アップル新本社社屋を設計、ノーマン・フォスター氏が語る円形ビルの理由
宇宙船の秘密が少しずつ明らかに。
アップルの新本社社屋は、巨大な円形宇宙船みたいなものになる予定です。カリフォルニア州クパティーノの176エーカー(約72万平方メートル≒東京ディズニーランドの1.4倍)の敷地に、約300万平方フィート(約28万平方メートル≒東京ドーム約6個分)の巨大円形ビルが建ち、そこには約1万2000人の従業員が通うことになります。
その設計を手がける建築家のノーマン・フォスター氏がArchitectural Recordからのインタビューに応じました。アップル新本社の巨大さや変わった形の理由を説明し、さらにいくつかのディテールについても明かしています。
それは大学みたいな場所
1万2000人もの人が通うってことは大学みたいなものだ、とフォスター氏は言います。たしかにスティーブ・ジョブズはスタンフォード大学のメイン・クワッドという建物にインスピレーションを受けたそうで、新本社社屋の規模感はそこから来ています。
ただ、普通の大学とか大きめの企業のキャンパスでは複数棟の建物が並ぶのに対し、アップル新本社は(オフィススペースという意味では)大きな建物がひとつドーンと建つってとこがポイントです。
ロンドンの広場もイメージ
フォスター氏はさらなるアイデアソースとしてロンドンの広場を参考にしました。複数階層の建物が公園を囲んでいるイメージです。「これらをよく検討した結果、中央にプライベートな空間を閉じ込めた円形の建物というアイデアに昇華していったのです。中央の公園スペースは、かつてのカリフォルニアの景観を再現するものです」とフォスター氏。ただし広大な敷地内でこの建物がカバーするのはたった13パーセントほどで、ロンドンの街中のような密度はありません。
さらに2棟の建物
オフィススペースとしては円形の建物のみですが、その他に従業員用ジムとプレゼンテーション用の建物もあります。ジムはこのキャンパス以外のクパティーノ周辺エリアに勤務するアップル社員(合計2万人)も使えるようになるんだとか。また、プレゼンテーション用の建物ができることで、アップルは製品発表イベントのたびにサンフランシスコの会場を借りる必要がなくなりますね。そしてアップルの発表のときは、世界中のジャーナリストがここクパティーノに集結するんです。
円形なので小さく感じる
複数の建物ではなく円形の建物ひとつにすることで、移動が楽に感じられるとフォスター氏は考えています。「極端なケースでは距離が遠くなるかもしれないけれど、従来型のキャンパスに比べればそうでもないはず」と言ってます。
たしかに一般的な四角い建物の間を動くより、円弧の上を移動する方が近い…かな? ただ、どこまで行っても白いカーブが続いてて、どこに何があるかがわかりにくいかもしれませんね。
コラボレーションを促進
フォスター氏いわく、このビルでは「近接性・隣接性を非常に注意深く考えている」とのことです。「この建物にはきわめて多様なスキルが共存することになります。ソフトウェアプログラマーからデザイナー、マーケティング、小売担当などです」
といっても、多くの会社にも同様にいろんな人がいて、たいていは一般的な高層ビルで仕事をこなしてます。でもアップルの新キャンパスでは、「縦に移動するだけでなく横移動も可能 」ってことが重要だそうです。部門ごとに分断されず、物理的に「横のつながり」ができやすいってことでしょうか?
車が消える
「窓の外に、駐車した車がえんえんと並ぶことはありません」とフォスター氏は言います。1万2000人の社員の多くは車で通勤してきますが、その車は地下駐車場に停めることになります。「車は視界から消え、舗装道路は緑に、駐車場はジョギングと自転車用道路に置き換わります」ってことは、アップル本社は自転車対応オフィスになり、1000台以上の自転車が駐輪可能ってことみたいですね。
4階分の壁も消える
さらにフォスター氏は、ほとんど信じられないような建物の機能にも触れています。それは、ビル内のレストランが、公園風スペースに対し完全にオープンになるというもの。「4階分のガラスの壁がありますが、これが横に動いて開き、景観に対しオープンにすることが可能です」
これまでもアップルストアでのガラスの使い方は素敵でしたが、新キャンパスのガラスもすごそうです。完成披露が楽しみですね!
Alissa Walker(原文/miho)
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- ザハ・ハディド 最新プロジェクト(ZAHA HADID RECENT PROJECT)
- ZAHA HADID,二川 幸夫|エーディーエーエディタトーキョー