恐怖から逃れる一つの方法は「正しく知ること」
先日紹介した『ナナのリテラシー』の作者、鈴木みそさんは、東日本大震災をテーマにしたルポルタージュを描いている。そのあとがきに書かれた言葉がこれだ。
この作品は、あの日以来、知らなければならなくなったこと、つまり、放射線の基礎知識から、人体に与える影響、食品による内部被曝等のテーマについて、鈴木さん自身が専門家の話を聞きに行く形で詳しく解説されている。また、現地取材による被災地の様子の描写も細かく、読み進めるうちに当時の緊張感がよみがえってくる。
ぜひ、この6章をきっかけに、あの時、何を感じ、何を調べたのか。また、何を考え、どう行動したのか。そして、どう恐怖と向き合ったのか、振り返ってみるのはどうだろうか。
都市震災編 僕と家族が震えた日
この作品を描くことになった経緯、震災当日の鈴木さんの家族の様子。そして、東京から最も近い被災地といわれる浦安の現地取材。
書籍流通編 僕と出版が震えた日
出版業界の被害状況や震災直後の対応を関係者に直接取材。震災直後の倉庫の様子とは。ダメになった本の費用は誰が被るのか。
先端科学編 僕と加速器が震えた日
鈴木さんが漫画化した講演『放射線の正しい測り方』(無料公開中。本書にも掲載)のスピーカーである野尻美保子教授を訪ねてKEK(高エネルギー加速器研究機構)を訪問。KEKの被害を視察。大気にまき散らされた放射性物資による被爆の影響を考える。
日本経済編 僕と経済が震えた日
経済学者小幡績さんに震災の経済に対する影響についてレクチャーを受ける。
食品汚染編 僕と放射能が震えた日
食品の安全性について。食品内の放射線の測定方法から、データをどう解釈するかまで詳説。同じく漫画化された『放射線の正しい測り方2 食品編』も掲載。
東北取材編 僕と日本が震えた日
東北取材。Jヴィレッジから、陸前高田市、大船渡市、陸前高田市、気仙沼市、岩井岬を現地取材。
この場を借りて、震災において亡くなられた皆様に心より哀悼の意を捧げると同時に、被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
※本レビュー内で作中の絵を使用することについて、作者である鈴木みそさんの了承をいただいています。