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石橋英子×前野健太 素晴らしいポップミュージックとはなにか?

インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:西田香織(2014/03/11)

2012年に発表した『Imitation of life』が昨年アメリカの名門インディーレーベルDRAG CITYからリリースされ、一方では、ジム・オルーク(名盤『Eureka』はDRAG CITYからのリリース)をはじめとした様々なアーティストとのコラボレーションも盛んに行うなど、極めて個性的な活動を続ける近年の石橋英子。今年の1月には、ジムと山本達久とのインプロビゼーションユニット「カフカ鼾」としてもアルバム『okite』を発表したばかりだが、間髪入れずに自身のソロ作『car and freezer』が完成した。『Imitation of life』同様、おなじみとなった凄腕バンド「もう死んだ人たち」のメンバーが全面的に参加した本作は、間違いなく2014年を代表するであろう、実に素晴らしいポップスの傑作である。

そして、そんな作品に大きな貢献を果たしたのが、前野健太だ。『car and freezer』は、同じ楽曲に全く異なる日本語詞と英語詞がついた2枚組となっていて、その日本語詞を担当したのが、前野なのである(英語詞は石橋が担当)。近年は前野の作品に石橋がプレイヤーとして参加するなど、共演の機会が増え、親交を深めていたこの二人。共にどこか映画的というか、ストーリー性を感じさせる歌詞を書くが、これまで常に自らが暮らす街について歌い、ドキュメンタリー的な色合いの強い前野の作風と、SFチックな石橋の作風では大きく異なる。もちろん、そのテイストの違いが作品に広がりを与えているわけだが、面白いのは二人が偶然にも同じ海の風景を歌詞の中に描いたということ。信頼を寄せ合う二人のコラボレーションだからこそ生まれた音楽の魔法を、ここに見たような気がする。

PROFILE

石橋英子(いしばし えいこ)
茂原市出身の音楽家。いくつかのバンドで活動後、映画音楽の制作をきっかけとして数年前よりソロとしての作品を作り始める。その後、4枚のソロアルバムをリリース。ピアノをメインとしながらドラム、フルート、ヴィブラフォン等も演奏するマルチ・プレイヤー。シンガー・ソングライターであり、セッション・プレイヤー、プロデューサーと、石橋英子の肩書きでジャンルやフィールドを越え、漂いながら活動中。最近では長谷川健一、前野健太、トンチ、オウガ・ユー・アスホールの作品に参加。またソロライブと共に、バンド「石橋英子withもう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子)」としても活発にライブを行う。今秋、キャリア初となるピアノソロアルバムをリリース予定。
石橋英子 | Eiko Ishibashi


前野健太(まえの けんた)
1979年埼玉県入間市出身。シンガーソングライター。2007年に自ら立ち上げたレーベル“romance records”より『ロマンスカー』をリリースし、デビュー。2009年にライブドキュメント映画『ライブテープ』、2011年に『トーキョードリフター』(松江哲明監督)に主演として出演。2011年末第14回みうらじゅん賞を受賞。2013年にはプロデューサーにジム・オルークを迎え二枚のフルアルバム『オレらは肉の歩く朝』『ハッピーランチ』を発表。
前野健太 | オフィシャルサイト | maenokenta.com

やっぱり曲に対する愛情がなければ、演奏はできないんです。いろんな楽器を弾いたり、いろんなアーティストと共演するから、器用に見えるかもしれないけど、ホントは不器用。(石橋)

―お二人が初めて作品で共演されたのは、前野さんの『トーキョドリフター』に収録されている“ファックミー”のデュエットですよね?

石橋:そうですね。その前にライブで一緒に歌わせていただいたことがあって、その流れで参加させてもらいました。セルジュ・ケンタブールとジェーン・イシバーキンのイメージで(笑)。

―そういうコンセプトだったんですか(笑)。それをきっかけに石橋さんが前野さんの作品にプレイヤーとして参加したり、今回は前野さんが石橋さんの作品に作詞家として参加するなど、ホントにいろいろな形で共演されていますよね。

前野:石橋さんのピアノは強いんです。例えば、僕の“オレらは肉の歩く朝”の冒頭のピアノを聴くと、そのときのレコーディング風景や、夏の景色がよみがえってくるんです。だからといって、「食うか食われるか」という感じにはならず、ただ記憶を呼び覚ましてくれる独特の力がある。ドラムを演奏してくれるときも、僕の欲しいところに全部入ってくるから、めちゃめちゃ気持ちよくて……なんでなんでもできちゃうんだろう?

手前:前野健太
手前:前野健太

石橋:愛ですよ、愛。

前野:愛、いただきました! 今日はもう終わってもいいですね(笑)。

石橋:(笑)。今ちょっと冗談っぽく言いましたけど、あんまり冗談でもなくて、やっぱり曲に対する愛情がなければ、演奏はできないんです。いろんな楽器を弾いたり、いろんなアーティストと共演するから、器用に見えるかもしれないけど、ホントは不器用ですよ。

前野:ライブ映像を見返すと、石橋さんの表情がすごくいいんですよ。なんかね……確かに、サラッとこなしてる感じじゃなくて、子どもが好奇心を持って、なにかに集中してるときの顔っていうかね。でもその一方で、すごく上品でもあるんですよ。



前野健太のライブに、石橋英子が「ソープランダーズ」のメンバーとして参加

石橋:そうかなあ?

前野:まあ下ネタはすごいですけど(笑)、上品ですよ。というか、気品高いですね。作品の話に入っちゃいますけど、例えば“私のリトルプリンセス”は、曲から気品を感じたので、歌詞では「プリンセス」というテーマに切り込んでみたくなったんです。石橋さんは、普通にしてると気品が出ちゃうから、下ネタでバランスを取ってるんでしょうね。

石橋:よく言っていただいて……。それ、今度から使います(笑)。

石橋英子
石橋英子

―(笑)。では、石橋さんから見た、前野さんの魅力は?

石橋:レコーディングをするときに、いつもデモと一緒に歌詞をいただくんですけど、必ず驚きがありますね。前野さんと歌詞と曲の関係性というのは、私には絶対に持つことのできない関係性なんですよ。言葉にするのは難しいけれど、強いて言うなら、日常に対する目線が決して高いところにあるわけじゃなく、低空飛行してるのに、ある時点で次元がグニャッと曲がって、別の空気が立ち上ってくるんです。それは前野さんじゃないと書けない歌詞だと思うし、そういう「歌の佇まい」には、一人のファンとして惹かれますね。


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