弱者皺寄せの仕組み
まるっとした話で恐縮ですが、先日世界各国の年金基金の動きを調べる仕事をしている人とご一緒しまして、あれこれお話をしました。いわゆる「顔の見えている年金基金」の動きはかなりトレースされやすくて、大柴さんのところでもこんな記事が出ています。
世界の上場株1.3%を所有するノルウェー政府年金基金
http://takanoridayo.blog.shinobi.jp/Entry/256/
書かれていることは面白いんですが、毛根という貴重な資源を無駄遣いするような金髪は許せませんね。はげろ。
年金基金というのは原則として弱者のツールであり、生存を保障する為に財を保全する仕組みという側面を持っています。ただ、魚群じゃないですが身を守るためにちょっとずつ資金を出して適正に運用するという言葉は綺麗な一方、何か起きると取り返しのつかない損害を蒙る場合もまたあるわけですね。
世界的な金余りの状況下で、たくさんの資金を持っているグループというのは安泰のように見えるわけなんですけど、既存のシステムの信頼性に過剰に依存せざるをえないというのが実情でもありまして、現場で担当されている方は危機感を結構強く持っておられるようです。我が国でも日本版401k然り、NISA然り、ツール類は確かに整備されましたが、構造や状況、有利不利をしっかり理解して投資判断している人はどれだけいるんでしょう。
これが年金世代になると問題はもっとややこしくなります。ぶっちゃけ、何がどこにあってどれだけの資産価値があるのかすら分からなくなっている老人ってのは相当数にのぼるわけで、彼らの認知に及ばないところで経済失調しました、価格が下落しましたという際に損害を抑える仕組みというものはあんまりきちんと働きません。
その意味では、いわゆる安定して財産を確保・保全できる仕組みだけでなく、信託業務や第三者後見人制度といった、別のセーフティーネットも一体となって整備していかなければならないんじゃないでしょうか。それは、津波で家どころか銀行が支店ごと流されて資産状況が分からなくなってダブルローン状態になるようなセンセーショナルな天災ばかりが問題なのではなく、取引・資産情報の冗長性や安全性も踏まえた包括的な議論が必要になるんじゃないかと思うわけですね。
弱者を守るはずの仕組みは、言い方を変えると護送船団方式であり寄らば大樹でもあって、その堅いはずの堤防がブチ破られたときに真っ先に損害を蒙るのはその弱者なわけですね。魚群によって安全なつもりでも、文字通り一網打尽にされる危険性と常に隣り合わせであり、そこから抜けられる人はそこに気を配って観察を怠らない人たちか、若く体力を持ちちょっとした損害でも自力で立ち上がれる人たちだけです。
逆の観点から言えば、何らかの不作為があったかどうかは別にして、災害や相場下落で一番最初に皺寄せがいって、二度と立ち直れない状況に陥るのは高齢者その他の弱者であるのに、日ごろからの備えをしないまま被災した後で「見殺しにするな」とか「弱者に寄り添え」などと叫んでも遅いだろという話であります。普段そのような活動に従事したり寄付をしてもいない連中が、イベント発生したときに一斉に立ち上がり始める状況は泥縄的で、せいぜい擁護できてもやらない善よりやる偽善ですよねというフォローぐらいになってしまいます。
3.11で手を合わせ黙祷をし、被災されて避難生活を送っておられる方や、亡くなられた方への思いを馳せるのも大事なことです。その上で、それ以外の364日にどういう貢献をするべきなのかも考える必要があるのではないでしょうか。
3.11のような重大な事件、災害があり、多くの日本人の命が失われても、日本の社会というものは強靭であるがゆえに、かえって変わることができなかった、という結論になるのかもしれません。それを良き哉とするか、残念とするかはその人それぞれの社会観、価値観なのでしょうが。
やはり金髪は公平にはげるべきだと思いました。