STAP細胞:発表直後から疑問点…論文取り下げ提案
毎日新聞 2014年03月10日 20時47分(最終更新 03月10日 21時07分)
刺激を与えただけで細胞が万能性を持つという「STAP細胞(刺激惹起<じゃっき>性多能性獲得細胞)」の発表は、生物学の常識を覆す成果と位置付けられ、さらに著者の小保方晴子・理化学研究所研究ユニットリーダーが30歳の女性だったこともあり注目を集めた。一方、発表直後からネット上で論文に使われた画像に不自然な点があることが指摘された。
「自分がやった実験が何だったのか、分からなくなった」。10日、毎日新聞の取材に、論文の著者の一人、若山照彦・山梨大教授は語った。若山教授は、STAP細胞の万能性を証明する重要な実験を分担した研究者だ。
ネットで指摘されたのは、STAP細胞の作製を報告した1月30日付の英科学誌ネイチャーの論文で、▽STAP細胞から作ったとされるマウスの胎盤の画像が他の条件で作ったものと酷似している▽遺伝子の働きを調べた画像に別の画像から切り張りされたような跡がある▽論文の補足部分がドイツの研究チームが2005年に発表した論文と10行以上ほぼ同一−−など。
さらに今月9日、小保方さんの博士論文に載ったSTAP細胞とは無関係な画像が、ネイチャー論文にも使われていた疑惑が浮上。若山教授は10日、「12年12月に小保方さんがセミナーで発表した際も、博士論文の画像をSTAP細胞由来のものとして使っていたことに気付いた。うわさに悩まされることなく、やり直すのが大事だと考えた」と語った。
一方、共著者の丹羽仁史・理研プロジェクトリーダーは「論文の表現上のミスは理研の調査メンバーとネイチャー誌に報告済みだ。根幹部分が真実であることは疑っていない」と説明している。【須田桃子、西川拓】