「１点ずつ値段をつけないと古物営業法に違反。まとめ買いするときは、その中の１点に高価なものがあることが少なくない」（小根氏）

　ただでさえ、被災で苦しい思いをしてきた人たちの最期に、こんなひどい仕打ちをしているとは…。そこで、遺品の適正な買い取り価格を決めるという作業の必要性が生まれた。

　同協会では、１０日から「遺品査定士」の養成講座を開講した。高まったニーズに応えられる人材の育成を目指すという。遺品に適正な値段をつけて遺族らに伝えることが仕事だ。要望があればその場で買い取りもする。

　しかもこの問題は、なにも被災地に限ったことではないのだ。悪徳業者がはびこることを示す事件が昨年、愛知県で起きている。

　孤独死した男性の遺品整理を依頼された廃品回収業者の男が、作業中に預金通帳と印鑑を盗み、個人の銀行口座から４０万円を勝手に引き出したとして逮捕されたのだ。本来、見つかった貴重品は必ず依頼主に報告する義務がある。

　こんな手癖の悪い業者がいるのだから、査定額を安くする業者も当然いるわけだ。

　こういった事件は氷山の一角。小根氏は「現金や、ずっとしまわれていた高級食器セットなどを盗まれたなど、事件になっていないようなものも多く耳にする」と指摘する。

　買い取り業者が３０００円と言っていた遺品を大手リサイクルショップに持っていったら１万円と言われたなどのメチャクチャな事例が挙がっている。遺品査定士という資格ができることをきっかけに、一定の基準ができることが期待される。