新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文について、理化学研究所が撤回を検討していることが10日、関係者の話でわかった。STAP細胞の様々な細胞に変化する能力を示す画像の一部が、別の論文の画像と酷似している点などが指摘されたため。数日中に結論を出し、公表する。共著者の若山照彦・山梨大教授は「研究の根幹が揺らぎ、確信が持てない」と話した。一方、理研は「今のところ、研究の根幹は揺るがない」としている。

 論文が撤回されれば、研究成果はいったん「白紙」となる。理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の広報担当者は同日、「決定には著者全員の合意が必要」とした。著者は2本の論文で14人になる。

 STAP細胞は1月、理研の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダーと米ハーバード大の研究者らのチームが英科学誌ネイチャーに発表。「図表や文章などに不適切な点がある」と指摘する声が専門家から上がった。

 3月9日、ネイチャー論文に掲載された画像のうち4枚が、小保方さんが2011年に書いた博士論文の画像と酷似しているとネット上で指摘された。ネイチャーではSTAP細胞が様々な細胞に変化したことを示す画像だが、博士論文の画像は「骨髄の細胞由来」として使われていた。理研幹部は「間違った画像が使われたなら、論文内容に与える影響を考慮して対応を検討する」とする。

 若山さんは10日、ネイチャーの画像がSTAP細胞由来ではなかったとすると「様々な細胞に変化したという証拠がないことになる。研究の根幹が揺らいでいるのと同じだ」と指摘。理研の共著者らに撤回を呼びかけたことを明らかにした。STAP細胞を第三者の研究機関に提供し、分析を依頼するという。一方、別の共著者は「STAP細胞の作製そのものは真実だ」と主張する。

 若山さんは「研究成果を信じたい気持ちはある。論文を取り下げて研究をやり直し、誰からも文句の出ない形で論文を出したい」と話す。

 理研本部は現在、外部委員も含めて論文問題を調査している。だが、新たな問題が浮上したため、近く予定されている結果発表は延びる可能性もある。

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 〈STAP細胞〉 理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらのチームが1月末に英科学誌ネイチャーで発表した新しい万能細胞。若いマウスから採ったリンパ球を弱酸性の液体で刺激するだけで作製でき、どんな細胞にも変化(分化)するとされた。刺激で万能細胞に変わる研究成果は生命科学の常識を覆し、再生医療への応用の期待が高まった。

 STAPは「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(Stimulus―Triggered Acquisition of Pluripotency)」の略称。万能細胞はほかにiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚〈はい〉)性幹細胞)がある。