市民を守るのが警察の務めだ。救いを求める切実な声には、とりわけ注意深く耳を傾けねばならない。
ところが尼崎の連続変死事件では、被害者への暴行などを見かねた通報や相談がたびたびあったのに、警察が動かなかったと指摘されている。
兵庫県警はきのう、問題点の検証結果を公表した。「不十分な対応があった」として、被害者の家族や友人らには既に事情説明と謝罪を行った。
この事件では、勾留中に自殺した角田(すみだ)美代子元被告を中心に、親族ぐるみで被害者らに虐待を加え、何人もが監禁や暴行などで亡くなったとされる。
県警には15年前から一昨年まで、10の事案について相談や通報などが寄せられていた。うち6事案への対応は、県警も「不適切で不十分だった」と認めた。
尼崎市内で遺体で見つかった仲島茉莉子(まりこ)さんが一時、集団生活から逃れ、連れ戻されたことがある。その際、友人が明石署に助けを求めたが取り合ってもらえなかった。そのケースも含まれる。
警察がもっと早く捜査に乗り出していれば助けられた人がいたかもしれない。厳しく批判されるのは当然だ。
県警は「今後は犯罪を見逃さないよう、指導を徹底する」としている。警察が門前払いをしては、市民は身を守るすべがない。明白な端緒がなくても、不審な点は掘り下げて調べる。その姿勢が信頼回復の道だと肝に銘じてほしい。
ただ、県警は落ち度をはっきり認めたわけではない。被害者の多くは角田元被告らと親族関係にあり、寄せられた相談の多くは「家族内のトラブル」とも受け取れる内容だったという。
角田元被告らの暴力や暴言などにさらされていた被害者が、自らの状況をはっきり伝えなかったことも、本格的な捜査の着手が遅れた原因に挙げている。
事件性を察知するのが「困難」だったと結論づけた事例があり、関係者の処分は見送った。
それでも、個々の相談内容を関連づける視点が欠けていたのは否めない。
一連の事件では、これまで6人の遺体が見つかり、10人が起訴されている。長期間にわたって多くの被害者を出した犯罪をなぜ、見抜けなかったのか。同じように対応が遅れた香川県警も関係者に頭を下げたが、失われた命は戻らない。
ストーカー犯罪でも、警察の対応の遅れが大きな問題になった。同様の事態を繰り返さないためにも、反省を警察組織全体に浸透させる必要がある。
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