Financial Times

社説:ナイジェリアの消えた大金を探せ

2014.03.12(水)  Financial Times

(2014年3月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ナイジェリア中央銀行総裁の職務を停止されたラミド・サヌシ氏の調査結果が本当に正確だったとすれば、人類史上最大級の強奪が1億7000万のナイジェリア国民の鼻先で起きていたことになる。

 ナイジェリアの国内総生産(GDP)の約5%に相当する大金が国営石油会社から抜き取られたとされる。消えたお金は、ナイジェリア政府が原油高によって享受したはずの棚ボタ式の収入に匹敵し、政府は通常、歳入の70%を石油収入に依存している。2012年1月から2013年7月までの19カ月間で最大200億ドルの石油収入が行方不明となっている。

すり替えられた議論

 このカネがどこに行ったのかという謎は、うやむやにされたままだ。莫大な国家歳入が漏洩しているように見える多くの穴を塞ぐための手段も一切講じられていない。さらに、疑惑の重大さとサヌシ氏が疑惑を裏付けた詳細な証拠を考えると驚くべきことに、グッドラック・ジョナサン大統領率いる政権のメンバーたちは議論のすり替えに成功している。

 一部のナイジェリアメディアに後押しされ、議論の焦点は中央銀行総裁としてのサヌシ氏の実績に移り、轟々たる非難が浴びせられている。中には憂慮すべきほど宗教的、民族的な性格を帯びた非難もあり、些細なことから正気とは思えないようなものまである。

 サヌシ氏の中央銀行総裁としての功績は、世界中の多くの中銀総裁が抱く高い評価に反映されている。2月に職務を停止されるまで同氏が維持した金融引き締め策は、他分野の失政がもたらしたダメージを抑えた。サヌシ氏は通貨の価値を守り、インフレ率を1ケタ台まで引き下げ、その過程で長年苦悩してきたナイジェリアの貧困層を腐敗したエリート層の行き過ぎから守った。

 同時に、サヌシ氏が中銀総裁を務めた5年間に実現した安定は、外国人投資家の信頼を再構築するうえで極めて重要な役目を果たし、外国人はアフリカ最大の人口を擁するナイジェリアに再び殺到するようになった。

 同じくらい見事だったのは、2009年の危機が政財界の既得権者と巨額債務との関係を露呈させた後にサヌシ氏が銀行システムを再建した手法だ。その手荒なアプローチのせいで、同氏は一部の銀行経営者から嫌われた。だが、あの対策なくして、ナイジェリアの金融システムが今のような強い基盤に立っていたかどうかは疑わしい。

 サヌシ氏にも欠点はあるかもしれない。彼は臆せず意見を語り、時には、あからさまに政治的と思えるやり方で発言した。また、サヌシ氏が中央銀行の資金を使って推進した大義や、そうするために踏んだ手続きについては、同氏にも答えるべき疑問があるのかもしれない。

 しかし、大統領側がサヌシ氏を非難しているどんな「金…
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