【コラム】一般の日本国民を応援しよう

 昨年の世界水泳選手権大会に日本代表として出場し、男子400メートル個人メドレーで日本人初の金メダルを獲得した瀬戸大也選手(19)は、レース前に韓国のアイドルグループ「少女時代」の歌を聴いてリラックスするという。目覚まし用のアラームは少女時代のデビュー曲『また巡り逢えた世界』だ。インタビューで「一番好きな芸能人」を聞かれた際には、少女時代のメンバー、ユナさん(23)の名を挙げた。

 TBSテレビは先月、瀬戸選手とユナの対面をあっせんした。瀬戸選手がメークのため座っていた控室の鏡が突然消え、そこにユナさんが現れた。瀬戸選手は韓国語で「アンニョンハセヨ」とあいさつし、ユナさんの首に金メダルを掛けた。ユナさんは顔を赤くした異国の弟のようなファンを見て、日本語で「かわいい」と言った。

 テレビでこのシーンを見ていて、ほほえましく思えたのは、若い善男善女の出会いが美しかったからだけではない。「やっぱり韓流の力はすごい」という愛国的な感傷のせいでもない。安倍晋三首相をはじめとする日本の政治家たちが、連日のように過去の歴史を否定する発言を繰り返し、韓国をけなす内容の本が日本の大型書店にあふれているこの時期、日本のスポーツ界のホープが、韓国の芸能人が好きだということを堂々と明かし、主要なテレビ局が2人の対面の場を設け、全国に向け放送したという、日本社会の成熟した様子を目の当たりにし、感動したのだ。先進国である日本の首都・東京の都心で「南朝鮮人は日本から出ていけ」「韓国人はゴキブリだ」などと叫ぶヘイトスピーチ(憎悪表現)デモが繰り広げられているが、テレビを見ていると、普通の日本国民は韓日両国の友好、親善を望んでいるという事実に気付くものだ。

 韓国の弁護士法人の顧問としてソウルに住む、日本の元ジャーナリストのタマキ・タダシさんは最近、韓国支社に赴任した日本の企業関係者と交わした話を紹介した。相手の企業関係者は当初、韓国の反日ムードが深刻だと思い、赴任をためらっていたという。タマキ氏が「きょう出勤して、韓国人から嫌な態度を取られたか」と尋ねたところ、相手は否定した。「では、この1週間、あるいは1カ月間に、そのような経験をしたか」と尋ねても、相手は否定した。タマキ氏は相手に「そう、それが現実だ」と話したという。

 日本の「現実」も大きく変わってはいない。旧日本軍の慰安婦問題について韓国が関心を持つ前から、慰安所の地図を作製し、惨状を訴えたのは日本の市民団体だった。日本の多くの知識人は今、安倍政権の極右的な動向を批判し、声を上げている。旅行先で出会った日本人は以前と変わらず親切だ。政治家がいくら問題発言を繰り返したところで、これが日本国民の現実なのだ。

 瀬戸選手は「少女時代の歌を聴いて力が湧き、金メダルを獲得できた」と話した。ユナさんはこの言葉に感動し涙した。ユナさんは、競争相手となる韓国人選手がいない種目で、瀬戸選手の善戦を祈っていることだろう。日本の政治家による誤った行動がしばらく続くとしても、一般国民が正しい道に導くものと信じている。一般の日本国民を応援しようではないか。

李漢洙(イ・ハンス)文化部次長
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