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八重山日報編集長が語る「真実を伝える国境の島のメディアと沖縄の反日マスコミ」

八重山日報編集長 仲新城誠

尖閣諸島(沖縄県石垣市)の海域では、中国公船「海警」が年末年始も休みなく「パトロール」と称した航行を続けている。

そうした中、安倍晋三首相が昨年12月26日、現職首相として7年ぶりに靖国神社を参拝した。私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、沖縄戦で陸軍特攻の第一号として戦死した

石垣島出身の特攻隊長、伊舍堂用久(いしゃどう・ようきゅう)中佐のことだった。

彼の戦死から68年の歳月を経た昨年8月15日、終戦記念日に、石垣島では顕彰碑が建立された。石垣島では現在、特攻隊の再評価が進んでいる。

靖国神社には伊舍堂中佐も祀られていて、私は昨年、遊就館を訪れた際、中佐の遺影が展示されているのを見つけた。東京の真ん中で、郷土の先人に出会ったような思いがして胸が高鳴った。

伊舍堂中佐については最後にもう少し詳しく紹介するが、中佐たちが祀られている場所である以上、首相の靖国参拝は、石垣島に住む私にとっても至極当たり前のことである。

しかし周知のように、中国、韓国は猛反発。特に中国の国営メディアは靖国神社について「A級戦犯と侵略者が祀られているところ」と解説しており、参拝を「拝鬼」と表現している。読んで字のごとく、鬼を拝むという意味だ。中国語に詳しくなくても「鬼」が侮蔑的表現であることは分かる。中国政府の批判の対象はA級戦犯だけなのかも知れないが、他国の神社参拝を「鬼を拝む」と一般化して表現する感覚に異常さを感じる。石垣島の住民としても、郷土の先人を侮辱されたような思いがして不愉快だ。

中国政府はさらに、首相の靖国参拝を「戦後の国際秩序に対する挑戦だ」と述べた。この言葉には聞き覚えがある。日本が尖閣諸島の領有権を主張していることについて、中国政府は全く同じコメントを出しているのだ。

つまり中国は、首相の靖国参拝と、尖閣に対する日本の領有権主張を「戦後の国際秩序に対する挑戦」という言葉でひとくくりにし、同じ土俵で難詰しているわけである。

私たち石垣島の住民は、尖閣がまぎれもなく日本固有の領土であり、石垣市の行政区域であることを当然の知識として知っている。だから、参拝を批判する中国政府の物言いがいかにうさん臭いか、本能的に理解できる。つまり現状で中国の参拝批判に迎合することは、尖閣を強奪しようとする中国の姿勢に迎合することにほかならない。

私は「八重山日報」のコラム(月日付)で「中国政府は年の瀬にも公船を尖閣海域に派遣し、領海侵犯させている。こうした無法国家の指図を受ける筋合いはない。首相が堂々と参拝することで『領土を守る』という国家の決意も示される」と書いた。

つまり石垣島の住民にとっては「郷土の先人が祀られている」「尖閣問題との絡みで、中国に一歩も退くべきではない」という二つの理由から、首相の靖国参拝は断固として支持されるべきだと考える。

これに対し、県紙の「沖縄タイムス」は「外交に深刻なダメージ」と題した社説(12月29日付)で「中国とは尖閣諸島の領有権をめぐって一触即発の緊張状態が続ている(。中略)中国との関係がさらに悪化し、関係改善が遠のいても構わない。首相はそのように考えているのではないか―もしそうだとすれば、この政権はほんとに危ない」と参拝に反対。

「琉球新報」も「政権の暴走を危ぶむ偏狭な歴史観共有できず」という社説(12月27日付)で、ゼロ歳から高齢者までの県民が、戦闘参加者という身分で靖国神社に祀られていると指摘し「(靖国神社は)ゼロ歳児が『英霊』としてまつられる『ねつ造された』空間でもある。沖縄戦の記憶をなし崩しにし、アジアに非難されるような偏狭な歴史観は共有できない」と述べるなど、沖縄のマスコミは参拝への批判一色だった。

時期的には異論があるかも知れないが、尖閣を守るためにこそ、断固とした参拝が必要、というのが私の考えだ。一方、県紙の論調は完全に中国側に立っている。尖閣を守るという戦略的思考はどこにもない。どの新聞を開いても、こうした社説しか読むことができない沖縄県民こそ、いい面の皮と言えよう。

尖閣をめぐっては昨年11月23日、中国が新たな挑発行為に出た。尖閣を含む東シナ海での一方的な防空識別圏設定である。全国ニュースでは、防空識別圏が「尖閣を含む東シナ海海上」ということだけ盛んに取り上げられるが、八重山(石垣市、竹富町、与那国町)住民としては、問題はそれだけではない。私が地図上で物差しを使って計ってみたところ、防空識別圏は与那国島から約30キロ、石垣島から約60キロの地点まで迫っているのだ。尖閣は中国領という前提に立って線引きするから、こういう強引なことになるのである。

尖閣周辺はともかく、石垣島、与那国島周辺海域では地元漁船が普通に漁をしている。生活圏の一部なのだ。民間機が航行することもあるだろうし、海難事故があれば海上保安庁の航空機も出動する。

しかし中国の言い分に従えば、これらはすべて中国軍機のスクランブル(緊急発進)の対象になる。住民にとっては、生命・財産に対するとんでもない脅威である。

石垣市の中山義隆市長は「完全な挑発行為だ。断じて許せない」と憤った。石垣市、竹富町、与那国町の議会は昨年12月、相次いで中国政府に対する抗議決議を全会一致で可決した。

こうした地元の怒りを、国内外へ積極的にPRすることも、中国の無法に対する「抑止力」になるはずだ。八重山日報は防空識別圏設定直後から特集を組むなどして報道活動に努めたが、同じ地元紙の八重山毎日新聞も含め、ほかにこうした論陣を張った新聞は沖縄では皆無だった。

中国が防空識別圏を設定した翌日(11月24日付)の各紙の社説を見ると、琉球新報が米軍普天間飛行場移設問題で、沖縄タイムスが教科書問題で、それぞれ日本政府を批判しており、中国批判はどこにも見当たらない。

両紙が防空識別圏についてようやく論じたのは、琉球新報が11月30日付、沖縄タイムスが12月3日付の社説だった。防空識別圏設定から1週間以上が経過している。沖縄が直接関わっている重要な問題なのに、この腰の重さはどうしたことだろう。

琉球新報は「到底容認できない」と批判した上で「日本政府はその挑発に乗らず、国際法にのっとり冷静に対応してほしい」「外交問題は平和的解決しかあり得ないことを確認するため速やかに(日中)首脳会談を実施するべきだ」と求めた。

沖縄タイムスも中国に防空識別圏の撤回を要求しているが、一方で安倍政権の国家安全保障会議(日本版NSC)創設や島しょ防衛などを盛り込んだ新安防衛大綱策定の動きを懸念し「軍備に依存した安全保障は軍事的なエスカレートと不信を招くだけだ。(中略)日中首脳会談実現の糸口を探り、外交による関係改善を目指すべきだ」と琉球新報と同様の論調に終始している。

日中首脳会談が実現できない最大の理由は中国側にある。尖閣海域を見ればいい。中国公船「海警」が休みなく「パトロール」を続け、日本側に威圧を続けている。こうした露骨な実力行使がやまない限り、首脳同士が会って笑顔で握手など、できるはずがない。これらの社説は机上の空論だろう。

両紙にとって防空識別圏などよりずっと重大な問題は、普天間飛行場移設問題だった。

この問題を簡単に紹介すると、人口密集地の沖縄県宜野湾市にあり「世界一危険な基地」といわれる米軍普天間飛行場を、名護市辺野古の埋立地に移設する計画をめぐる騒動である。県紙は「県外移設」を強硬に主張し、辺野古移設に反対しているが、仲井真弘多知事は昨年12月27日、辺野古埋め立てを承認した。

すでに承認前から、両紙は自民党や知事批判のキャンペーンを連日のように掲載してきたが、承認翌日(12月28日)の琉球新報は1面に「即刻辞職し信を問え民意に背く歴史的汚点」と題した社説を掲載。「知事独り善がり県民『屈しない』」などという大見出しが並んだ。沖縄タイムスも「知事居直り強弁」「民意背信に怒号」などと知事糾弾の論調一色である。

沖縄タイムスは2ページにわたり、50人以上もの「県民の声」を顔写真入りで載せ、しかも全員が辺野古移設反対の意見だった。

ここまで来ると、報道の意義とは何かを考えてしまう。新聞の職務は県民の生の声を伝えることなのか、それとも、自分たちの主張を「県民の声」と称して押し通すことなのか。

中国の防空識別圏設定にはあれほど冷静なのに、なぜ普天間飛行場の辺野古移設に対してはこれほど狂乱するのか。

ちなみに私が普天間飛行場移設問題を考えたとき、常に念頭にあるのは「米軍基地が県外に移転しても、尖閣有事の際の抑止力は維持できるのか」という点だった。県外移設論者は、そもそも中国の脅威自体が幻想だという言い方で、抑止力という言葉の意味を理解しようとせず、尖閣問題の実態も何一つ分かっていなかった。私は必ずしも辺野古移設推進論者ではないが、県外移設論者の言い分には納得できない点が多い。

知事承認の翌日、沖縄の6紙の中で唯一、八重山日報だけが知事判断を「英断」と評価する論説を掲載した。その日、石垣島でも辺野古移設に反対する住民約50人の集会があったのだが、この論説のせいで、知事と一緒に私たちもやり玉に挙がった。

弁士の一人が八重山日報を掲げながら「沖縄の新聞なのに、知事を批判する論調でない新聞がある。県民として恥ずかしい」と訴え、会場からは笑い声が上がった。私は取材で現場にいたのだが「このまま会場が八重山日報の批判一色になったら、身の安全は大丈夫だろうか」とふと考えた。幸い、他の弁士が話題を変えたので、私が直接糾弾されるような場面はなかった。

これがもし沖縄本島の集会だったら、ただでは済まなかったという感じがする。報道などで見る限り、血の気の多い運動家も少なくないからだ。

私たちは将来、沖縄本島へ取材の場を広げることも検討しているが、基地問題などの取材中、現地で罵倒されるような事態もある程度想定すべきではないかと思うようになった。現在、私たちを除く沖縄のマスコミが「反基地」一色だという事実はやはり重い。県民世論も有力マスコミによって大きく左右される。

逆に言えば、石垣島の空気は沖縄本島とはだいぶ異なる。冒頭で紹介したように、昨年の終戦記念日に特攻隊の顕彰碑が建立され、除幕式には市長をはじめ多くの市民が参列した。沖縄本島では悲惨な沖縄戦の経験や、有力マスコミによる「集団自決は日本兵に強制された」という報道があいまって、旧日本軍や自衛隊に対する視線は依然厳しい。特攻隊の「顕彰碑」などが建立される気運はどこにもないだろう。

伊舍堂中佐は旧日本軍の陸軍特攻隊「誠第飛行隊」の隊長である。沖縄戦末期の1945年3月26日、隊員など9機とともに、石垣島の基地から出撃。沖縄上陸に向け慶良間諸島海域に集結していた米艦隊に体当たり攻撃した。当時歳。戦死時は大尉だったが、死後、二階級特進した。

沖縄戦では、石垣島から中佐ら31人が特攻したことが確認されている。石垣島は「特攻の島」でもあるのだが、現在、こうした事実は子どもたちに全く教えられていない。伊舍堂中佐自身も、顕彰碑が建立されるまでは忘れられた存在だった。

特攻隊の再評価が進んでいる背景には、尖閣問題がある。歴史は繰り返す。中佐らが特攻した69年前と同様、石垣島は他国の脅威に対する最前線基地になった。かつての先人たちがこの危機にどういう思いで立ち向かったのかを知ることは、尖閣を守るためにも重要なことだ。

先人の思いを忘れ去ってしまっていた報いが、今、住民にのしかかっている。尖閣周辺で時間体制の航行を続ける「海警」の姿こそ「領土を守るという意識を失った国民は滅ぶ」という警告なのだ。

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