(2014年3月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
欧州連合(EU)が対応に苦慮する状況を考え出さねばならないとしたら、ソブリン債務危機とロシアの軍事侵攻の2つが明白な候補だったろう。そのような状況が相次いで現実と化したことは、運が悪かったのかもしれない。だが、運の悪さは、近年のユーロ圏の債務ドラマや、ウクライナを巡る現在のロシアとの外交的対立が露呈させたEUの設計上の根本的欠陥とは何の関係もない。
どちらのケースも同じ中心的な欠陥を浮き彫りにした。すなわち、加盟28カ国の利害が一致していないということだ。
華々しい名前を冠した合意を考え出すことでこの欠陥を覆い隠そうとすることに多大な労力がつぎ込まれている。だが、根底にある現実は誰の目にもはっきりしている。銀行破綻処理制度に関する昨年12月の合意は極めて弱く、これでは中規模のカジノも処理できない。
そして今、欧州理事会がロシアに対する「制裁」について語る時、何とかまとめられるのはせいぜい、ビザ制限撤廃に関する協議を凍結することだけだ。ひどい有様である。
天然ガスとロシアマネーへの依存
ロシア問題を巡ってEUが割れるのは、加盟国がロシアの天然ガスと資金に依存するようになったからだ。ロシアはドイツのガス輸入の40%を供給している。ドイツの製造業の輸出のほぼ5%がロシア向けだ。違法資金も混じるロシアマネーは、ロンドンとキプロスの金融センターと不動産市場に流れ込んでいる。
ドイツ人は、自国とロシアの関係を戦略的パートナーシップと呼ぶ。ドイツのゲアハルト・シュレーダー前首相はロシアのウラジーミル・プーチン大統領のことを「非の打ちどころのない民主主義者」と呼んだ。シュレーダー前首相は退任後すぐ、ロシア主導のバルト海パイプラインプロジェクトの仕事を引き受けている。
アンゲラ・メルケル首相は前任者ほどプーチン大統領に夢中ではない。だが、彼女もまた、ここに大きな国益がかかっていることを知っている。筆者は、先週合意された惨めなジェスチャー以上の厳しい制裁をメルケル首相が受け入れることを想像できない。また、英国政府が国内にあるロシア人の金融資産を差し押さえることも想像できない。