19歳という若さながら、ソチ五輪の男子フィギュアスケートで金メダルを獲得した羽生結弦選手。高いプレッシャーの中で実力を発揮できたのは彼の「レジリエンス」が高かったからと言えるでしょう。羽生選手からビジネスリーダーが何を学ぶべきかを解説します。
ソチ五輪で金メダルの偉業を成し遂げた羽生選手は、その抜きん出た実力を世界に見せつけました。しかし、彼は環境に恵まれていたとは言えず、五輪を迎えるまでに多くの逆境に直面しています。
羽生選手は3年前、仙台市内で練習中に東日本大震災に被災。リンクの氷や壁が崩れて、スケート靴を履いたまま避難。自宅も倒壊し、家族四人で避難所生活を送ったと言います。練習場を失った彼は半年間、全国を転々として復興支援アイスショーなどに参加し、空いた時間に練習するという過酷な日々が続きました。
体も強い方ではなく、2歳頃からぜんそくに悩まされ、薬を手放せませんでした。リンクの冷気に長く触れると発作につながるため、練習時間も限られ、体力的にハンデを持つことになりました。
しかし、彼は困難を乗り越えて金メダルを獲得。なぜ、それが可能だったのか。逆境下で彼のレジリエンスは鍛えられ、本番で結果を出せる精神力を持つに至ったからだと、私は考えます。
レジリエンス・マッスルを構成する4つの力
レジリエンスとは生態系の「復元力」を表す言葉ですが、近年は解釈が拡がり、欧米企業では「逆境から迅速に回復する力」として注目を集め、リーダー人材の育成分野で応用されています。
レジリエンスの育成は、2つのステップがあります。まずは「失敗」「不支持」「批判」などの3つの怖れなどから来るネガティブ感情の悪循環から脱してマイナスをゼロに戻す段階。その次がゼロからプラスへと変える「再起」のステップです。
ステップ1における大事な点は、ネガティブ感情の悪循環から抜け出すこと。逆境体験やそれで受けるストレス自体が問題なのではなく、ネガティブ感情の繰り返しから抜け出せないこと。それを断ち切るには「歪んだ思い込み」を認知し、払拭することが重要です。
ステップ2の再起のステージでは「レジリエンス・マッスル」と呼ばれる心理的な筋肉を鍛える技術があります。具体的には「自己効力感」「ソーシャル・サポート」「ストレングス(強み)」「感謝などのポジティブ感情」などの強化が挙げられます。
レジリエンス・マッスルを鍛え続けることで、逆境体験を俯瞰して振り返ることができ、精神的な痛みを伴う経験から意味を見い出し、自己教訓化できることで、同じ問題が再び起きても落ち込むことなく問題解決できるようになります。
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