とは書けんじゃろ?」
名前を決めんとな? と近右衛門。
「……、名前、か」
名前はママが付けてくれた神聖なものだ、軽々しく変えたくは無い。
雪之丞、この名前をどれだけ崩さないで変えられるか、だろう。
「雪、雪子、雪江、雪……、ゆき……、ゆき〜〜……」
しっくりとこない、正直、違う名前で呼びかけられても、反応できる自信が無い。
雪之丞……、ユキノジョウ……、ゆきのじょう……、雪乃、嬢。
「あ」
閃いた。
戸籍書類の空欄に、雪乃、と記入する。
伊達雪乃、よし、これなら如何にかなるだろう。
……と、名前の欄の横。
年齢の欄を見て、固まった。
「おい爺! これは何だ! こらっ!! なんだ13歳って!!」
「お、俺、22になってる」
なんで横島が22で、俺が13なんだっ!
「そら、なぁ、今の身長いくつだ「うるせぇっ!!」ぐおっ!?」
横島の足の甲を、踏み砕くつもりで、足を下ろす。
ちっ! 確かに今は150も無いだろうが、それでも……!
「俺はっ! 18だぁぁっ!!」
ドゴンッ!!
横島の足の甲を、踏み抜いた。
「ふぉっふぉっふぉっ、それはこれから君達に依頼する事に関係があるんじゃよ……」
「ふざけんな! そんなんで13歳にされてたまるかっ!?」
「ぐおぉぉぉぉっ! 足が! 足がぁっ!!」
「実はな、二人に頼みたいことがあるんじゃよ……」
「文句をさらりと流すんじゃねぇ!」
――――そして
「納得がいかねぇ!!」
ダンッ!!
俺は机に拳を叩き付けた。
なんで! なんで!
「なんで俺が、女子中学生何しなきゃいけねーんだぁっ!!」
雪之丞は、吼えた。
届かぬ天に向かって、一直線に、己の存在を、吼える、吼える、吼える!
「俺はっ! 男だとっ! 言っとろーがっ!!!」
……、所詮、天(聞く耳を持たぬもの)に、吼えたところで、何も変わらず。
「――――――――――!!」
「――――――――――――――――――!!!」
「――――――――――――――――――――――――――――!!!!」
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!」
「でも、もうワシ、届出、承認しちゃったし」
ぴらぴら、と学籍簿を振ってみせる、近右衛門。
既に、何時撮ったのか、顔写真まで貼ってある。
「最近の科学って凄いのぅ〜」
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!?」
「…………」
その後、五時間に亘る、主義主張も虚しく。
「…………、伊達、雪乃だ……、です。 宜しくたの……、お願いします」
ここに、女子中学生、伊達雪乃が、誕生したのだった。
あと一つ。
如何しても納得できない事がある。
「それで、今日から、この1−Aの副担任をして貰う事になった」
「俺は、横島忠夫! 22歳! 皆っ!よろしくなっ!」
歯を光らせて、サムズアップ。
「納得が、いかねぇっ!」
吐き捨てた言葉は、何故か起こった歓声に包まれて、何処かに消えた。
「俺が……、中学一年生かよっ!」
あとがき
連続投稿に気が付かず、投稿してしまった三話を引き上げ加筆しました。
連続投稿というミス、本当に申し訳ありませんでした。