2013.8.2(第229号)
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1.宋文洲からのご案内
2.上杉隆さん新連載・その1(論長論短 No.196)
3.読者レター(前回の論長論短を受けて)
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■1.宋文洲からのご案内
宋メールを読んで下さる皆さま、宋文洲です。
いつもいい加減な宋メールを読んでくださって心から感謝しております。
いま、私はニューヨークに向かう機内です。こうやって飛んでいる飛行機からメール送信できるとは本当に便利な時代です。今回は全くの私的旅行でニューヨーク、ワシントン、ボストンを回って最後にサマースクールにいる子供達を迎えに行きます。
旅行中だから書く時間がない訳ではありませんが、今回の「論長論短」は上杉隆さんの文章を使わせていただきます。自分以外の方の文章をゲスト寄稿ではなく、「論長論短」に使わせていただくのは初めてです。
上杉さんは独特な視点で日本の政治、経済、世論を捉える方です。
組織に所属せず、個人の責任で取材と報道を行う彼の姿勢にジャーナリストの原点を感じます。世間の「願望」と「空気」に個人として敢然に背向く彼の勇気は真に尊敬に値します。どうぞしばし彼の文章をお楽しみください。
さて、前回の「宋メール」はインターナショナルスクールの話を取り上げました。
(前回の「宋メール」はこちら)
某区役所の教育係の話は直に言われて怒った友人から聞きました。
北京日本人学校の話は妻が日本人奥さんのお友達から聞きました。
どれも聞いた話なので区役所や日本人学校に確認しておりません。
二つの読者の反応はほぼ正反対のご意見ですので上杉さんの文章の後に掲載しておきます。実名を避けましたが、他の内容はそのままです。
お時間のある方はどうぞお読みください。
では、皆さんも夏休みをちゃんと取ってくださいね。。
(終わり)
宋のTwitterはこちら↓
http://twitter.com/sohbunshu
■2.上杉隆さん新連載・その1(論長論短 No.196)
上杉隆
金曜日(7月26日)、私は、首都高速に乗って横浜方面に向けて、愛車を駆っていた。まだ早朝だというのに気温はぐんぐん上がっている。
BGMのサザンオールスターズの似合う夏空の下、目指すはかつて東京オリンピックでサッカー会場として使われた「ニッパツ三ツ沢球技場」(横浜市)だ。
今回、三ツ沢球技場へと向かったのは、サッカー観戦のためではない。
観戦ではないが、予定がサッカーであることには違いない。
驚くべきことに、私が代表を務めるメディアカンパニー「NOBORDER」が、「adidas CUP 2013」(第37回日本クラブユースサッカー選手権大会U-18)の決勝など3試合を生中継することが決まり、その下見にやって来たというわけだ。
球技場に着くと、すでに多くの技術スタッフや広報関係者などが参集していた。
30℃はゆうに超えている猛暑の中、スタジアムの客席を上へ下へと歩き回り、打ち合わせが始まる。かつて議員秘書時代に何度も経験した選挙運動のような厳しさだ。
若手サッカー選手の登竜門とも言うべきアディダスカップの生中継を、業界的には新参者であるNOBORDER-SPORTSに委ねることになった理由はどこにあったのだろうか、そんなことを考えながら、炎天下のスタンドを汗だくで歩き回る。
NOBORDER-SPORTSの編集長である玉木正之さんと日本にも真のスポーツジャーナリズムメディアを作ろうと話したのが3年ほど前のことだった。
山陰に向かう飛行機の中で熱く語ったことが、この夏ようやく着地したのだ。
日本サッカー協会が実績のある大手メディアではなく、生まれたばかりのNOBORDERにトーナメントを託してくれたのは、たぶんに玉木さんの存在もあるに違いない。
7月半ば、玉木さんは川淵三郎キャプテンという日本サッカー界の重鎮をNOBORDERのスタジオに招き、誰も知らない日本サッカー秘話やアディダスカップの発祥そのものについて語った。その内容は、あの飛行機の中で玉木さんと私が話したことと不思議に符合することでもあった。
緊張感を失った日本のスポーツジャーナリズムに危機感を抱いているのは玉木さんや私だけではなかった。アスリート側の代表といえる川淵さん(元サッカー日本代表)も同様の思いを持っていのだ。
緊張感の欠如こそが日本のサッカー界の成長を妨げている、という確信だ。
「今だから言えるけど、日本代表はあの『ドーハ』で負けてよかったと思った。
あの負けが無ければ、今の(強い)日本代表はないと断言します」
(NOBORDER「U3W」での川淵氏のコメント)
1993年、Jリーグ発足の年であり、ワールドカップアジア予選の最終戦、日本代表はロスタイムで失点しW杯初出場を逃すという苦杯を味わった。
いわゆる「ドーハの悲劇」である。ところが、日本中が悲観に打ちひしがれるあの中、当事者のトップである川淵チェアマンだけが別次元の思いを抱いていたというのだから驚く。
NOBORDER-SPORTSにとって最初の大きなイベントとなるアディダスカップ。
その意義を語る川淵さんと玉木さんというサッカー界とスポーツジャーナリズム界の重鎮二人は、ともに厳しいコメントで有名だ。
二人とも遠慮のない表現でサッカーやスポーツ界を斬ってきた。だが、そこに横たわるのは取材対象への確かな尊敬の念とそして深い愛情である。その厳しさが緊張感をもたらし、サッカー(スポーツ)の成熟をもたらすことを誰よりも知っているのだろう。
さらにその二人に勝るとも劣らない二人の男が、新しいメディアカンパニーNOBORDERと、未来の日本サッカーを担うユースのために「アディダスカップ」の実況・解説を引き受けてくれるというのだ。
ひとりは玉木さんとも共著のあるサッカー界の「直言居士」金子達仁さん、そしてもう一人はサッカー殿堂入りを果たした、あの三菱ダイヤモンドサッカーの名解説者といえばサッカー少年ならば誰もが知っている金子勝彦さんだ。
サッカーを愛する者にとってはまさしく「奇跡」とも言えるコラボレーションが、タブーのないネット中継という初舞台によって豪華に花開こうとしているのだ。
すでに世界のスポーツ放送の現実は変化している。米国ではあるスポーツ中継の対テレビのネット視聴率がついに50%を超えた。長時間の生放送にも耐え、直接的な広告を打ちやすいことからスポンサーの受けもよく、さらにはアスリートたちにとっても映る機会が多くなり「売り込み」のチャンスの広がるネット中継を歓迎する声は大きくなるばかりだ。
メディアカンパニーNOBORDERとその部門であるNOBORDER-SPORTSはそのトレンドの先駆たらんと走りはじめたのだ。
「ドーハの悲劇」によって世界のサッカーの現実を知った日本サッカーはいままた、ファンの厳しい目が注がれるネット中継によって緊張感を保ち、さらに強くなるだろう。
その緊張感の必要性を知った4人の男たちによってNOBORDERの中継するアディダスカップは本日、スタートする。
http://no-border.asia/archives/12863
(終わり)
■3.読者レター(前回の論長論短を受けて)
その一
今回のメルマガも楽しく興味深く拝読いたしましたが、一点、気になる部分がありましたので、お知らせしたいと思いメールしています。
実は私は北京日本人学校と頻繁にコミュニケーションしています。
従って当校に関する記述は大変関心があります。
「北京の日本人学校は外国人を受け入れません。たまに日本国籍のハーフの子が入学を申請すると、正式の試験のほか、『カレーの具に何が入っているか』とかの日本人らしさがチェックされるそうです。」についてですが、正確に説明させてください。
確かに基本的に北京日本人学校は、日本人向けの学校ですが、今や約20%が日本人と外国人(主に中国人)のハーフです。授業は日本語だけで行われるため、日本語の読解力、少なくとも会話が出来ないと受け入れできません。
さて、「カレーの具」についてですが、学校にも確認しました。
“日本語の語彙を知るために 、絵カードを見せて「これは何?」と質問をします。
その絵カードの中にカレーライスもあります。お子様が「カレーライス」と答えられたら、「カレーの中には何が入っているのかな?」という質問をする場合があるのも事実です。しかし、この質問は日本文化云々ではなく、質問の意味が理解できているか否かを知るためのものです。「カレーの具は?」と聞かれて魚、なす、ウインナー、・・・等と答えても何の問題もありません。
要は、授業中に教師の指示を聞き取れることができるか、有事の際に教師の指示に従って動けるか、を見極めるために質問を行います。”ということだそうです。
余談ですが、また商社の方のお話、正確なニュアンスが分かりかねますが、「インターナショナルスクールに通うことは日本の法律に違反しています。」という発言はあり得ないそうです。本当にあったとしたら大問題のようです。
インターナショナルスクールは私学扱いになっているので、普通に選択できるはずです、と聞きました。
「夏休みだけ地元の学校に体験入学するような甘い発想を持たないでくださいね。」
というのはこれは良くあるケースだそうですが。
以上、一愛読者として、また日本人学校関係者としてお伝えします。
ご参考になれば幸いです。
その二
「北京のアルバイト教師」です。
「論長論短 No.195 教育の多様性は不平等に基づく教育の多様性は不平等に基づく」
を拝読しました。
現在、北京で「日本語教師」をしている小学校6年生の娘を持つ父親です。
娘は、現在北京のインターナショナル校(全寮制です)に在学しています。
参議院選挙では自公が大勝して、アベノミクスは多くの国民から支持されているようです。そのアベノミクスの政策の一つに国際学校(=インターナショナル・スクール)を設置する計画があるそうですが、その国際学校に日本人の子供を通学させることができるのでしょうか?
インターナショナル・スクールに通学させることは、日本の教育制度(教育基本法)では「違法」であると聞かされました。また海外で生まれて日本語を話せないまま帰国する子供は、日本の公立小学校には入学できませんでした。さらに北京日本人
学校では二重国籍のままでは入学できないとさえ言われました。安倍総理のこの計画の実現を機に、こうした「教育の機会の不平等」が解決されることを願う親の一人です。
私の娘は、日本の小学校に編入できなかったため、止むを得ず北京のインターナショナル校(全寮制です)に在学しています。
また日本の公立中学にも進学できません。しかし今では、学業成績だけでなく「誇らしい」娘に成長する姿を観て後悔していません。将来は日本の大学に進学すると言って第二外国語では日本語を学んでいます。
中国の教育には長所や欠点はありますが、初等教育の段階では日本で報道されているような「反日教育」は行われていません。小中学校9年間の教科書からは、中国の史誌や最近の宇宙開発など中国の科学史や数学、英語などに力を入れている様子を知ることができます。
また毎週の宿題の多さにも驚かされますが、毎週、毎月行うテストや学期末の期末テスト、進級テストなどの試験づくめに加え、毎年北京市が主催する「コンテスト」では、作文(当然中国語です)の朗読、数学の試験、英語スピーチなどを競わせます。これらのコンテストや試験の成績は学内に掲示発表され、特に優秀な生徒は「表彰」されます。さらに保護者には掲示内容が携帯メールで配信されてきます。これでは日本の小学生よりも過酷な競争に置かれているといえるかもしれません。
さらに、音楽やスポーツなどの能力に応じた英才教育や優秀児童の「飛び級」の選抜ではないでしょうか。日本的に言えば「大変不平等」なシステムです。
また、北京駐在の邦人が先日集った席で、今の日本と中国を比べてどちらが資本主義だろうか、という話題が出ました。
結論は、経済や社会など多くの点で、『現在の中国の方がより「市場経済」的ではないだろうか、特に「自民党長期政権」時代に非常に似ているようだ。ところが今の日本は行政或いは経済・社会活動など多くの面で「社会主義」的になっているように見える。』ということです。
その一つに『日本には「日本的な平等と不平等」がいつの間にか育ってしまって、真の意味での「競争」がなくなっているのではないだろうか』ということです。
「競争」社会は、ある意味で「不平等な」社会ではないでしょうか。競争の『スタートラインに立つ機会』は平等(この場合「公平」と言うべきかもしれません)に与えられていても、スタートの「号砲」とともに競争が始まるわけですから、そこには「平等」は存在しえないということです。
教育も、教育を受ける機会は公平に与えられるべきですが、「入学」というスタートを切った時点で競争が始まっているわけです。学校もより優秀な教師と生徒を集めて「より優秀な卒業生」を送り出すという「競争」をしているわけですから、そこには「熾烈な競争原理」があるはずだということです。
そうした目で中国と日本の学校を比べてみると、中国の学校(義務教育校を含めて)や生徒の方がより熾烈な競争をしています。アベノミクスでは教育にも市場原理が導入されるのでしょうが、「お受験」だけの「競争」では、「国際競争」に立ち向かえる人材は育ちません。
宋さんがおっしゃるように「競争」(=市場原理)に教育を委ねることができれば、教育に多様性と柔軟性を実現できるだろうと思います。
現在北京の大学で日本語会話を指導しています。(65歳を過ぎていることと就業ビザではないため教員ではありません)この秋(新学期)から日本語を学ぶ学生が3割近く増えました。北京全体でも4割弱もの日本語を学ぶ学生が増えているようです。対日の状況は政治と民間では温度差が大きいようす。
(終わり)
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