河野談話検証
2014年3月8日
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挑発行為に陥らないか
過去を真摯(しんし)に直視し、教訓を得るに当たり、客観的かつ建設的に歴史を調べることは欠かせない作業であると言えよう。それでは、関連する記録がない場合はどうするか。体験者の証言が極めて重要な意味を持つのは当然であろう。従軍慰安婦問題をめぐり、安倍晋三政権が、旧日本軍の関与と強制性を認めた「河野洋平官房長官談話」の作成経緯の検証に乗り出した。菅義偉官房長官の下に有識者数人によるチームを新設する。
検証のきっかけは、談話を発表した1993年当時の官房副長官・石原信雄氏の2月20日の衆院予算委員会での発言だった。談話の根拠となった元慰安婦の証言について「裏付け調査はしなかった」とした。
検証チームは、証言の裏付けの有無や信ぴょう性の判断などについて調査するとみられる。
安倍政権は河野談話を踏襲する姿勢を公式に表明している。だが首相の本音が違うことは、これまでの言動から浮き彫りになっている。
2012年秋の自民党総裁選では河野談話について「新たな談話を出すべき」と主張した。07年の第1次安倍政権当時には「強制性を裏付ける証拠はなかった」と発言した。
政権にとって、石原氏の証言はまさに渡りに船だったと言えよう。強固な首相の思想が客観的な検証を妨げないかという懸念を拭えない。
それ以前に、果たして検証が可能かという疑問がある。これまでの動きから、元慰安婦の証言を裏付ける証言があっても、文書がないために「証明できない」とされることが予想できる。
だが、日本の敗戦の際、残された資料を焼いたという日本軍関係者などの証言が存在する。強制性を裏付ける「証拠がない」としても、元からなかったのか、廃棄されたのかは調べようがない。つまり、正確には「証拠がないのか分からない」というのが実情であろう。ちなみに、インドネシアでオランダ人女性らを強制連行した公的資料は残っている。
現状で証言を軽視するとすれば、客観的検証はもはや不可能と言うしかない。どう結論を導くつもりか。
歴史認識をめぐり、日韓両国の関係はかつてなく冷え切っており、同盟国の米国も懸念するほどである。客観的で建設的な検証が不可能な中、無益な挑発行為に陥る危険性が高いことが心配だ。
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