STAP細胞:論文撤回なら研究成果が「白紙」に

毎日新聞 2014年03月11日 23時02分(最終更新 03月11日 23時40分)

STAP細胞研究を巡る経緯
STAP細胞研究を巡る経緯

 ◇論文撤回には共著者全員の同意必要

 新たな万能細胞「STAP(スタップ)細胞(刺激惹起<じゃっき>性多能性獲得細胞)」の論文2本が撤回される可能性が出てきた。論文発表直後から次々と浮上した疑惑に対して後手に回った理化学研究所の対応に、科学界からも批判の声が高まっている。事態が深刻化した背景で何が起きていたのか。【八田浩輔、須田桃子、根本毅】

 学術誌に載った論文に疑問が生じた場合、文科省のガイドラインでは、研究者が所属する研究機関が第三者を交えた委員会で調査することが定められている。論文が撤回されるのは、捏造(ねつぞう)や盗用、データの改ざんなどの不正が、調査を経て明らかになった場合が大部分だ。「単純ミス」と判断されれば、修正で終わる。

 論文撤回は、研究成果が「白紙」となることを意味する。撤回論文は、世界共通の学術データベースに「撤回した」という注釈と共に残り、科学者としての業績や所属機関の信頼性にも大きな傷が付く。一方、修正の場合、論文の成果は残るため、撤回ほど深刻ではないと受け止められる。

 理研は11日、「論文の取り下げを視野に検討している」との見解を示したが、論文撤回には原則として共著者全員の同意が必要だ。STAP細胞の論文では、著者の一人、米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授が10日、米紙の取材に「論文を撤回すべき理由は見当たらない」との見解を示し、同意を取りまとめられるかは不透明だ。

 過去にネイチャー姉妹誌に掲載された医学論文について、発表直後に疑問が出されたが、調査結果が出るまで2年半かかり、さらに共著者全員に撤回の同意を得るのに1年近くを要した例もある。

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